万人に妥当する勉強法はないけど記憶術ならいくつかあるよという話
歳を重ねた勉強家の皆さんはすでにご存知のとおり、万人に妥当する勉強法なんてものはこの世に存在しません。
勉強は、バスケやサッカーと同じように、学習という技術でしかないので、地道にコツコツと練習して伸ばしていくべきものです。
そして、勉強という行為の中身は、8割以上が「記憶」であり「暗記」です。
そうだとすると、勉強法というのは「記憶術」「暗記術」の類です。
このような技術を磨いていく方法は、地道な繰り返し作業による慣れしかありません。
そして人それぞれ「辛くなりにくい繰り返しの方法」が違うので、万人に妥当する又は万人に共通する方法はないのです。
それぞれが様々な勉強法を試して、最も苦にならない方法を見つけ出していくしかありません。
記憶術の話
万人に共通するような勉強法はありませんが、記憶術みたいなものなら存在します。
今回はそのお話をしていこうと思います。
そもそも、人間が特定の情報を長期記憶として脳に保存するケースは、その情報が重要なものであると脳が認識している場合です。
そして脳が重要な情報であると認識するのは、主に以下の2種類の情報です。
(1)何度も繰り返し想起される情報
(2)極端な感情の変化が伴った情報
記憶術を磨きたいなら、上記2つのいずれか又は両方を意図的に発生させて記憶していく訓練を詰んで行けば、記憶の技術が向上していきます。
イメージできるようにもう少し深く解説していきましょう。
(1)何度も繰り返し想起される情報
何度も何度も目にすることで、想起される(脳内に思い起こされる)情報というものは、脳が重要だと認識しやすいので、結果として長期記憶として保管されやすくなります。
これを意図的に行うのが反復練習です。
最も身近な例でいうと、顔を洗う方法、ご飯を食べる方法、歯を磨く方法などの情報です。
生まれたばかりの頃は皆上手くできなかったことばかりですが、反復練習によって脳内に刻み込まれ、今では他のことを考えながらでもこなすことができるはずです。
これを勉強でも行えば、立派な記憶術の一つになります。
例えば、何度も何度も問題集を解いたり、何度もテキストを読むというあの作業です。
繰り返した回数が多ければ多いほど、長期記憶として脳内に残りやすくなります。
最近では忘却曲線(エビングハウスの忘却曲線)という言葉も一般的に知られるようになってきているので、記憶と繰り返しのメカニズムについてもある程度認知されてきています。
とても単純な話なので、誰もが納得できることだと思いますし、日頃から取り入れている記憶術です。
しかし、どのような反復練習ならば辛くないのかという点については千差万別です。
ここでそれぞれの勉強法に個体差が生まれます。
人それぞれ辛くなりにくい方法というものが異なるので、自分に合った勉強法を見つけるしかありません。
例えば、以下のようなものがあります。
講義を何度も聴くという方法
誰かの講義を繰り返し聴いてノートを取る方法
繰り返し読むという方法
何度も音読するという方法
覚えるまで繰り返し書くという方法
自分のテキストを作るという方法
大きな白紙の紙に体系図を書いて覚えるという方法
暗記カードで作って繰り返し見て覚えるという方法
自分で自分に講義を行うという方法
問題集をひたすら解くという方法
家中に暗記すべき用語を貼り付ける方法
勉強系ゲームソフトなどで問題を解いて覚える方法
座学なしで実践で何度も失敗しながら覚える方法
などがありますが、いずれも繰り返すという点で共通していて、脳内に想起される回数を増やせば増やすほど記憶として定着しやすいという点を利用した勉強法です。
自分が辛くない方法で繰り返せば良いので、方法は自由です。
最終的に記憶できてさえいれば、途中の過程は問題ではありません。
いろいろな方法を試して、最も自分に合っている方法を続ければ良いです。
もちろん複数の方法を組み合わせても良いですし、むしろその方が効果的だと思います。
3~4つほど記憶術を身に着けておけば一生使えるはずです。
(2)極端な感情の変化が伴った情報
こちらは応用編です。
人間の長期記憶というものは、基本的には繰り返し想起されることによって形成されます。
何度も見たり、読んだり、聴いたりして、脳に大事な情報なのだと認識させるのです。
しかし、稀に「1度しか経験していないのに長期記憶として残っている情報」が存在します。
