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70 物体X

川底に何か黒ずんだ大きな塊が沈んでいた。男は五人の友人たちと協力してそれを水から引き揚げた。ゼリーのようにぶよぶよした卵形の物体で、ほんのりと異臭を放ち、触ると手についた。

地べたで観察しても、何か黒ずんだ大きな塊としか分からなかった。もう一度川に投げ捨てるのも煩わしく、その場に放置して帰った。

翌日、同じ場所に行ってみると、その物体は潰れてぺしゃんこになっていた。トラックか何かに轢かれたようだった。強烈な日射しを浴びて海苔のようになって干からびていた。

それ以来、引き揚げを手伝った友人たちに次々と不幸が降りかかった。一人はドライヤーで感電死し、もう一人はエレベーターに挟まれて圧死した。一人は忽然と姿を消し、もう一人は電車に飛び込んだ。五人目は突如として人体発火を起こし、黒こげになった。

残るは男一人だった。男が肉まんを買いにコンビニに行くと、それは売り切れていた。



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