塔に出した自作の月詠まとめ 2023年10月号~12月号

結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。

2023年10月号
太陽の真下に二人晒されて初めて同じ傘に寄り添う
落ちるほど近くでもない雷鳴にわざと反応している会議
ベランダの窓細く開け湯加減をはかるみたいに手首を浸ける
赤ちゃんが乗っていますと帰り道黒いワゴンが威嚇してくる
記念日に食べるサイズのケーキより存在感も値段も西瓜

2023年11月号
飽きるまで食卓に置く野の花と同じ季節のポストカードを
体重の大方は水クーラーの程よく効いた部屋に寝そべる
千円をするりと飲んで自販機は歓迎ムード一色になる
エアコンにやたらと近い総務課で夏に高まるラーメントーク
一日の懺悔を空に聞いてほしいこれが酸性雨で構わない

2023年12月号
真夏日に至らなかった日の午後に窓を開ければ気が早過ぎる
羽のない扇風機に手を挿し入れるのはママパパが多い店内
顔色はむしろ明るくなってくるベリーのジャムの青紫に
お姫様扱いの位置週末の買い物かごの焼き立てパンは
もし道にあまたに落ちているこれが蝉でなければ夏でなければ
手は洗ううがいは割とさぼってる一度かかればそんなもんでしょ
紙おむつが自分ではけたCMの大人の笑みは子どもと違う

もう少し早くまとめる予定でしたがインフルエンザでばったばったとやられた年末年始でした。コロナ程ではないにせよ、久々にかかったこっちもたいがいでした。
作品2に移って半年、欠詠だけはないようにが精一杯というか、自分の短歌に対するエネルギーがこのくらいなのかもしれないと思っていたりもします。欠詠しなければ五首くらい毎月歌を載せていただけて、叶うなら誰かの目に触れる機会があれば十分満足でうたの日と月詠以外にほぼ出さなくなりました。
これからも細く長く続けていけたら。

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