レミニセンスのコピー

詩 76〜80

  レミニセンス

歌 よみがえる 前のめり
青モザイクの花束に
編まれて嫉妬 でも感謝
いま なつかしい ただ すわる

波紋の輪郭 消えないで
とらえられない それが 水
いやでも分かる ふるさとを
人質にする ぬいぐるみ

味方がいるなら単純に
伴奏をして なにくわぬ
顔は もういい オーケストラは

だまっていたら また 荒廃
殺人事件 きりがない
感傷的に思い出させて




  オベリスク

高くそびえる石板の
文字は ゼンマイ カブトムシ
背中と肩にいくつもの
青あざ つくり 満開の

あじさいのようにはかなくて
痛々しくて 厳粛で
分かったよ もう あきらめろ
知らないふりでやりすごせ

告発なんて 生存を
おびやかしたりしないだろう
ただの日時計 地球の眉毛

抱きつく前に漠然と
鍵穴型の虚像でも
確認できれば泣かなかったのに




  湯ざめ

冬の終わりのみずがめ座
なんのことだか分からずに
「蒼白オゾン 眉あげた」
日記の余白に入浴後

問いかけたそう まぶしそう
きゃしゃで小柄な祝福の
姿 かたちに 陶然と
少しのぼせた 手をあずけ

冷却されれば石炭化
日がかたむいて すりきれて
その正体は いまだ 不可解

春のはじめのペガサス座
夜空に埋めて まっぷたつ
上昇していく くさびの こころ




  じゃまもの

いたいけな 声 なんという
この感受性 不器用で
すりきれた 音 たえまない
好奇心への ごほうびで

とぎすまされて 円錐に
鮮烈 朱色 鼓膜には
致死量はない 迷惑な
危険なものは 入らせず

だって わたしは 大きくて
一番かさばる 荷物 箱
厚顔無恥の 重量物だ

力をこめて 押しこんで
それでも混入 しかたない
ふれてほしいもの だまって 挙手を




  うつくしいことがなんなのか

うつくしいことがなんなのか
生まれつき よく 知っていた
吸いこまれていく あまんじて
燃えさかる火に身をゆだね

そこからなにを見つけるか
期待は少しいきすぎて
つむじから 糸 導火線
裏切られるとも予感して

すがすがしいと言い聞かせ
頬のかゆさをがまんした
円の崩壊 それが はじまる

うつくしいことがなんなのか
生まれつき よく 知っていて
いまはなんにも考えたくない

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