といじま

架空の島の不束者

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最近の記事

2023年自選30首

おかげさまで今年も楽しく歌を詠む一年を過ごせました。ありがとうございました。などと3か月前に書くつもりでした。みんなインフルエンザのせいです(嘘)。2023年の自選30首をまとめました。最後の七首以外は全て「うたの日」からです。でも半分はインフルエンザのせいなので、もうデータとして載せるだけになってしまいました。しかももう0時まわって4月1日になってしまいました。やれやれ。 辛かったなどと親には言わないがどう転んでも読める名にする 2023年01月04日『転』 上の句を飲

    • 塔に出した自作の月詠まとめ 2023年10月号~12月号

      結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。 2023年10月号 太陽の真下に二人晒されて初めて同じ傘に寄り添う 落ちるほど近くでもない雷鳴にわざと反応している会議 ベランダの窓細く開け湯加減をはかるみたいに手首を浸ける 赤ちゃんが乗っていますと帰り道黒いワゴンが威嚇してくる 記念日に食べるサイズのケーキより存在感も値段も西瓜 2023年11月号 飽きるまで食卓に置く野の花と同じ季節のポストカードを 体重の大方は水クーラーの程よく効いた部屋に寝そべる 千円をするりと飲んで

      • 塔に出した自作の月詠まとめ 2023年7月号~9月号

        結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。この号から作品2でお世話になっています。 9月号のみ不掲載の4首も書きました。 2023年7月号 改札を出てローソンにたどり着く花筏から外れるように シールだけ破り取られた大福はパン祭りから足抜けをする 鏡には物欲しそうな目のけもの洗顔料をもこもこにする 食べ終えたカレーの鍋のような夜シャンプー、すすぎ、更にシャンプー デジタルの寒暖計は春早く古い物より二度高い今朝 燕から今年も軒を選ばれてこのマンションの人は穏やか 2023年

        • 塔に出した自作の月詠まとめ 2023年4月号~6月号

          結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。この号までが若葉集でした。リーフグリーンというのか、この3号は表紙が素敵な緑色です。 2023年4月号 両手からこぼれるひかり半休は湯水のようにお日様がある 背の高いハンバーガーは取り分けて発展的に解散しよう ラザーニャに似たふりをしたラニーニャはラテンの響きなのに冷たい 牛だなあ旬のりんごでお茶にして秋の牧場を想ううたた寝 バクラバは病葉に似てパイ菓子は切り分けた時もろく砕ける ステージが4の教授のピアノに泣く私は人を癒せている

        2023年自選30首

          塔に出した自作の月詠まとめ 2023年1月号~3月号

          結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。なんとか途切れることなく12回提出できました。仕事が少し忙しくなって、他への投稿やうたの日は頑張れない日もありつつ、優先順位を月詠においてこれだけは提出していきたいと思っています。 2023年1月号 酔芙蓉しらふのままで散るように告白までは至らずに秋 誰にでもあるよダブルスタンダード雨が降るのを今日は責めない 窓からの光は淡く色彩を失くす観光ポスター静か さみしさを投げ込んでみる画面越し後ろを向かずトレビの泉 クリックの本屋で買っ

          塔に出した自作の月詠まとめ 2023年1月号~3月号

          2022年自選30首

          おかげさまで今年も楽しく歌を詠む一年を過ごせました。ありがとうございました。2022年の自選30首をまとめました。最後の六首以外は全て「うたの日」からです。 ひたすらにペットボトルを踏み潰す主婦とは何のはしくれだろう日『くれ』 引きかえに何が叶ったかというとパピコを二本食べることです『叶』 軒先にカメラを置いてみてからのもう一回がなかなか来ない『もう一回』 何度でもサマージャンボを買うように楽して痩せる特集が好き日『度』 キャンドルの連なるような道だからラジオネームで祝っほ

          2022年自選30首

          2022年下半期自選 年間に漏れてしまったお気に入り

          年間三十首を自選する途中で漏れてしまった下半期のお気に入りたちです。 つまり敗者復活コーナーです。自分の歌大好き人間なので(笑) 全てうたの日からです。 テレビでは女はこうであるべきをまた女子力と言い換えている『女は(???)』 海岸で薄くなりゆく虹のこと見送るだけのよい夏休み『虹』 天国とあなたのいない南国を秤にかけてまだ生きている『南国/天国』 入国の審査で君が目的をプロポーズだと答えて山場『国』 鍋肌に油を均すイメージで造影剤を飲んで転がる『影』 クリックをただ繰り返

          2022年下半期自選 年間に漏れてしまったお気に入り

          塔に出した自作の月詠まとめ 2022年10月号~12月号

          結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。なんとか提出を続けています。 2022年10月号 ああ早くもガタが来ている首掛けの扇風機から蝉の喘鳴 初めての高血圧になけなしの自己肯定が奪われていく 玉葱をむく親指に傷がありいつもと違う目の滲みかた 正直に腹を割っても蟹味噌をほじくるように蒸し返される 枯れもせず育ちもしない苗があり息子が一人増えた気のする 久々の泊り支度はおぼつかず後からマスク数枚を足す 2022年11月号 傍らにペットボトルの烏龍茶あと五時間で連休になる