皆さんにも必ず一つはあるはずです。
例えば、交通事故に遭ったときの情報、大好きだった人に振られたときの情報、誰かに言われて嬉しかった言葉などです。
それは恐怖体験かもしれませんし、喜びの体験や楽しかったという体験かもしれません。
いずれにしても、強烈な感情の変化が伴った情報です。
これを意図的に引き起こして、少ない繰り返し回数で記憶するという勉強法も存在します。
例えば以下のようなものです。
強烈なイメージと関連付けて記憶する
ストーリーで記憶する
アニメや漫画で見て記憶する
強烈な痛み(手を針で刺すなど)を連動させて記憶する
興味のある分野に特化して勉強をする
間違ったらペナルティ(大事なものを捨てるなど)を課すという方法
合格したら盛大なご褒美をもらえるという方法
最初に多額の費用をあえて掛けるという方法
恐怖や危機感を利用する方法
などです。
いずれも感情の変化を利用して記憶する方法です。
これらの方法の中は、危機感や恐怖心を利用するものが含まれるので、そのような方法についてはオススメし辛いです。
例えば、私は若い頃にとても貧乏だったので、試験に一度落ちた場合の損失が計り知れないものとなるという感覚を持っていました。
難関国家資格は大抵年に1回しか試験がないので、一度落ちれば1年の遅れが出ます。
極貧生活の中で1年遅れる(現状維持になる)のは時に死を意味しますので、危機感がえげつない状態でした。
そこで私は、あえてその危機感を煽り倒して、自己暗示をかけるようにしていました。
「落ちたら死ぬ」という謎のルールを課して勉強をしていた時期もあります。
現実的にお金がなくて餓死する可能性はありましたが、肉体労働などをすれば普通に生きられるので、実際は死にはしません。
ただ、私には助けてくれる親もいませんでしたし、頼りになる親戚もいなかったので、様々な環境も相まって自己暗示がすごく上手になり、本気で死ぬ気で勉強をするということができてしまうタイプに育ってしまいました。
その結果、毎日眠れなくなるほどの恐怖の中で朝から明け方近くまで勉強をし続けることができてしまいました。
それによってほとんどの試験に一発合格しています。
確かに危機感や恐怖という強烈な感情を利用する勉強法は効果的なのですが、同時に精神が少しずつ蝕まれます。
私の場合は、最終的には自分を追い込みすぎて、ご飯すらろくに食べずに朝から夜中までひたすら勉強をし続けるという異常な状態に陥りました。
しかもそれを、幸せなことだと感じていたのです。
当時は「勉強しながら死ねるなら本望だ」と本気で思っていました。
3年近くそういう生活をした後、体に様々な不調が現れてきたので医師の診断を受けたところ、栄養失調や内臓の機能低下が発覚して、ドクターストップをかけられました。
あれがなければ、私はきっとあのまま死ぬまで勉強を続けていただろうと思います。
ちなみに、正気に戻るのに3年ほどかかりました。
自分がおかしい状態(自己洗脳が完了している状態)だということに気づくのにも時間がかかりましたし、一般の人たちとの感覚のズレを認識して、整えるのにも時間がかかりました。
被虐待児という特殊な環境で育ってきたがゆえに、普通の感覚や普通の基準がわからず、一般世界に溶け込むまでに本当に苦労しました。
自分のようなクズが、人と同じ程度の努力で成功できるはずがない、死ぬ手前までやって、やっと普通だと心底信じ込んでいたので、すべての感覚がおかしかったです。
今でも完璧には一般人を理解できていないので、変人であることには変わりないです。
ただ、もう無理な勉強はしないです。
趣味で続けているだけです。
このように、強烈な感情(危機感や恐怖)を利用する勉強法は、ある種の劇薬と同じなので、使い所をミスると精神が崩壊したり、体を壊したりします。
そのため、プロ向けの勉強法だと思っています。
一方で、単にイメージと関連付けて記憶する方法や楽しいという感情を利用した勉強法については全く問題ないので、そういう技術については日頃から磨いておいても良いと思います。
まとめ
ということで以上のような記憶術がありますので、いろいろと試してみて、自分に合うものを見つけてみてください。
いくつかマスターしておけば、勉強をより効率的に行えるようになるはずです。
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