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a man with NO mission(掌編集)

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冷笑と不適合、妄執と未遂の小さな物語集。一話完結、木曜更新。不条理/皮肉/諧謔/奇想/黒い笑い/SF(少し不思議)など。イラストはすてられちゃったいぬさん。
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#連載小説

75 電話

電話がかかってきた。知らない番号からだった。男は電話が嫌いだったので、じっと携帯を見つめ…

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71 大転落

放課後、校舎の屋上でクラスメイトたちとふざけあっていたときのことだった。男がノリでTの背…

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70 物体X

川底に何か黒ずんだ大きな塊が沈んでいた。男は五人の友人たちと協力してそれを水から引き揚げ…

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69 ビニール袋

男は仕事帰りに少し遠回りをして電線に引っかかったビニール袋を見に行った。何週間も前の風の…

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68 鼻

草むらに人間の鼻が落ちていた。 拾い上げようとして膝を折り曲げた次の瞬間、男はその鼻の穴…

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67 横断

男は道路を横断している途中で忘れ物を思い出し、家に引き返そうとしたところ、いや、忘れずに…

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66 ゴミ収集マニュアル

男は家の中でうるさく駆け回る子供たちを捕まえて殴りつけると、両手両足を縛りつけて口をガムテープでふさぎ、一人ずつごみ袋に入れた。自治体指定の容量45リットルのごみ袋だった。 翌朝、男は子供たちをごみに出した。ちょうど燃えるごみの日だった。回収してくれるかどうか分からなかったが、仕事帰りに収集所を覗いてみるとごみはきれいさっぱりなくなっていた。「回収してくれたみたいだな」男が報告すると、妻は黙ってうなずいた。 数日後、男はまたしても自分のクレジットカードを使って勝手に買い物

65 戦争二

ある朝、男が部屋から一歩外に出ると戦争がはじまっていた。 一人の若者が駆け寄ってきて、飛…

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64 展望台

男はのぼりのエスカレーターに乗った。丘の上の展望台へ出る、所要時間二分の長いエスカレータ…

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63 フクロウ

ある朝、男は目を覚ますと朝食に湿気たせんべいを食べた。熱い緑茶をすすり、口の中を火傷した…

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62 二週間の歌

月曜日、男は生まれた。 火曜日、男の腰のところにイボができた。 水曜日、そのイボから男がも…

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61 注射

男は流行りの伝染病にかかり注射を打つことになった。抵抗したが、医者は打たなければ命の保証…

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60 穴

壁に小さな穴が空いていた。脇に「絶対に指を入れないでください」と注意書きがあった。男はい…

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56 戦争一

自国が戦争に巻き込まれると、男は真っ先に兵隊に志願した。与えられた武器は缶切りが一つだけだった。 いざ戦場に出てみると、自軍の兵士も敵軍の兵士もスマホから片時も目を離すことがなく、戦闘はなかなか盛り上がらなかった。男は缶切りを右手から左手へ、左手から右手へと忙しなく持ち変えながら、敵がミンチになるまで滅多打ちにするという野蛮な夢想に浸って時間をやりすごした。 戦争が終わると、男は精神病院に送られた。窓に鉄格子のついた狭い病室で、男はゴムでできた缶切りを渡された。 医者が