マガジンのカバー画像

a man with NO mission(掌編集)

92
冷笑と不適合、妄執と未遂の小さな物語集。一話完結、木曜更新。不条理/皮肉/諧謔/奇想/黒い笑い/SF(少し不思議)など。イラストはすてられちゃったいぬさん。
運営しているクリエイター

#連載

連載(いったん)終了のお知らせ

先日50本目を公開した「a man with NO mission」ですが、当初の予定通り、これにて連載をひと…

12

50 息子

ある日、男の前に息子を名乗る人物が現れた。思い当たる節はあった。男は、かつて一度、ある女…

11

44 電信柱

男はかねてから興味のあった市民劇団に入った。 初めての舞台で与えられたのは電信柱の役だっ…

11

43 空き地の出来事

裏通り沿いにある空き地に、半ば草むらに埋もれるようにして木箱が打ち捨てられていた。ビール…

12

41 バンド

ふと手に取った音楽雑誌でバンドメンバー募集の広告を見つけた。楽器経験のない素人でも歓迎で…

12

40 遊園地

男が一人で遊園地に来たときのことだった。 子供たちに風船を配っていた園のマスコットの着ぐ…

18

39 更地

男は更地を見つけるたびに写真を撮った。地面以外に何も写っていない、殺風景な写真だ。撮るたびにSNSにアップしたが、反響はほとんどえられなかった。 更地は少し自転車でうろつくだけで簡単に見つかった。駅前まで行って帰ってくるだけで三つも四つも新たに見つけてしまうようなこともあった。 ときどき、慣れた道に突如として更地が出現することがあった。そういうとき、男は立ち止まってそこに何が建っていたのか考えてみるのだった。一度として分かった試しはなかった。 更地だった場所にいきなり住

38 拉致(アブダクション)

深夜のことだった。部屋の窓から突然まばゆいばかりの光が差し込み、男は眠りを妨げられた。何…

17

37 失敗三

男が趣味で小説を書いていることを知ると、女は強い興味を示して読みたいと言った。男は最初渋…

16

36 行方不明

男の遺体が行方不明になった。棺から消えたのだ。 調べてみると棺の底に穴が開いていた。誰か…

19

35 心に残る作品

若い頃、男はある映画を見た。とてもつまらなかった。最後まで見ても褒めるところが一つも見つ…

16

34 陳列棚

歩いていると、道の反対側にドラッグストアがあった。男はその店の軒先に出ている商品の陳列が…

15

24 高原デート

初めてのデートで高原に牛を見に行ったときのことだった。男は自信満々で恋人に言った。 「好…

17

23 追憶の殺人

ある夜、男は終電に近い私鉄の駅でホームの端をふらふら歩くスーツの中年男性を見かけた。かなり酔っているようだった。 電車が入って来ると、男は引き寄せられるようにしてその見ず知らずの相手に近づいていった。そして、何を思ったか、すれ違いざまに背中を肩で強く押したのだった。 中年はバランスを崩してあえなく線路に落下した。直後に急ブレーキの音が響いた。周囲に他に人はなく、男は振り返ることもなくその場を去った。 ほんの出来心だった。中年は轢死し、男は捕まることもなかった。 数年後