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【亀の恩返し】統合失調症2級男が書いた超ショート小説

昔々、南の島にトゥクブという13歳の少年が居た。トゥクブの母親はトゥクブを出産した日に亡くなり、トゥクブの父親は4ヶ月前に漁に出た切り帰らぬ人となっていた。トゥクブは伯父に漁を教わりながら、父親が残した小さな家で1人暮しをしている。そして、今日も朝から日暮れ前までトゥクブは伯父と2人で小船に乗り漁に出ていた。釣果は、程よく大きな魚が6匹で、伯父が5匹の魚を受け取りトゥクブの取り分は1匹だった。船は伯父の物であり、トゥクブの仕事はあくまで助手的な物であったし、伯父の家は7人家族だったので、この分配は正当なものだった。また、今日は伯父からサツマイモを4本貰っていた。伯母とその幼い子供たちが栽培したサツマイモだ。その晩のトゥクブは焼き魚と蒸したサツマイモを食べ腹一杯になってから、深い眠りに落ちた。

「助けて、お願い助けて」トゥクブの脳内に若い女性の声が聞こえる。トゥクブは布団を払って俊敏な動作で身を起こす。眠気は完全に吹き飛んでいた。「誰?」トゥクブは声を出して尋ねる。すると「来て、海岸まで来て私を助けて」という声がまたも脳内に響く。トゥクブは半信半疑になりながらも、家を飛び出し駆け足で海岸に向かう。まだ夜明け前ではあったが、今晩は幸いにも十三夜月で外は程よく明るい。暫くして、海岸に到着すると女性の声がまた聞こえて来る。「私はここです。ひっくり返っている私を助けて」トゥクブが海岸を見渡すと1匹の海亀が裏返しになって四肢をバタつかせている。海亀の近くまで駆け寄り、「君が僕を呼んだの?」と尋ねると、「そうです、あなたを呼んだのは海亀の私です。荒波にひっくり返されてしまいました。だからどうか、私を助けてお願い」と今度もまた脳内に響く。トゥクブは少し驚いたが、気を取り直し次の瞬間には海亀の甲羅に手を掛け、力を入れて海亀をひっくり返してあげた。すると、海亀は何度も頭を下げなから、「ありがとうございます」と繰り返す。そして、「あなたにお礼をさせて下さい。私はこれから1つだけ卵を産みます。あなたがその卵を食べると、あなたは永遠に老化と病気から解放されます。でも、事故や殺人で死ぬ事はあり得ますので、気を付けながら生きて下さい」と聞こえた後、海亀は卵を1つ産み落として海に帰って行った。トゥクブは海亀が卵を産み落とす場面をしっかりと見ていたのだが、海亀の体内からヌルヌルとした液体と共に産み落とされた卵が、どこかしら、汚らしく思えて食べる気にはなれなかった。トゥクブは海亀が海に帰ったのを完全に確認してから、草鞋の先でその卵を海に向かって蹴り上げてしまう。卵は海に沈んで行ったが、その着水音は波の音に掻き消されて全く聞こえなかった。(世の中には不思議な事もあるもんだな)とトゥクブは思いながらも、家に帰ると再び眠りに就くのだった。それから暫くすると、静まり返ったトゥクブの家の土間で卵の粘液が付着した草鞋の先から煙が発生し出して、トゥクブの家には煙が充満する事態となってしまった。数時間後、夜明けの光と共に目覚めたトゥクブは背骨の曲った白髪のお爺さんになっていました。

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