2021年自選30首

おかげさまで今年も楽しく歌を詠む一年を過ごせました。ありがとうございました。まだ数日ありますが、2021年の自選30首をまとめました。最後の三首はNHK短歌、それ以外は全て「うたの日」からです。

歌だけサッと読んでくださる方はこのまま、一言エピソード付きを読んでもいいよという方は歌一覧をとばして更に下にお進みください。来年もよろしくお付き合いくださいませ。

2021年自選30首 (一覧)
信号は七色くらいあるといい紫のとき深呼吸する『七』
日当たりの悪いベンチで眠りたい猫と意見が違ってもいい日『猫』
後続を律義に待った人たちでそれなりに混むバスの穏やか『後』
正論で殴られた日は印籠を出す格さんを見ても不愉快『快』
たらちねのユーチューバーの手ほどきに頷きながら鶏を煮ている
『インターネット』
努力って実は裏切る奴だからむしろ靴下とか気にしなよ『下』
叩いても直るものではなかったよ昭和のテレビも悪い子どもも『昭和』
キッチンにしまったままの素麺と同じくらいの限界がある『まま』
忘れずに帽子をかぶる人だった遺影にならぬ笑顔のあまた『遺』
サンダルでちょっと地球を出てみたいたとえばとても蒸し暑い日に『地球』
ためらわず乗り越えていた金網に大人の靴の足は合わない『金網』
歌いだす父からすると江ノ島はうちの近くのローソンらしい『江の島』
A型と答えた時にカーテンのレールにかけた服を見ないで『自由詠』
洗ったらまだいけそうなこの街も腐った茄子の巻きぞえにする『腐』
宵闇の散歩がてらにたどりつくポストは真昼よりも赤々『赤』
猫かなと思うはやさで横切った夏休み、ねえ戻っておいで『かな』
子どもらを真似してみれば空き瓶を耳に当てても夏の海鳴り『自由詠』
普及型どこでもドアで来る孫に飛行機雲の話がしたい『型』
アルプスの漁村の出だというほらで留学生は溶け込んでいく『村』
ノーブラに気づいた途端純情がまだあるような小走りになる
『動詞で終わる歌』
モナリザの全てを×で否定する気狂いじみた刺繍に耽る『気狂い』
ここだけの話が綴じてありそうなスヌーピー氏の耳の裏側『犬』
東京のマークも街を見習って秋は黄葉したらいいのに『黄葉』
らっぱ飲みするビールだと言う君が挿したライムがキュンとすっぱい
『キュン』
絶品という程でないパイがあり教えないのがちょうどいいカフェ『絶』
サンデーをヒュルリヒュルリと巻き上げるチーフにはもう内定がある
『ヒュルリ』
お互いの違うベクトル足し合って餃子の頻度だけ増えている『ベクトル』
虫眼鏡小さき文字にかざす時夏の日に見た触角がある NHK短歌 『眼鏡』
結婚と検索すれば広告のAIがすぐ誤解してくる NHK短歌 『SNS』
手でこいでいる人もいる荒川のサイクルロードの全員に風
NHK短歌 『パラスポーツ』

2021年自選30首 (エピソード付き)

信号は七色くらいあるといい紫のとき深呼吸する『七』
今年の薔薇で一番前向きに詠めた歌。虹の七色を愛する者としてこれは嬉しかったです。

日当たりの悪いベンチで眠りたい猫と意見が違ってもいい日『猫』
猫は気持ちいい場所を知っているそうですね。私は眠いことの方が優先です。

後続を律義に待った人たちでそれなりに混むバスの穏やか『後』
私は是が非でも先のバスに身体を押し込むタイプなので、こういう人達に憧れています。

正論で殴られた日は印籠を出す格さんを見ても不愉快『快』
逆ギレの歌。そういう日ないですか?

たらちねのユーチューバーの手ほどきに頷きながら鶏を煮ている
『インターネット』
このお題にユーチューバーはベタだったのでギャップを作りたくて枕詞を入れました。

努力って実は裏切る奴だからむしろ靴下とか気にしなよ『下』
人は見た目が9割とか。辛い(;O ;)割と気に入っている歌です。

叩いても直るものではなかったよ昭和のテレビも悪い子どもも『昭和』
一瞬はビクって効くんですよね。対症療法でしかありません。

キッチンにしまったままの素麺と同じくらいの限界がある『まま』
今年のベストはまた暗い方の歌だった(笑)素麺の賞味期限の多くは1年だと思います。コロナ、いい加減長いですね。

