漫画学とドラマ理論第11回

第11回「ネタはどうやってためるか」
① 「とにかくメモを取る」

20代はよくやっていました。いつでもメモ帳を持って、とにかく浮かべばメモしていました。これは別に漫画編集者だけではありませんでした。一般の文字系雑誌やファッション誌の人もやっている人は結構いました。とにかくメモをする。夢を見たらメモ、ぼうっとお風呂に入っていてもメモ、何でもかんでもイメージが湧いたらメモです。
自分の外側で起きたことでもネタになるならメモですが、自己の中にネタを求めることもあります。小さい時、あの時嬉しかったなあとか、恥ずかしかったなあとか、色々あると思います。いつかはドラマ作りに役立つものです。
自分以外でも親戚、友人のネタもメモしていました。別に文字することもない。汚くても絵を描いておいてもいいのです。
ただ注意しなくてはいけないのはあんまりやり過ぎると神経症になります。注意しましょう。脳を休ませることも必要です。

② 「手っ取り早いのはやっぱり映画」
以前も言いましたが、本を読んだりするのも参考になります。しかし一番手っ取り早いのは映画だと思います。だいたい2時間に起承転結がなされており、基本的には濃密なドラマになっています。映画で成功したものが、テレビ化して10週以上続いたものは結構あります。伸ばすのは割り方楽です。あらすじがしっかりしていますから、アイディアを付け加えることになります。これは多分それほど苦しくはないと思います。
 漫画でも読み切りや短期集中で試すことはあります。それがウケれば連載となるのですが、基本的なコンセプトは読者に気に入られているわけですから、連載の体裁にするのは思ったより苦しくはない。一度読み切りなどの漫画を描いたり、原作を書いて漫画を成功させた経験があれば、この感覚は理解できると思います。
 映画でギネスブックに載っている最長記録は確か日本映画の「人間の条件」だったと思います。9時間20分。80年代までテレビで年末になるとやっていました。私は小学校の時から数えて3回ぐらい見ています。たしか3日連続だったことが多かったと記憶しています。もしかしたら1日で一気に9時間20分もあったかもしれませんが忘れてしまいました。この映画は不思議で全体的に暗いのですが、監督の演出や引きがうまいのか、次どうなるんだろうとつい見ちゃうのです。しかし「人間の条件」は異例でしょう。
 何でも心理学の本などを読むと人間の集中力は2時間が限界だそうです。映画も昔のものを見ると3時間だったり2時間だったり,色々です。しかしアメリカも日本もだいたい2時間に落ち着きました。理にかなっているのでしょう。
 映画は、要素がまとまっているのもいいのですが、眼で映像を観て音を聞いていますから、記憶に濃厚に残ります。文字情報も役に立ちますが映像のほうが直截的です。

③ 「知識は大学教授にはかなわない」
たまにインテリだと自負する漫画家さんや原作者がおります。また編集者にもそういうタイプがいます。確かによく知っています。しかし学者にはかないません。困るのはそういう人は過剰に自信があるので、自分は正しいと思ってしまう傾向があります。これが一番いけない。例えば法律などは解釈を間違えると、無罪と有罪が反対になってしまう。その他の専門知識もそうです。
そういう場合は堂々と東京大学に電話しましょう。今の学者は昔と違って漫画に理解がある人が多いのです。案外会ってくれます。怖かったら担当編集者に頼みましょう。
  話していると、意外な事が出てきます。本では書かれていない事をはなしてくれます。つまり世間では知られていないことを話してくれます。これがかなりにネタになります。
   とにかくちょっと知っているくらいで威張ってはダメです。生兵法は大怪我の基です。

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