          塔に出した自作の月詠まとめ 2022年10月号~12月号

          薔薇ではなかった歌たち~百薔薇の記念に。

          うたの日の華は薔薇です。基本的には薔薇を目指して頑張っていますが相対評価なので、いい歌が詠めたと思ってもその回に出された他の歌が更に素晴らしければ薔薇をいただくことはかないません。首席とダブルスコアの次席だったことがありますか、私はあります。自分がハートをいれた歌が一点差で首席になったことがありますか、私はあります。 逆に好みや読み方が分かれる歌、或いは一長一短がある歌が多かった場合などは同点の薔薇が何首も並ぶことがあります。そういう日にはこの歌でもらえるとは想定外な薔薇の

          薔薇ではなかった歌たち~百薔薇の記念に。

          塔に出した自作の月詠まとめ 2022年7月号~9月号

          塔短歌会に入会しました。今月の月詠も提出し、最初の半年が過ぎました。 掲載された3か月分の歌をまとめます。 入会経緯等は歌のあとにグダグダと書き連ねます(笑) 2022年7月号 狼はねぐらへ帰る傘もなく誰かの傘に入るでもなく 恋愛を諦めているモノトーンばかりの服に降れよ花びら 旅立ちがいつであっても構わないスマホの中に百冊の本 昨晩の雨に押されて何枚も窓のガラスに貼り付く桜 真空のお茶の袋が律義にも閉じ込めていた前のはつなつ 少しずつ次の検査よ遠くなれできたら年賀状くらいま

          塔に出した自作の月詠まとめ 2022年7月号~9月号

          2022年上半期自選三十首

          2022年1-6月の自選です。各月の自選と差し替えた歌もありますし、手直しした歌もあります。ほとんどは「うたの日」からで、最後三首はNHK短歌、#短詩の風、#たんたか短歌 に出したものです。 卵でも卵みたいな出会いでも加熱し過ぎてこうしてしまう『こう』 雨上がり知りたがりやの犬になる花の香りが二つしている『犬』 湯たんぽに似ているものは抱いてみる湯たんぽはもういないのだから 『湯たんぽ』 優しさとだいたい同じバファリンのそっくりさんの約半分は『さん』 前職を逃げ出し

          2022年上半期自選三十首

          2021年自選30首

          おかげさまで今年も楽しく歌を詠む一年を過ごせました。ありがとうございました。まだ数日ありますが、2021年の自選30首をまとめました。最後の三首はNHK短歌、それ以外は全て「うたの日」からです。 歌だけサッと読んでくださる方はこのまま、一言エピソード付きを読んでもいいよという方は歌一覧をとばして更に下にお進みください。来年もよろしくお付き合いくださいませ。 2021年自選30首 (一覧) 信号は七色くらいあるといい紫のとき深呼吸する『七』 日当たりの悪いベンチで眠りたい猫

          2021年自選30首

          2021年下半期自選 年間に漏れてしまったお気に入り

          年間自選は三十首、上半期も三十首するのですが、下半期は年間自選と時期が被るので選がダブります。だからと言ってやめてしまうと下半期の歌は上半期の歌に比べnoteに残る率が半減するので、自作が大好きな(笑)私としては寂しいところです。 じゃあ、と考えて年間には入らなかったけどもし下半期三十首をやっていたら入れたんじゃないかという残念な歌だけのエントリーを作りました。三十首の半分以下なのでかえって目立つのかも? ほとんどは「うたの日」で最後の二首は「たんたか短歌」に投稿したもの

          2021年下半期自選 年間に漏れてしまったお気に入り

          2021年上半期自選三十首

          2021年1-6月の自選です。各月の自選と差し替えた歌もありますし、手直しした歌もあります。ほとんどは「うたの日」からで、最後五首は短詩の風、たんたか短歌、NHK短歌に出したものです。 短めに茹でたはだかは滴ってアルデンテとは芯をもつもの『全裸で一首』 晴れの日を寿ぐように破顔してサーターアンダーギー浮きあがる『長音』 信号は七色くらいあるといい紫のとき深呼吸する『七』 時たまにペットボトルへ手を伸ばすゲル状だっていい日曜日『状』 カンニングしているみたいあの人の詩

          2021年上半期自選三十首

          俳句のログ

          twitterに #kigo というタグがあって、毎日季語の俳句のお題を出してくださる方がいらっしゃって、個人的に存じ上げないけれど毎日ありがとうございます。 俳句は字数が少ない上に季語で3割がた埋まり、きわめて「被る」可能性の高いものだから、数年前詠み始めた時は自分の句が類想である(という指摘を受ける)ことの怖さに暫くしてやめてしまった。のだけど、最近時折り詠んでいる。そこまで怖くなくなったのは年でぼけちゃったかも(笑) 4月から数えたら三十句あって、どこにもログがない

          俳句のログ

          花で見送る

          花で見送る といじま 気が付いたベッドの上で明朝のごみの始末を言い置く母は ドラマより告知の部屋は窮屈で主治医の胸のペンがかわいい Sick mom laughs, between the clouds in June comes out the brightness of the sun. (病床の母が笑えば六月の雲の隙間にのぞく明るさ) ひとときを母と語らう花を置くスペースも無い仕切りの中で 絵手紙を伯母に出したい母のため文具店まで妹と行く 平成を越えていくの

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