忘れずに帽子をかぶる人だった遺影にならぬ笑顔のあまた『遺』
3月に母が亡くなりました(note"花で見送る"の話)。旅先やイベントの楽しそうな写真がだいたい帽子姿で困りました。

サンダルでちょっと地球を出てみたいたとえばとても蒸し暑い日に『地球』
成層圏の青色が好きです。万年筆のインクも青が濃いのが好き。

ためらわず乗り越えていた金網に大人の靴の足は合わない『金網』
裸足なら大人でもフェンスに足はかけられます。そうしないのが大人。靴のまま登れるなら子供。

歌いだす父からすると江ノ島はうちの近くのローソンらしい『江の島』
俺の家も近い~♪江の島で即勝手にシンドバッドが出てくる世代(^^;

A型と答えた時にカーテンのレールにかけた服を見ないで『自由詠』
夫婦子供二人全員A型の我が家の惨状。

洗ったらまだいけそうなこの街も腐った茄子の巻きぞえにする『腐』
買った茄子が袋の内側でべろーんと腐っていた時に反動で詠んだ歌(が薔薇で気が済んだ)。

宵闇の散歩がてらにたどりつくポストは真昼よりも赤々『赤』
発送書類の多い年でした。よく仕事が終わってポストに出しに行っていました。

猫かなと思うはやさで横切った夏休み、ねえ戻っておいで『かな』
今年ほど不完全燃焼な夏休みってなかったと思う。TVで見るだけの五輪に他の月の祝日が消えて辛かったです(涙)

子どもらを真似してみれば空き瓶を耳に当てても夏の海鳴り『自由詠』
…実は子供の頃から「何あてても同じでは?」と思っていたりします…。

普及型どこでもドアで来る孫に飛行機雲の話がしたい『型』
飛行機雲が好きです。でもどこでもドアはすごく欲しい。

アルプスの漁村の出だというほらで留学生は溶け込んでいく『村』
妙にリアリティがあるというありがたい評をいただいた歌。母校は留学生がとても多かったので、むしろほらなど吹く必要が多分なかったと思う。

ノーブラに気づいた途端純情がまだあるような小走りになる
『動詞で終わる歌』
だいたいこういう歌を詠む時は数日前くらいにそういう事があった(笑)

モナリザの全てを×で否定する気狂いじみた刺繍に耽る『気狂い』
クロスステッチって×を続けていく作業だと思った時にふと恐怖を覚えました。

ここだけの話が綴じてありそうなスヌーピー氏の耳の裏側『犬』
ビーグルのぺろんとした耳って何かのカバーの様に見えませんか?

東京のマークも街を見習って秋は黄葉したらいいのに『黄葉』
イチョウの形のあれです。年に一度くらい黄色になる日があってもいい。

らっぱ飲みするビールだと言う君が挿したライムがキュンとすっぱい
『キュン』
コロナがすっかり病気の名前になってしまって寂しい。

絶品という程でないパイがあり教えないのがちょうどいいカフェ『絶』
言いふらさなくていいくらい、普通においしくて居心地のいい店が近くに欲しいです。

サンデーをヒュルリヒュルリと巻き上げるチーフにはもう内定がある
『ヒュルリ』
お題の消化に四苦八苦。頭の中はずっと越冬つばめでしたねー。

お互いの違うベクトル足し合って餃子の頻度だけ増えている『ベクトル』
ベクトルの計算方法、共通一次の会場に捨ててきました。

虫眼鏡小さき文字にかざす時夏の日に見た触角がある NHK短歌 『眼鏡』
老眼の歌にロマンチックと評をいただけたことがとても嬉しかったです。NHK短歌の入選は一生の思い出にします。でもまた採用されたい。

結婚と検索すれば広告のAIがすぐ誤解してくる NHK短歌 『SNS』
検索した途端に関連産業の広告を投げてきてSNS怖い。

手でこいでいる人もいる荒川のサイクルロードの全員に風 
NHK短歌 『パラスポーツ』
自転車を詠んで佳作秀歌は嬉しかったです。多摩川じゃないのは道幅が狭くてシチュエーションが厳しい(笑)と思ったため。

エピソード付きまでお読みいただきありがとうございました。新型コロナで職場縮小により居場所が(物理的に)なくなり、完全在宅勤務者になりました。来年コロナが収まっても当面この生活が続く予定です。短歌もマイペースで続けていこうと思っています。うたの日ではやっと薔薇が90をこえましたので、来年はとりあえず百薔薇を目指します。これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。  といじま拝

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