詩 106〜110
不死鳥
ほんのわずかな気持ちでも
なにかの光になれるはず
たとえば 花火 また ネオン
スポットライトの下の国
誰もあなたを傷つけない
小川も塀も つまらない
人を寄せない いつだって
たとえば 彗星 世界へと
声なき声に着火して
胸は こがねに 命 焦げ
あなたに届けば 愛と呼びたい
空き地のまんなか 舞い上がる
ほの暗い嘘 つかまえよう
遠いかなたに ときはなつため
おしまいノート
色素を放棄 頭蓋骨
あなたは生きた それだけだ
どんなに どんなに ふりまわし
ころがしたって 記入済
ヘブンリーブルー なめつくす
まだまだ たりない ファンファーレ
いろどられるのを 恥じている
祝福しなさい 砂を浴び
昇天するのか ゆっくりと
わたしとあなたの思い出を
焼却していく 煙にのって
展覧会にただひとり
オーケストラのマエストロ
ミュートした 雨 追いかけてくる
さようなら
最後の 最後の お別れに
聞こえるものはなんでしょう
星のささやき 鳥の声
潮騒 あなたの さようなら
草のかおりで目を覚ます
気づけば ベランダ 雲 平野
どこかに隠れているはずで
給水タンク ガスタンク
抱きしめていた けがれない
忘れられない 音楽と
言ったら あなたは 笑うでしょう
一度もなかった 分かり合い
やさしいことばをかわすこと
どうしてだろう みんな しあわせ
塔
一階 白亜 駆けのぼり
二階 にごった ガラス棚
遺伝子 こばむ 四つんばい
窓にもたれて 黒ずんで
似顔絵 何枚 吊りさげた
枝は みすぼらしく 朽ちる
ここから 見える 見えすぎる
高所恐怖症 赤 緑
アインシュタイン すきま風
となりの部屋に フランケン
石 石 小石 ころがる 頭
三階 くるしみ もう終わる
四階 女神の足の指
出口はなくて 風車の林
あこがれ
荷馬車につんだ エゴ 五箱
ときおり 思う おぞましい
わたしの渇望 愛の歌
吐き気は いまも よみがえる
きみがのぞんだことだから
似合いもしない髪型で
きみはにせもの 爪を噛む
だけど 納得できなくて
なにをしたいか分からずに
漠然とした もやもやに
怒り と 名づけ だけど 不満で
悪意をください どす黒い
残像 うすれ やっと 土
今度は 白濁 重力は ある
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