塔に出した自作の月詠まとめ 2022年10月号~12月号

結社誌に掲載された3か月分の歌をまとめます。なんとか提出を続けています。

2022年10月号
ああ早くもガタが来ている首掛けの扇風機から蝉の喘鳴
初めての高血圧になけなしの自己肯定が奪われていく
玉葱をむく親指に傷がありいつもと違う目の滲みかた
正直に腹を割っても蟹味噌をほじくるように蒸し返される
枯れもせず育ちもしない苗があり息子が一人増えた気のする
久々の泊り支度はおぼつかず後からマスク数枚を足す

2022年11月号
傍らにペットボトルの烏龍茶あと五時間で連休になる
潮風が残していった連休を見事に落とす家のシャンプー
バス遅く日頃は通り過ぎる木の黄色い花が雨に揺れてる
コスパとか結果論には目もくれずオクラの花はいとも明るい
アレンジが違ってもなお懐かしく息子の歌うみゆきのカバーは

2022年12月号
参道を冷やかしていて下駄ばきのウッドブロック時々狂う
ほれぼれと和綴じの紐を撫でている電子書籍が好きなくせして
足首も鈴を担ってにぎやかな路上演奏家という孤独
夏の鬼鎮まっていく緑なす宇治金時を匙で荒らせば
草も木も我が家族より早起きで五時の空気は緑の匂い
親たちは団地に残り先月でジャングルジムは姿を消した
本にあるレシピを二倍する夜もあったいつかは半分になる

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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