2023年自選30首

おかげさまで今年も楽しく歌を詠む一年を過ごせました。ありがとうございました。などと3か月前に書くつもりでした。みんなインフルエンザのせいです(嘘)。2023年の自選30首をまとめました。最後の七首以外は全て「うたの日」からです。でも半分はインフルエンザのせいなので、もうデータとして載せるだけになってしまいました。しかももう0時まわって4月1日になってしまいました。やれやれ。

辛かったなどと親には言わないがどう転んでも読める名にする 2023年01月04日『転』
上の句を飲み会前に思いつきガードレールに腰かけている 2023年02月04日『腰』
飲めないとこたえた時のまたまたぁ、までのセットと蛸わさ一つ 2023年03月02日『また』
キッチンは母の統治の面影が残り遺跡も見つかっている 2023年03月18日『治』
浴槽で百を数えて跳ね上がるハシナガイルカは遠ざかり凪 2023年03月22日『ガイル』
農道にあれよあれよと転がってきっと祭りはこんな始まり 2023年05月07日『あれ』
ピーナッツバターを舐めた背後から不意に驚かされる雷鳴 2023年05月11日『自由詠』
疲れにはハニーレモンがはやく効く笑顔でくれたものはなおさら 2023年06月05日『疲』
じゃがいもの芽を取りながら法律に触れんばかりの妄想をする 2023年06月13日『妄』
腹痛はいつからという問いかけにまたきっかけが蒸し返される 2023年06月24日『という』
根昆布はかさかさのまま保たれて瓶の中には令和はいない 2023年07月01日『かさかさ/がさがさ』
ノーヒントみたいな地図を伯母が書くこれは遺伝の可能性大 2023年07月15日『大』
孫がいて娘と義息(むすこ)がいて父の一人称は乱れっぱなし 2023年07月31日『乱』
薔薇色の小舟は進む 工場はりんごをパイに変えてゆく川 2023年09月15日『舟』
双方の主張を聞いているけれど中腰だからもう限界だ 2023年09月17日『双』
十億が当たったなんて嘘メールだけど独りの夜に明るい 2023年09月29日『けど』
地下鉄はいつでも時化の音がして全員の手に探査機がある 2023年10月08日『時化』
Tシャツの中のキティはオブザーバー急な会議に動じていない 2023年10月17日『リモートワーク』
甲羅って無敵なものじゃないだろう我慢に慣れているだけのこと 2023年10月28日『亀』
この辞書のキンタマーニ(Kintamani)の高原に先に到達した奴がいる 2023年11月06日『キンタマーニ高原』
いい奴に限って早く死ぬという秋はみんなに愛されていた 2023年11月12日『限』
ローキックから始まってハイタッチみたいなうちら美術部だった 2023年11月23日『ローキック』
病棟を手を引く人が行き過ぎる子どもを連れて大人を連れて 2023年12月30日『連』

突然の雨に打たれてしまうとき失意は細い枝ほど揺らす 塔 8月号
私より先に来ている人たちの会話の大縄跳びに飛び込む 塔 8月号
踏み台の上で背伸びをしてわかる大谷選手の目から見た部屋 塔 8月号
この部屋のこだわりらしいカーテンを観光名所のように眺める 塔 9月号
落ちるほど近くでもない雷鳴にわざと反応している会議 塔 10月号
千円をするりと飲んで自販機は歓迎ムード一色になる 塔 11月号
紙おむつが自分ではけたCMの大人の笑みは子どもと違う 塔 12月号

2024年も既に4半期を過ぎてしまいましたが、これからもよろしくお願いいたします。といじま こっそり拝

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