電波塔

漣のような明滅が 冬 と光っている
空を滑るみぞれ雪 もまた 明滅して
いのちが 溶けて 結んで 積もり積もって
(これが人の世界の潤滑油)
(布の上に置かれた雪はまほろぶ)

蟲の脚が大地からはみ出している 白銀
海の螺旋状から 弾かれた酸性の雫
ご覧、人の心にぶら下がる
葡萄のような感情の袋を。
(哀しみも喜びも等しく包含されて)
(うがんで見ると枯れて落ちる)

丘の先の錆鉄の電波塔には
鳥の時の生命の連なりがある
一直線に1000年が留まっている
(しかし、その上には雪がまた)
(1000年の時は今さんぶれた)

我々はいつまでも直線にある。
その直線に、電波は奥行きを与える。
電線に触れる雪は眩しくて
生命の輝き これが生命
(誰もが辿っている)
(海岸に波がさざめいている)

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