2021年上半期自選三十首

2021年1-6月の自選です。各月の自選と差し替えた歌もありますし、手直しした歌もあります。ほとんどは「うたの日」からで、最後五首は短詩の風、たんたか短歌、NHK短歌に出したものです。

短めに茹でたはだかは滴ってアルデンテとは芯をもつもの『全裸で一首』

晴れの日を寿ぐように破顔してサーターアンダーギー浮きあがる『長音』

信号は七色くらいあるといい紫のとき深呼吸する『七』

時たまにペットボトルへ手を伸ばすゲル状だっていい日曜日『状』

カンニングしているみたいあの人の詩のアカウントを知ってしまって『ズル』

小豆大くらいの歌に柔らかな蔓をひとすじ伸ばすリプライ『豆』

おほよそがいてつくむらをみまもつてやさしくながるこんぺきのかは『オイミャコン』

日当たりの悪いベンチで眠りたい猫と意見が違ってもいい『猫』

絵手紙をはじめましたと水彩のハートマークがとても大きい『自由詠』

押し売りをわずか三語で論破してナイスピッチングだと思った『ナイス』

後続を律義に待った人たちでそれなりに混むバスの穏やか『後』

モカ・マタリ七つの海に出るまでは苦くなかったみたいな名前『七』

正論で殴られた日は印籠を出す格さんを見ても不愉快『快』

たらちねのユーチューバーの手ほどきに頷きながら鶏を煮ている『インターネット』

努力って実は裏切る奴だからむしろ靴下とか気にしなよ『下』

大人しくしてる四月も二度めなら少し器用にZoomで飲める『四月』

叩いても直るものではなかったよ昭和のテレビも悪い子どもも『昭和』

警鐘をリフレインせよオルゴールつまり世界は小さいのだと『リフレイン』

コストコの中心で叫ぶ友だちが多い人ほどきっと賢い『賢』

キッチンにしまったままの素麺と同じくらいの限界がある『まま』

忘れずに帽子をかぶる人だった遺影にならぬ笑顔のあまた『遺』

カステラを落としたように十二時のビルの谷間のキッチンカーは『ビル』

サンダルでちょっと地球を出てみたいたとえばとても蒸し暑い日に『地球』

箱買いの深層水に腰かけて居間の母から避難している『深』

ほろ酔いの声が向こうにこだまする男も風呂で歌うのですね『男』

太陽はコートの中で手をつなぐ邪魔になるから北風が好き『短詩の風』

終電の窓から見れば私には青いだなんて思えない海『海』

虫眼鏡小さき文字にかざす時夏の日に見た触角がある『眼鏡』

父に似た木彫りの猿が日をまたぐ玄関先で目を開けている『猿』

一晩で隅の方まで打ち解けた朝の布団は人懐っこい『布団』

今更感200%ではありますが、ハッシュタグの上半期をやってそれっきり忘れてしまっていました(^^;) 詠めない日もありつつ、なんとか自分として好きだと思える歌を集めることができたのでホッとしています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

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