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映画感想 人狼(韓国映画)

 1月12日視聴!

 あの『人狼』が韓国で実写映画化されていた……。
 って、誰か知ってた? 私はぜんぜん知らなかった。映画雑誌でも紹介されてなかったと思うし、日本のメディアでも出てなかったと思う。Netflixで発見したのだけど、制作年代とかも書いてないので、「いつの間に?」という感じです。

 そんなわけで、「あれ?『人狼』が実写映画化されてた!?」という驚きで視聴です。

 えー……プロローグについてだけど、ここを突っ込んじゃうとお話が始まらないので、スルーします。強引でも「特機隊」なるものが存在する理屈を作らなくちゃいけないわけなので。

 映画のざっくりした構成は、前半30~40分くらいはアニメ版『人狼』を元にした内容になっている。アニメ版のシーンを丁寧になぞり、アニメ版の楽曲を元にした曲もあり、かなりリスペクトが感じられる。
 ストーリー展開だけではなく、近未来の荒廃したイメージやそのただ中に漂う情緒も表現されていて、かなりいい雰囲気が作れている。
 冒頭の暴動シーンにしてもかなり派手に火薬を使っていて、このシーンだけでも「ああ、日本じゃこれは撮れないな」と感心。実写に関しては日本と韓国かなり溝を開けられてしまっている。アクションの派手さはそうだけど、あの荒廃した都市のイメージは今の日本にはない。ああいった風景自体もはや日本では撮れないから、なんか「やられたなぁ」という気がしてしまう。
 特機隊の登場シーン、暗部から赤い目だけが群体で登場させる見せ方とか、なかなかうまい。

 前半40分ほどを越えたところで、実写版『人狼』オリジナル展開が始まる。特機隊、公安、セクトを巡る三つ巴の対立。登場人物は増えたし、各勢力がより複雑にぶつかり合うアクションが展開する。
 原作アニメ版には描かれていなかった枝葉の部分を深掘りして、なるほどこの構成にすると作品に対する理解も深まる。作品全体に緊迫感も出るし、うまくアレンジしている。
 アニメ版『人狼』は男と女の恋愛劇が中心だったが、実写版『人狼』は純然たるアクションに方向を振っている。アニメ版の情緒は失われたが、アクション映画としてかなりがっちりした作品に変わっている(ロマンスの部分は残ってはいるけど、ちょっとあざとさが出ているというか……)。アニメから実写に転換するにあたり、はっきり方向性を変えたが、これはこれでなかなかいい。

 そしてアクションの作り。ちょっと胡散臭いところもあるけど、まあそういうのはどのハリウッド映画でもあるところ。このアクションにしても、どれも日本ではできないものばかりだなぁ……。展望台から始まるアクションと逃亡撃はかなり魅せてくれるものがある。

 そんな中間1時間ほどがっつり作られたオリジナル要素を抜けて、再びアニメ版と同じ展開に戻ってくる。
 この辺りでニュアンスが変わってくる。こういうところ、ifストーリーを見ているようで面白い。中盤の展開を経て、それを受けての後半展開だから、アニメと同じシーンを再現していながらでも、少しずつニュアンスが変わる。こういうところ、作り手側が、自分の作っている物をきちんとわかって描いている感じが出ている。

 さて、問題なのがそれを抜けた最後のシーン。ここで「あれ??」ってなる。なんでそうなる? 一応「血の金曜日」という設定を前景において筋は通しているけど、それだと『人狼』の冷酷さはでないんじゃないか?
 中盤まで展開していた公安とセクトの抗争も、さらっと流しちゃった感じ。
 アニメ版と違い、ある意味で「救い」のある結末が描かれたが、逆にモヤモヤ感が残る。結末の描き方次第でこうも後味が変わっちゃうものなのか……。

 主人公の名前のイムだが、これは日本語表記した時に「伏」という文字に似ているからかな? イムはそのまま読むと「仏」だけど。


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