2022年下半期自選 年間に漏れてしまったお気に入り

年間三十首を自選する途中で漏れてしまった下半期のお気に入りたちです。
つまり敗者復活コーナーです。自分の歌大好き人間なので(笑)
全てうたの日からです。

テレビでは女はこうであるべきをまた女子力と言い換えている『女は(???)』
海岸で薄くなりゆく虹のこと見送るだけのよい夏休み『虹』
天国とあなたのいない南国を秤にかけてまだ生きている『南国/天国』
入国の審査で君が目的をプロポーズだと答えて山場『国』
鍋肌に油を均すイメージで造影剤を飲んで転がる『影』
クリックをただ繰り返す右利きである生きやすさ息の苦しさ『右』
戦争を止める方法だとしたら電気を捨てる人手をあげて『戦争を止める方法』
消去法ばかりが脳に忙しない得意科目を書いているのに『科』
ちりちりと秋刀魚の皮がはぜている日焼けをしたと聞いてそれきり『秋刀魚』
「雨だす」とややかしこまる分布図が西から下り坂だと告げる『だす』

趣味欄とさらに特技の欄にまで散歩とあれば訳が気になる『散歩』
きりぎりす的ポジションを確立し秋が来ている四十五歳『確』
木の葉にも街にも深き色満ちて染まるは秋のための自動詞『自動詞』
翌日に筋肉痛のでる場所で何の部活か当ててあげよう『筋肉痛』
柿の木の下で飛ばしたシャボン玉もう暮れかかる光を映す『しゃぼん玉』
角質を喰らう魚に囲まれて足湯で弱い生きものになる日『足』
初雪はグラスの縁に舞い降りてしっぽがあれば振っていました『縁』
帰ったらカレーうどんはすぐできる冬が追いかけたって無駄だよ『冬』
理数科の異端児だから紫陽花を差し出されると心が揺れる『異端児』
門限を懐かしむ夜鳥籠の扉でわたし守られていた『鳥籠』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?