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漫画学とドラマ理論第22回

『A案とB案で迷った時』
 ある時漫画家が絵コンテ作成が遅れていた。何でだろう.打合せは上手く行ったはずなのにと思いながら、天才永井君と一緒に漫画のところに行った。
 すると漫画家さんが「ここの演出なんだけど、A案とB案で迷っているんだよ」と言った。速攻で私は「絶対A案がいいです!」「そうかなあ?」「いや、絶対A案です!」「そうだね、それで行こう!!」
 隣で見ていた永井君が怪訝な顔をしている。帰りの電車の中で永井君が質問してきた。
「石井さん、本当はA案でもB案でもいいと思ったんじゃないですか?」
「そうだよ」
「えっ!?じゃあ、何で絶対A案って言ったんですか?」
「あのなあ、永井。A案でもB案でも同じ程度だよなあ。そういう時はA案ならA案がいいとハッキリ言っちゃったほうがいいんだよ」
「何でですか?」
「一番まずいのは漫画家を迷わすことだと思うよ。あの時A案もいいですけど、B案もいいですと正直に言って、最終的にA案に決まったとするよね。漫画家さんは描いている間、B案もいいかななんて思って描くことになるじゃん」
「はあ」
「一番恐ろしいのはA案でもなくB案でもない、折衷案的になることだよ。
そうなると中途半端になって面白くなくなることが多いんだよ」
「なるほど」
『漫画家迷っている時、決めてやることも編集者の仕事』
 今でもそう思っている。もちろん最善案が打ち合わせの段階で浮かべば別だが、迷ったまま原稿作製に入るのが本当に恐ろしいのです。

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