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名文引用箱

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読んだ本の中から名文を引用し箱の中に放り込んでゆきます。
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記事一覧

名文引用箱

《ある意味では、党の世界観の押し付けはそれを理解できない人々の場合にもっとも成功していると言えた。どれほど現実をないがしろにしようが、かれらにならそれを受け容れさせることができるのだ》(ジョージ・オーウェル『一九八四年』)

名文引用箱

《自由とは二足す二が四であると言える自由である。その自由が認められるならば、他の自由はすべて後からついてくる》(ジョージ・オーウェル『一九八四年』)

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《未来へ、或いは過去へ、思考が自由な時代、人が個人個人異なりながら孤独ではない時代へ――真実が存在し、なされたことがなされなかったことに改変できない時代へ向けて》(ジョージ・オーウェル『一九八四年』)

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《「誰もものごとの結果に対して責任を取ろうとしないことに、うんざりしているんだ。何か問題が起きれば、それはぜんぶシステムのせいにされる。でも、システムがそうなったことに責任がある人間が、誰かいるはずだよ!」》(マルク=ウヴェ・クリング『クオリティランド』)

名文引用箱

《この頸と脚首を二匹の青鬼赤鬼に預けることができたら! そしてタオルか洗濯物をしぼるように、このぼきっぼきっと鈍い音をたて続ける肉体を、力まかせにしぼって欲しい! もしそのような鬼があらわれたならば、その青鬼赤鬼の褌を一生洗い続けてもよいと男は風呂の中で空想したほどだ》(後藤明生『隣人』)

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《「反日常」的な「異常」を、一見「平凡」な「日常」の形に「異化」する方法は、日常そのものを、そういったグロテスクなファンタジーの構造に組立てる方法だったと思う。ファンタジー(幻想的な世界)は、別にわれわれの生きている「日常」の外側に、別な世界としてある必要はない。「日常」の世界の事物(人間)と事物(人間)との関係、組合わせ、配列というものを一つの構造としてとらえ直してみれば、「日常」そのものがすな

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名分引用箱

《『変身』は、悪夢小説といわれているとしても、決して夢を書いたものではない。しかしそこには、夢の方法が用いられている。つまり『変身』は、夢を書いたのではなく、夢の方法によって書かれているわけだ。夢の論理によって書かれた現実なのである》(後藤明生『笑いの方法――あるいはニコライ・ゴーゴリ』)

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《カフカの唐突さは読者だけでなくカフカ本人にも唐突だ》(保坂和志『読書実録』)

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《夢は一つ一つの人や物や行為や会話が何を意味するか以前に、全体を染める空気が不穏や不安だったりしみじみ幸福だったりする》(保坂和志『読書実録』)

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《カフカの無計画性やそれゆえの筋の記憶できなさ、最も取るに足りないと見えるものこそここでは重要なのだというようなカフカ独自の論法》(保坂和志『読書実録』)

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《「あいつは自分でだめになっているんだ。もし、お前がそれをとめようとしたってできっこないな。これからあとで俺があの女を捨てるとすると、すごくだめになったみたいに見えるだろう。だけど、あいつがお前を好きになるとすると、そいつはたちまちのうちに回復するな。ほとんど以前と変らないぐらいにだよ。ところがだ、あいつはそこであらためてだめになる。自分でだ。それに、倍も早くだよ。そうしたらお前は、もう我慢できな

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《感謝というのは、時と場合によっては、物乞いだ》(ローベルト・ヴァルザー「タンナー兄弟姉妹」)

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《ねえ、わたし、勘違いというのが大好きなの、あなたも同じで、勘違いが好きに違いない、わたしにはわかるわ》(ローベルト・ヴァルザー「タンナー兄弟姉妹」)

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《まだ自分自身、何者でもないといっていいあなたが、同じように何者でもない人を嘲る理由なんてありはしないわ。自分も運命と闘っている、他の人もその人なりのやり方で闘っている、それでいいじゃない》(ローベルト・ヴァルザー『タンナー兄弟姉妹』)