24 高原デート
初めてのデートで高原に牛を見に行ったときのことだった。男は自信満々で恋人に言った。
「好きな動物、当ててやろうか?」
「え?」女は不意打ちをくらったように言った。
「牛」
「違うけど」
会話はそれきり途絶えた。
二人は売店にソフトクリームを買いに行った。搾りたてのミルクで作った濃厚な一品だった。450円した。
男は遠くの牛を眺めながら、しばらく押し黙ってソフトクリームを舐めた。やがて、自ら沈黙を破った。
「分かった、羊だ」
「違うし。何決めつけてんの。バカじゃない」
その言い方にかちんときた男は、恋人の顔にソフトクリームを押しつけ、ぐりぐりした。相手の顔がべったりと、真っ白になった。
「お前、オペラ座の怪人みたいだぞ」
男は声をあげて笑うと、恋人を置き去りしてレンタカーで帰っていった。
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