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1「チャックまに出会った日」 (07)

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■チャックま その3「そっくりさん」

 チャックま たち三人は、倒れ込んでいる小さなくまの子のところに駆け寄りました。
 この世界にやってきて出会った生き物は鳥や虫ばかりでした。このくまの子は、はじめてまじまじと見るこの世界の生き物でした。しかし、ジッパンダがさわってもピクリともしません。
「死んじゃってるのかニャー」
「いや、気を失ってるだけのようだ。しかしチャックま、この子、きみに似てないかい?」
ジッパンダに言われて、チャックま は姿勢を低くしてこの子の顔をのぞき込みました。耳のかたち(まあるい)や口のまわり、目つきや毛の生え方など、見れば見るほど確かにそっくりです。ただし、もちろんお腹にチャックはついていませんでしたが。
「本当だね、ボクにそっくり…もしかして、この世界の生き物はボクたちと何か縁があるのかもしれないね」

 この世界のネコやパンダを見て三人がびっくりするのはもう少し後の話ですが、この世界の動物たちとチャック族の姿がそっくりなのですから、この世界とチャック界はきっと何かでつながっているんでしょうね。だからこそチャックま たちは、この世界にやってきたのかもしれません。

「この子をどうするニャー」
ファスニャンが心配そうに訊きました。なんだか置いていくのも忍びないけど、ファスニャンはお腹が減ってきていたんです。何しろこの世界に来てから何も食べていませんでしたから。
「そうだねぇ…」

 気づけば夕日はすでに地平線に沈み、夜のとばりが降り始めていました。さすがに陽が陰っても凍えるように寒いという季節ではありませんでしたが、それでも肌寒さがヒタヒタとそこまで迫ってきていました。このままこのくまの子を置いて行けば、もしかして死んでしまうんじゃないか。そんな気がして、三人はその場を離れることが出来ませんでした。

 そうこうしているうちに、くまの子は徐々に意識を取り戻してもぞもぞと動き始めました。三人は対処の仕方に悩んで、取りあえず近くの木の陰に隠れて様子を伺うことにしました。

08につづく

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