家路のコピー

詩 71〜75

  家路

退屈だけど やめておこう
ひとりよがりの刻印に
一喜一憂 ターコイズ
顔から襟まで鮮明に

うつる 色 影 イチョウ型
たなびく うねる アラベスク
道をはさんで 夏木立
隠れてしまえば 見つからず

もう 鬼ごっこ 終わらない
砂漠 花畑 縫いあわせ
編みこむ 静脈 さびたレールが

欠陥だらけで あまりにも
立体的で とぎれ なぜ
金魚草の露 その信号 赤




  明晰夢

電車の光はまるい窓
カーブを描いてこちらへと
白と黄色のさかいめで
ゆらゆら ゆれる 霜蛍

あなたはひとり 寒そうだ
心配しないで まだ 残る
断面 ちらつく 星の声
そこまで行くな 真紅まで

ひっそりと いま 迫害は
シダ植物にまでおよぶ
あなたは きっと 蝶の顔 見る

パントマイムで虚無のまね
砂浜 金網 痛い 痛い
次は何色 ペイズリー 染まる




  おやすみなさい

得体の知れない金属音
がちゃがちゃ どこから しのびよる
ベッドから出る 決心が
つかない あれは 罠だから

交差している腐乱臭
いつからだろう 「分からない」
消毒すべき違反なら
残暑を焦がす熱風を

うぬぼれないで 泣かないで
破裂しないで 行かないで
衝動だけを大切にして

夢の夢の夢 だだっ広い
青くて 深い 空 だから
また 目覚めよう おやすみなさい




  神社彷徨

迷子の迷子にひざまずき
どこまでうなだれ 折りたたむ
ためしてみよう わたしから
もちろん あなたも そのあとに

嗚咽はどこから 新聞の
天気予報の落書きが
ブラックホールの虹彩で
舌もないのに思いつめ

どこで覚えた泣きごとだ
無情 悲愴 と ちりばめて
会話はまるで楽園追放

自分自身をあやつって
見えているならいいけれど
生きる世界は愛撫と残り香




  ホムンクルス

はじめの犠牲者 再培養
夢を聞かされる 虚弱的
人間性の限界で
めくるめく嘘 何色の

あいづち つかい分けるのか
接触しそうな口唇が
充血している はてしない
嘘 嘘 嘘 だ もうやめて

声の魔力で こんなにも
あなたに かまけ むだにした
時空 芸術 先入観と

「むしばむ光が有毒」と
言える 地下室 遠慮なく
言います 「自分で考えなさい」

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