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無垢な接吻

大気で一心に 肺を満たす
両の手を 朝露で 湿らせて
ただ 母になってくれないかと 願う
巨木の中で 冬を待つ 虫どものように
張り付く指先 に映る 瞳は
枝先 の雫との光の 合わせ鏡
ひとしきり に悪の 蔓延るように
玉石 磨く満つる潮 海岸の 線 ほどに
不明瞭 な君の 君の 君の…

僕の 瞳を 満たす 海にすら
君は目もくれないで 花咲かす 土壌さえ
見つけられないままに 慄く 空に
弾ける 真冬の 白い空間のように
弾けて無くなる 運命であるのに
生命よりも儚い  怒涛の拍動のみの
後ろ が見えない君には 存在しない
のと同義で あるから そう過ごす
ことの出来うる世界には 悲しみが
宙ぶらりんのまま 寛いで いるのだろう

僕には 植物にとって の光 の君が
今では 害虫な程で 時間とは 音楽
なのだと 気付く欠陥 という事実
それが 悲しくて耳を閉じた 過去も
葉脈の 裏側で 懐かしく眠りこけて
目覚まし時計 なんて言葉すら
無垢な唇は 虚空に接吻した
その美しき 柔肌にまた、僕も
優しく静かに ふ と 接吻した

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