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【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第21話
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第20話は、こちら へ
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東雲の視界が明滅する。
〝貫かれたか?〟
――否、違う。眼に血液が飛び散ったのだ。視界が明滅するのはそのせいだ。
では、それは誰の血か。己の血か。それともミクリヤの血か。ヤヨイの血か……。
それはどれでもなかった。東雲の視界を遮って散らす紅蓮の血花は、ニ
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第20話
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第19話は、こちら へ
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死神――。それは、お伽噺や神話伝承にて語られる人知の先にある超常の存在。人の容を装った者もあれば、獣の容を晒した者もある。時代と土地によっては、それは鬼や竜神、妖狐、鵺、果ては悪魔や吸血鬼とも呼び習わされた過去を持つ怪物たちである。
神話伝承によっては人に仇なす者
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第19話
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第18話は、こちら へ
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太陽も南中を過ぎ、西陽の紅へとその色を変じ始めたときだった。
東雲がジェイムズに地下室へと呼ばれた。
「今晩、仕掛けることで決定した。君らが先鋒だ」
「わかった」
「それから共鳴器の彼女についてなんだが……」
「ニーナがどうかしたか?」
「連れて行くかは君
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第18話
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第17話は、こちら へ
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二人が海浜公園沿いの遊歩道での一戦を終えた翌朝。午前七時――
目を醒ましたニーナが寝所から見たのは異様な光景だった。
「東雲……。何をやってるの?」
東雲は上半身裸で片手逆立ちで腕立て伏せをしていた。勿論、鍛えているのは銀義手ではない右腕のほうである。
「
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第17話
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第16話は、こちら へ
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海岸線に少女を残し、東雲は一人臨海公園の遊歩道を歩いていた。
「ん?」
端末に着信が入った。ジェイムズからの通信だった。
「どうかしたか」
「探索の進捗状況を伺おうと思ってね。敵の尻尾は掴めたかい?」
「いや、日中の間探索に動いたが収穫は皆無だ」
「そ
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第16話
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第15話は、こちら へ
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ファンシーな小物を取り扱う雑貨店、革物専門に扱う鞄店、愛らしさを前面に押し出した衣服を販売する服飾店、店舗入口に警備員の立つ高級ブランドショップ、シルバーアクセサリーを陳列した装飾店、古めかしさの中にも上品さを漂わすアンティークショップ、パラソルを並べた休憩スペース
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第15話
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第14話は、こちら へ
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どんな世界にも暗部が存在する。
亡霊討伐組織――ユグドラシルもそんな世界の裏側にある組織のひとつである。
第二次世界大戦末期から終戦直後にかけて、世界中で優秀な科学者が敗戦国から勝戦国に招聘された。それはひとえに戦時下において高度に発展した技術の喪失を阻止する
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第14話
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第13話は、こちら へ
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桐森巴衛は、自身には異界と交信ができる力があると信じていた。
幼き頃、昏い物陰や靄のかかった宙空に浮かぶ人ならざる者たちを認識し、幾度となくそれらとの念話を試みてきた。両親は彼のそんな行動を奇怪に思い、心療内科への受診を何度も行った。が、その結果は心因性のストレ
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第13話
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第12話は、こちら へ
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夢とも現とも判断のつかぬ微睡みの中で、東雲は明確に痛覚を認識した。
左の眼窩。その奥でちりりと焼け焦げるような痛みが走り抜ける。
〝来たか……〟
痛みはゆっくりと白むように視覚を広げ、見覚えのない世界を映し出す。
――未来視の魔眼。その模造品。
彼の
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第12話
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第11話は、こちら へ
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血の海。
そこに散らばるのは鈍く光る黒い臓器と節くれ立った白くて長い臓器……。
肉……、手、足……それからまた血……血……。
惨殺された家族の死体。
「みんな……死んだの……?」
異臭を放つ泥濘む血の海と化したテント内で、少女は家族一人一人の頭蓋を探し始
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第11話
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第10話は、こちら へ
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時刻は夕暮れを越えた一九時。
カフェ&バー、トラオムラントの一階のカウンター席で東雲は紫煙を燻らせていた。
「まだ動かないほうがいいんだけどねえ」
カウンター越しにジェイムズが心配そうな視線を向ける。
「目が醒めたということは身体が機能を取り戻したというこ
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第10話
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第9話は、こちら へ
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蒼く燃え散った亡霊の残骸が残る会議室で、ミクリヤはその正体について語る。
「一九世紀半ばから二〇世紀初頭にかけて人類は急速な技術革新期を迎えました。その中にはトーマス・エジソンの蓄音機や白熱電球の開発、アルベルト・アインシュタインによる相対性理論の発表、キュリー夫妻
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第9話
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人口九十万人を越える都市――風座見市。その風座見市西部に位置する栄都。
風座見市を南東から北の海へ抜ける鴉野川以西はかつては漁業中心の田舎町でしかなかった。しかし、高度経済成長期に港湾施設としての機能を見出されてからは港湾運輸業と工業地帯郡の開発によって、開拓と埋立が
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第8話
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第7話は、こちら へ
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東雲は寝台の上で目を開けた。彼の隣では手術着で籐椅子に足組み坐るジェイムズ・ケイフォードがいた。甘いグアテマラの香りを燻らせ、静かに佇んでいる。
「おや、お目覚めかい?」
ここは風座見市蔵間町の外れにある寺――光隆寺の裏手。そこにひっそりと建つカフェ&バー――トラ
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第7話
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第6話は、こちら へ
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イラン高原南西部。そこには雄大に聳え立つ山脈――ザグロス山脈がある。山脈の北西部には森林と牧草地が広がり豊かな自然林の高原となっている。自然に満ちた土地ながらも、その地形は急峻に入り乱れ、盆地と渓谷が幾重にも折り重なっている。安易に人が定住するにはまったく適さない土地
【亡霊殲滅伝奇譚 -ゲシュペンスト-】 第6話
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第5話は、こちら へ
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「……華は散り際こそが美しい」
冷え冷えと聳える鉄骨の楼閣。半年のうちには竣成が約束されている建設途中の高層ビル二九階――地上一○六メートル地点。未だその上に十数階を重ねる予定のその場所で、建築用クレーンが月光に照らされていた。浮き上がるは、無機物の鈍色の影。
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