音羽の「WILD THING」 漫画編集者 石井徹

月刊少年マガジン、週刊少年マガジン、ミスターマガジン、また月刊少年マガジン、ヤングマガ…

音羽の「WILD THING」 漫画編集者 石井徹

月刊少年マガジン、週刊少年マガジン、ミスターマガジン、また月刊少年マガジン、ヤングマガジン、謎の3年の空白期間、最後は「まんが学術文庫」編集長 マガジングループしか知らない男。会社とは無関係の個人的見解です。

最近の記事

漫画学とドラマ理論第26

 現代の漫画の歴史はこのグラフがほとんどすべてを表していると思います。そんな昔のことなんて知らねえよという人は読む必要はないでしょう。いつの時代も歴史を考えない人はいるものです。いいところ10年ぐらいのスパンでしか脳が働かない小狡い人はいるのです。 『失敗の本質』という本があります。第二次世界大戦での日本軍を研究した本です。出版してもう30年以上になりますが、経営者や政治家がよく読んでいます。彼らはよく知っています。見かけは変わろうとも人間の本質はあまり変わらないことをよく

    • 漫画学とドラマ理論第25回

      漫画学とドラマ理論第25回 「だんだん面倒になってきたので、今まで手掛けた、もしくは作った漫画のリストを載せます」  諸事情があって、弁護士に作っておけと言われたリストが以下の通りです。いろいろご意見も来ますが、そんなウソは言っておりません。証拠だと思ってください。質問があったらしてください。喜んで答えます。 石井全仕事 1982年(昭和57年) 月刊マガジン   ① 「桃色学園」(著者小野新二) ② 「なんと孫六」(著者さだやす圭) ③

      • 漫画学とドラマ理論 第23回

        (Ⅰ)集英社と講談社の戦術の違い。 ① 「集英社」 皆さんは大学のミスキャンパスを知っているだろう。今じゃ当たり前に大学の学園祭の華になって恒例行事だ。では最初に誰が仕掛けたかご存じだろうか。答え:ヤングジャンプです。     ヤングジャンプはちょっと変わっています。ジャンプが付くからジャンプ編集部と同じ局だと思っている人が多い。違います。何と週刊プレイボーイ編集部と同じ局なのです。どうしてそうなったかというと、ジャンプ編集部を追い出された人が負けるものかと作ら

        • 漫画学とドラマ理論第22回

          『A案とB案で迷った時』  ある時漫画家が絵コンテ作成が遅れていた。何でだろう.打合せは上手く行ったはずなのにと思いながら、天才永井君と一緒に漫画のところに行った。  すると漫画家さんが「ここの演出なんだけど、A案とB案で迷っているんだよ」と言った。速攻で私は「絶対A案がいいです!」「そうかなあ?」「いや、絶対A案です!」「そうだね、それで行こう!!」  隣で見ていた永井君が怪訝な顔をしている。帰りの電車の中で永井君が質問してきた。 「石井さん、本当はA案でもB案でもいいと思

          漫画学とドラマ理論第21回

          『演劇論を調べた』  まんがはいろんな種類があるから多種多様な方法論があるのは当然だ。中には編集者に何の理論もないのは漫画家も含めて漫画関係者知っているだろう。出会いがしらのホームラン、または出してみたらヒットというのもある。一概に否定はしないが、理論がないのは頭を使っていない証拠でしょう。それは漫画家自身がすぐわかると思います。現在daysneoという講談社のサイトで、「漫画家と編集者の出会い系サイト」があるので以前より意見があった出会いがあるだろう。  しかしストーリ―漫

          漫画学とドラマ理論第20回

          漫画学とドラマ理論第20回 ① 「天才たちに勝つ方法」  結論から言うと、「ない」。しかし凡人なら凡人の戦い方がある。昔、小学館には亀井さん、集英社には堀江さんという天才がいた。どう考えても太刀打ちできない。 ② 「小学館の天才」  私は漫画を読んだこともないのに月刊少年マガジンに配属された。毎日受験勉強のように漫画を読まされた。ある日、編集部から逃げて図書館で寝っ転がってサボっていたら、大昔のマガジンが眼に入った。めくってみると変なことに気が付いた。

          漫画学とドラマ理論第19回

          「出版界最強の男」について 漫画家の北野さんと久しぶり対話しました。youtubeにあげましたのでお暇な方はどうぞ? https://youtu.be/Oyx0RiBYSYM

          漫画学とドラマ理論第18回

          漫画学とドラマ理論 第18回 「ヒットした小説を漫画にしたらヒットするか?」 ① 「黒澤明と小説」  もう結論は言っちゃったけど、素人がやったら100%失敗します。これだけはハッキリ言える。映画も同じだと思う。  黒澤明の映画を観ていると。ドストエフスキーや山本周五郎をかなり読んでいるなと感じる。黒澤明も小説が原作の映画を撮っています。「赤ひげ」などはその一例だが、小説の演出のままではない。あらすじを書けと言われれば、映画も小説も同じになるだろう。しかし映像化

