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記事一覧

心宮

細雪に情けなく腕を震わして 遠雷と聞き違うほど 深い産声を上げる哀しみに 「何かあったのか…

3

浮きたがり

グリーンルームを透き通る光にとって 心は常に凪いでいるのと変わらない だからこそ太陽は私を…

5

雪国

. . . . . . . (微かな) (羽虫にも劣る雪が) (降っている...) . 天の川の手を私に垂らす 新…

2

電波塔

漣のような明滅が 冬 と光っている 空を滑るみぞれ雪 もまた 明滅して いのちが 溶けて 結んで…

4

泡夢

頭ン中に波そよぐ、 青海が…溢れているので 一、空気にすら脅かされうる私の視…

4

真紅

一瞬だった。 僕の心の林檎を齧る、 夕焼けの麓で 無造作に置かれた麦を 押し退けて駆けるよ…

2

空席

夕焼けに向かって振り投げたサンダルは あの日を境に帰ってこなかった 雨ばかり続く、服の重たくなる毎日 僕を傍目に、若葉の占領する空気は膨らむ。 そうなればなるほど地球は健康になるんだよと、 きっと環境を知らないバカな教師はいった 人間の都合で歪めたものを、 人間の考えた言い訳でどうにか出来るものか 自然の力すらも、人間によるものならば 世界は嘘と偽と幸せで出来ていた それを知らない人は毎日笑う だから君は毎日泣いた 日が暮れても、雨でも晴れでも泣いた いつまでも、授業のプー

浜辺の階段

知っていますか。 世界を渡る、美しき螺旋の調べ。 白波に優しく揉まれて 太陽の光を蓄えて 七…

3

ささやかな暴風雨

グラニュー糖をひとさじ 放り込んだような やさしい夜風が、 しとしととした肌を撫でる 濁った…

5

月から降る涙

初めて歌声を載せた旋律は 涙が心の底に溜まって、それから それが膨れて、破裂して、その時に…

12

無垢な接吻

大気で一心に 肺を満たす 両の手を 朝露で 湿らせて ただ 母になってくれないかと 願う …

5

いびき

ただのいびきでありました。 よく騒ぐ夜であるので、 星を一つ、天から取って その光を以て夜…

3

夏たる条件

騒がしく響く蝉を 一匹、一匹、撃ち殺すと 驚くほど静かな夏を、 あなたは手にすることが出来…

3

夜色の猫

徐々に青く染まっていく たまらなく美しい街並みを見つつ 内では湿気が顔に抱擁するので たまたまそこにある硝子を開けると 夜が、すらっ と入り込んできた。 と、夜は言うんだ。 「随分とまあ、狭い昼だこと。 こんなんじゃ、あたし入れないわ。」 黒、という印象の猫なで声で、続ける。 「空を見て見なさいな。昼は向こうにあるのだから、それを追いかければいいわ。」 確かに遠くにはまだ、夕焼けが燻っている。 それに向かって、走っている人もいる。 顔は見えないがきっと笑っている。