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恋と学問

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もののあはれとは何か?本居宣長「紫文要領」から読み解く、源氏物語の魅力と本質。
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#和歌

恋と学問 第30夜、感情のリハビリテーション。

恋と学問 第30夜、感情のリハビリテーション。

本居宣長の著作「紫文要領」の結論部分を読み解く、全3回の2回目です。今夜は引用から始めます。

宣長は言います。歌の理想は三代集である、だからあなたが詠む歌も三代集を模倣すべきである、と。この主張自体は藤原定家以来、誰もが言ったことで、宣長の独創ではありません。しかし、印象派の絵筆にかかれば、何でもないリンゴが異様な存在感を放つように、この月並みな主張も、「紫文要領」の結論部分に置かれることで、特

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恋と学問 第29夜、告白は歌にのせて。

今夜から、本居宣長33才の作、「紫文要領」(西暦1763年成立)の、結論部分(岩波文庫版、162-184頁)の読み解きを始めます。私たちの旅は予定された目的地を持ちません。読み解いた先に、どんな景色が待っているのか?すべては宣長の筆と、それを読んだ時の私たちの想像力にかかっています。

手始めに結論部分のタイトルについて触れておきましょう。いわく、「歌人此の物語を見る心ばへの事」。

・・・え?

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恋と学問 第5夜、紫文要領の目次づくり。

恋と学問 第5夜、紫文要領の目次づくり。

今夜から紫文要領の本文に入ります。初回となる今回は、ふつう本を開くと最初に出くわすことが多い、目次についてお話します。なぜ目次に注目するかと言うと、本というものは大抵の場合、目次を見ればそこに何が書かれているのか、大体の見当がつくからです。

著者である本居宣長の章立てを元にした、岩波文庫版・紫文要領の目次は次のようになっています。(カッコ内の数字は岩波文庫版におけるページの枚数を表します)

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恋と学問 第4夜、恋の学問の誕生。

恋と学問 第4夜、恋の学問の誕生。

本居宣長の個人的な恋の経験が、どうやって物の哀れの学問へと深められていったのか?今夜は、宣長の思想の「成長過程」について考えます。

そのために、紫文要領の完成(1763年)から時を戻して、宣長が京都に留学していた頃(1752-1757年)に書かれた作品・あしわけをぶねを取り上げます。宣長の処女作にして歌論書、和歌のあるべき姿を論じた本です。全編を通じて対話(自問自答)の形式で書かれています。

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