          漫画学とドラマ理論第17回

          漫画学とドラマ理論第17回 「そもそも漫画市場は少数の天才漫画家と天才編集者が巨大化した」 ① 「天才漫画家」 彼らが市場を引っ張ったということには異論はないだろう。ちばてつやや赤塚不二夫、石ノ森章太郎などの世代だ。1,960年代に彼らは若手として活躍したが、60年代後半には一気に花開いて劇的に市場を拡大している。漫画雑誌なんて当時、赤字になったり黒字になったり低空飛行であった。ところが60年代後半になると雑誌は100万部越えにマガジンはなっている。 この天才

          漫画学とドラマ理論第16回

          第16回「出版社によって文化が違う」 ① 「某出版社からくる漫画家の特徴」  昔の話だが、他社で描いていた漫画家が打ち合わせ時間を短くしようとする。面白ければ別に短くてもいいのだが、そうそう簡単に面白い話が出てくるはずはない。2時間ぐらい打ち合わせが最低かからなくてはおかしい。他社から来た漫画家で、それが不満だという人がいたのだが、「じゃあ、S社の人はどのくらいなの」と訊いたことがある。短ければ5分、長くても30分だとその漫画家は答えた。あり得ない。マガジンはジャ

          漫画学とドラマ理論第15回

          第15回「マガジンと、ジャンプ、サンデーは元々違っていた」 ① 『「最終学歴」が違っていた』  私が入った80年代、講談社には小学校卒から大学院卒までいた。私がいたマガジングループには中卒、または中卒で入って夜間高校通った人がいた。また高卒の人もいれば、高卒で入って夜間大学を卒業した人もいた。最終学歴に関して言えば、要は当時の社会をギュッと圧縮して1000人にしたのが講談社であった。「へえ」と私は感心していた。私の両親は戦中派だから小卒。だから私の両親のように超庶民

          漫画学とドラマ理論第13回

          第13回「漫画原作の作り方」 ① 漫画原作と脚本の違い。 映像の台本を見たことのある人はわかると思いますが、台詞だらけです。当たり前です。だから台本ですから。例えば以下のような感じです。 ―――夜、公園―――  A夫「〇〇(ずっと台詞」)  B子「〇〇(これもずっと台詞)」  このようにA夫とB子の会話がかなり続くし、一つ一つが漫画から見ると長いです。 1回のセリフが3行ぐらいに平気であります。これを漫画に全部入れたら大変なことになる。仮に入れたら会話劇

          漫画学とドラマ理論第12回

          第12回「電子書店とネット書店が本当にやりたいこと」   ① 「現状」 これはみんなわかっていると思う。明らかに漫画の出版をやりたがっている。露骨に漫画編集者募集をやっている会社もあります。ネットで電子だろうが紙だろうが売っていたら、漫画を自社製品で売りたくなるだろう。中には漫画家に漫画を描かせて著作権を買い取る業者まで現れた。漫画家はそれでいいの?と思っちゃう。買い取られたら、その後永遠にお金が入ってこない。日銭が欲しいのは理解できるが、本当にいいのとやはり思

          漫画学とドラマ理論第11回

          第11回「ネタはどうやってためるか」 ① 「とにかくメモを取る」 20代はよくやっていました。いつでもメモ帳を持って、とにかく浮かべばメモしていました。これは別に漫画編集者だけではありませんでした。一般の文字系雑誌やファッション誌の人もやっている人は結構いました。とにかくメモをする。夢を見たらメモ、ぼうっとお風呂に入っていてもメモ、何でもかんでもイメージが湧いたらメモです。 自分の外側で起きたことでもネタになるならメモですが、自己の中にネタを求めることもあります。小さい時、

          漫画学とドラマ理論第10回

          第10回 「編集者の見分け方」 ①  「大物を担当していたと威張る編集者には気をつけよう」 競馬の話で申し訳ありませんが、競馬界では「騎手3分、馬7分」という言葉があります。要は勝ったとき騎手の力が3割で、馬の実力は7割というわけです。もちろん誰が乗っていても強い馬は勝てます。編集者と漫画家の関係も似ています。漫画家が凄ければ編集者なんてバカでもできますから。  先週漫画編集者ばかりインタヴューした不思議な本を読みました。驚いたことがあります。「あしたのジョー」を担当してい

          漫画学とドラマ理論第9回

          ① 「いい絵」について 最近漫画家さんと話していて気が付きました。どうも勘違いしている人が多いです。「いい絵」と「うまい絵」は本来違う意味で使われていました。概念がゴチャゴチャに使われるから困ります。「いい絵」というのは、要は感情表現が豊かな絵もしくは個性的な絵と思っていい。所詮人間の物語を描いているわけですから「感情表現」がうまくないと読んでくれないでしょう。ただ編集者もそういう絵に対して「いい絵だな」というべきところ「うまいなあ」とつい言ってしまうので、漫画家さんも勘違い