薔薇ではなかった歌たち～百薔薇の記念に。

うたの日の華は薔薇です。基本的には薔薇を目指して頑張っていますが相対評価なので、いい歌が詠めたと思ってもその回に出された他の歌が更に素晴らしければ薔薇をいただくことはかないません。首席とダブルスコアの次席だったことがありますか、私はあります。自分がハートをいれた歌が一点差で首席になったことがありますか、私はあります。

逆に好みや読み方が分かれる歌、或いは一長一短がある歌が多かった場合などは同点の薔薇が何首も並ぶことがあります。そういう日にはこの歌でもらえるとは想定外な薔薇のおこぼれに預かってしまう日もあるわけです。人数が多い回に噛むほどに味の出る渋い歌に気が付かず後でしまったと思ったことはありませんか、私はあります。

今月やっと百薔薇に到達しました。うたの日にはじめて参加したのは2014年なので、史上一番ゆっくりの到達記録だと思います。薔薇かどうかで人目のつき具合は大きく変わるものでもあります。評をいただいたり、あとでtwitterに出した時にたくさんいいねをいただいたりすることもあるものの、薔薇がもらえなかった歌にはできるだけ日の目を見させてあげたいので、お気に入りの五十首を百薔薇の記念にアップしたいと思います。と言いつつ薔薇をもらった歌はもちろん思い入れのある歌たちですので後日こちらもまとめてアップしたとしても許してください(笑)

それではよろしければ薔薇になれなかった歌たちも見ていってあげてください。詠んだ日順に十首ずつかためてありますが特に意味はありません。下にいくほど新しいです。最近のだけでいいや、とか適当につまみ読みしていただければ。

お礼状したためている母の背と蓋の開いてるインクのにおい
子どもだけ先に帰した面談室どちらともなくする咳払い
ほし組と甥が名のみを繰り返すどんな楽しい場所なんだろう
この街で友達となる絵を探し常設展をゆっくり進む
天気さえ当たればよかった少年が気にし始めた蟹座の運勢
これからも視聴者でしかない僕に君は昨日のドラマを語る
受付で最中の人と呼ばれてることは気付かぬふりをしている
約束の店は電波が圏外でYの悲劇はそこに始まる
街頭でかざされた手にこちらから祈ってあげたいようなあかぎれ
「ラジオではお伝えできない香りです」伝わらないがその桃を買う

悪いことばかり続いた一日に起死回生のホームランバー
身を寄せた深夜の公民館の中ポカリのラベルだけが快晴
ユニクロで向き合ってみる真っ先に赤やピンクを外す自分と
一杯のラーメンだとか深夜とかそれ単体に毒性は無い
ハイハイと二度頷いた肯定にチェックしたあと外すみたいに
勝った後一人で帰る負けた子が抱きしめられているの見ながら
炒めたら味噌とみりんで和えなさいそんなレシピと春の到来
手の上でそっと開けば豆本にとじこめられた海があふれる
先生にしばらくぶりに会うように博物館のくじらを仰ぐ
茄子だけどもはや茄子ではないような大きさになりボブと名付ける

足のないサブレの鳩が配られて言伝なんてなかったのだろう
大人には床に転がりどうしても欲しいと言えるものは少ない
しっぽだけ挟まれているピカチュウとドアにもたれて次の駅まで
長すぎる春だと思う何問もＢが続くとずらしたくなる
この文字に触れとばかり筆圧の強い絵葉書よこすだなんて
三分（で終わるかのようタマネギは全て刻んである）クッキング
人ひとり入る深さの跳び箱を酔ったふりして被っていたい
ほいミカン、と押し込まれて回復の魔法がそんな名前だっけな
腹を割って話そうと言う先輩の柔軟剤の香りがきつい
ショッカーの腹があまりに痛そうで正義のキックがかすんでしまう

ボレロ鳴る音が聞こえたところから向こうの人にもボレロ始まる
子どもには向かい風さえ親しげで抱きつくように腕を広げる
人生を軽トラックに積めるだけ選ぶ途中で迷うピアニカ
アルコール不使用という乳液よ素面のくせにやさしくしないで
女子会は表向きにはなごやかで残り一つをすすめたりする
独り寝に薪を燃しているようにときおり爆ぜる深夜のコント
一晩中シャングリラ語で語ってもいいよ明日もお休みだから
サンダルでちょっと地球を出てみたいたとえばとても蒸し暑い日に
ノーブラに気づいた途端純情がまだあるような小走りになる
普及型どこでもドアで来る孫に飛行機雲の話がしたい

Ａ型と答えた時にカーテンのレールにかけた服を見ないで
許せない客っているよ富士山も前に何度か噴火してるよ
神様が俺のコピペを二回してその一回が木村拓哉や
雨上がり知りたがりやの犬になる花の香りが二つしている
誰よりも趣味を認めてくれていた祖父に運転するなと怒鳴る
何度でもサマージャンボを買うように楽して痩せる特集が好き
引きかえに何が叶ったかというとパピコを二本食べることです
僕以外すでに来ていて事実上遅刻の顔に切り替えている
逮捕後の犯人なみにくたびれた顔が身分の証明をする
戦争を止める方法だとしたら電気を捨てる人手をあげて