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テクストの経済物理学(応用編6)

読者は書物から何を得ることができるのか?テクストの価値を科学的に知ることはできるのか?読書は象徴の森での万物照応であり、神社巡りのように、精神世界の幸福への旅である。文芸作品の内容を知る行為は、宝島での宝探しや不思議の国のアリスの冒険のように、三位一体的な象徴的構造による読者とメタ的実体との一致のための道筋が用意されている。作品の良し悪しは読書の選好により決まっている。読者が作品を購入するのは作者と読者の選好の一致である。大衆文芸では作者の欲望への読者の共感が重視されている。市民社会は欲望の体系といわれ、欲望即ち文芸作品の消費性向を知ることが、自分自身の作品の更なる向上に繋がり、他者の欲望を見ることができること自体が楽しみである場合があるのである。書くことができるのは読んだことがあったからであり、コトラーの顧客志向マーケティングでも消費者の選好に基づきカスタマイズすることが重視されている。テクストには経済物理的基礎があり、それこそがテクストの価値の根拠となっている。本稿ではテクストの読者にとっての価値とは何かを、社会学や経済物理学によって科学的に探究し、ハイパーテクストを含めた情報としてのテクストの科学的・芸術的な価値に迫った。

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