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「五七五と+七七」バトル介護 

 今回も日常句ですが、同時に全編「ブラッ句」~
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 高齢の 親と壮絶 バトルする
   信じられぬが そうなりました

 昨日は、朝から激しいバトル。両親が昔住んでいた家をのぞいてくると云い出したのです。そのくらいの望みをかなえてあげれば、ということなんですが、両方の大腿骨頸部を骨折済みですので、今度コケたら寝たきり。それを思うと、こっちの足がすくむ。
 また、取り越し苦労をしたと云うこともあります。古い家には思い出の品が満載。残ると云い出す可能性があるし、そこまで行かずとも、通うとか、あるいは物を手当たり次第、今の家に移すと云い出しかねない……。
 とりあえず、引き留めたら、激高されてバトルになったという。
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 バトルの間 戦場に響く 虫の声

 相当、激しくやり合いました。腕を掴んで引き留めたら、反対の手で殴られ、後はベッドまで連れて行って抑え込み。そして怒鳴り合い。特養では絶対に出来ない真似。でも、一度やってみたかった~ 好奇心旺盛なんです。
 ともかく怒鳴り合いを続けたので、それが途切れたときの、虫の音がやけに鮮明に…… 秋の虫、朝からこんなに盛大に鳴いてたっけ? と。 それとも、怒鳴り合いで刺激されたか?
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 暴言も 鮮度が命 ほんとだぜ
   封を切ったら もって半日

 介護の仕事の経験がある方ならよくご存じでしょうけど、暴言の超絶上手な方がおられます。それは酷いことをいう。バカ! などという単純なものではありません。えぐってきます。誰にでも使える悪口ならたいしたことないんです。その人にだけ通じるスペシャル、オーダーメードの悪口の連続攻撃。
 思えば、わたしのナナメ上な見方も皮肉も親譲りだったようです。オマエの親はどんな親? 親の顔を見てしまいました!
 ともかく、介護で虐待や殺人事件にまで発展するのは、そんなケースが多いと思います。長く特養を見てきたわたしでさえ、沸点に達するんですから。人間の隠れた一面にふれてこなかった人が、仕事でいきなりそこを前面に出す利用者と接すれば、そりゃあ、危険です。一般世間では、たぶん命を賭けたやりとりでしか口にしない、「それをいっちゃあ、お終めえだろう」が連発されるんですから。
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 ためこんだ 不満ぶちまけ そあどうだ!
     期待一瞬 介護変わらず

 ということで、壮絶な激戦を繰り広げたわけですが…… 何も変わらない。オマエの介護など二度と受けるか! と言い放っても、せいぜい数時間のこと。ほかに選択肢がない。
 これが特養とかなら、もうあの職員は顔もみたくない! ということになるでしょう。虐待された!と他の職員に云いふらすだけでなく、家族にも電話で告げ口しかねない。そうなれば、かなりめんどくさいことに。
 しかし、家族介護の場合はそれが出来ない。また日常に戻るしかない。
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 怒ったら あとがしんどい 覚えとこ

 今回は、さすがにわたしのほうも疲れました。今でも頭の芯が重い。
 向こうにも相当のダメージがあっただろうなと。そこは案じられたのですが、帰宅してみたら、なんとしゃんとしていた! ケンカして気合いがはいって、若返っていたという。
 もちろん、高齢者の脳は「秋の広葉樹状態」ですから、かなり落葉が進んだと思います。相当の記憶がアクセス不能になったことでしょう(記憶そのものは消えないようです。思い出せなくなるみたいです)。
 しかし、それとは別に、命の火は盛んになった。

 こういうことがあるんですよね。介護の通説なんて底が浅い浅い。さっき好奇心旺盛と書きましたが、これが実験結果。

 つまり、怒りっぽくなるという症状には、意味があったんです!

 なるべく怒らせないとか、早期に怒りを鎮めた方が良いというのは、
<一律に解熱剤を使うような悪しき対症療法>の可能性がある。

 発熱でやられる人もいますが、それで治る人のほうが多い。両者を一緒くたにしてはいけない。自然の働きには、ちゃんと理由があるんです。

 怒り出すのは、自分を奮い立たせていたということではないか(周囲の迷惑はさておいて)。
 そればかりか、
 ケンカすることで相手のエネルギーを吸い取るという、そんな裏技さえあるのかもしれません。きっとそうです。わたしがこれだけ疲れているのに、向こうは溌剌(ハツラツ)としているんですから!
 
ま、それは冗談ですが、慇懃無礼に応対されることにうんざりして、ケンカでもいいから、真剣にやりとりしたかったということが、あったのかもしれません。うれしかったようです。真剣勝負が出来て……。

 頭の良い方、ぜひ研究にまとめて正しい知識を普及させて下さい!
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蛇足
 介護には、まだナイチンゲールが登場してないんですよね。
 ナイチンゲールが現れる前の看護婦の仕事は病院の雑用でした。ナイチンゲールが、看護ならではの役割を実証して見せた。そこには医者への痛烈な批判もあったわけです。
 その点、介護はまだ医療を批判出来ていない。だから、自立出来ない。下に見られているし、独自の価値観や方法論を大きな声で語れない……
 とかなんとか。まだ、昨日のケンカの余熱が……

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