【レビュー】『逆境を跳ね返す力』~第40節ヴァンフォーレ甲府VSファジアーノ岡山~

試合結果

2022 J2 第40節
10/9 13:05 K.O. @JITリサイクルインクスタジアム
甲府(1-2)岡山
43分 永井龍
73分 須貝英大
80分 ハン・イグォン

スタメン


マッチレポート

逆境でも粘り強さと勝負強さを発揮。岡山が踏み出す力強い一歩。

岡山が昇格に向けて再び立ち上がった。

前節の敗戦で自動昇格が厳しくなった岡山はショックを払しょくするべく甲府後に乗り込んだ。しかし、5日に鹿島を破って天皇杯の決勝に進出した甲府の勢いに押されてしまう。デュークと永井がプレスを掛けていくも、3バックから4バックに変化する甲府のビルドアップを制限できずに自陣で守る時間が続いた。19分には宮崎純とのパス交換から長谷川がミドルシュートを放ってきたが、堀田が落ち着いて正面でキャッチする。36分にも関口正にミドルシュートを許すも、輪笠が身体を投げ出してブロックした。

押し込まれる時間を粘り強く耐えた岡山は一瞬の隙を突く。43分、徳元のパスに抜け出した成瀬が左サイド奥からクロスを上げると、永井が飛び込んだ。ゴール前で相手のマークを鋭く振り切って決めた背番号38の移籍後初得点で岡山が先制に成功した。

岡山が1点リードで迎えた後半も甲府に押し込まれる展開が続く。リーグ戦6連敗中の甲府が右サイドから関口、須貝が積極的にクロスを入れて攻勢を強めてきたが、岡山は堅実な守備を発揮した。柳はリラと激しく競り合い、バイスは危険なスペースを埋め続け、徳元はゴール前に絞ってクロスを跳ね返していく。流れの中から決定機を作らせなかったが、CKから失点を許した。73分、これまで多用していたショートコーナーを荒木がここでも選択し、長谷川のクロスを須貝が頭で合わせてネットを揺らした。

追い付かれても、岡山は勝利を諦めない。“一戦必勝”の姿勢を貫く。77分に仙波大志とハン・イグォンを投入すると、背番号9の推進力で反発していき、勝ち越し弾をもぎ取った。徳元がゴール前にロングスローを投げ入れて、こぼれ球に反応した途中出場の佐野がシュート。これはGKに弾かれるも、イグォンが押し込んだ。

岡山が甲府に許したシュートは17本。後半だけでも12本のシュートを浴び、逆に岡山が後半に放ったシュートは3本のみ。押し込まれる苦しい展開を強いられたが、前節のショックを引きずることなくチーム一丸となってリバウドメンタリティを発揮して勝ち切ってみせた。逆境を跳ね返す力をもつ岡山が昇格に向けて再び力強い1歩を踏み出した。

コラム

これぞストライカー。駆け引き詰まった永井の移籍後初得点。

永井龍の移籍後初得点は一瞬の出来事だった。そして、駆け引きが詰まったストライカーらしい得点でもあった。

43分、成瀬が左サイドから抜け出したとき、永井は浦上と野澤の間からゴール前に入った。それからファーサイドに回り込むように野澤の背中にポジションを変える。成瀬がクロスを上げる瞬間、永井は一気に方向転換をした。

これは永井をマークしていた野澤が目線をボールに移した瞬間とも重なった。野澤は腕で永井の身体を触って位置を確認しているが、これは後手を踏んだプレーだ。永井に背中を取られたことで、ボールとマーカーを同一視野に収めることが困難になった。

クロス対応の原則はボールとマーカーを同一視野に収めること。しかし、野澤はより精度の高い視覚をボールに使い、触覚で永井をケアする決断をした。しかし、触覚で得られる情報は少ない。場所もハッキリと分からないし、どこに動き出そうとしているか読み取れない。永井は相手DFにボールとマークを天秤に掛けさせて、ボールを選ばせた。駆け引きで主導権を握ったのだ。

そして次の瞬間、永井はマークを振り切った。急加速してニアサイドに走り出し、相手DFの前に出た。インサイドで面を作り、股関節を開いて倒れながら捉えたシュート技術は素晴らしい。しかし、シュートを打つ前の駆け引きで勝負は決していた。2年ぶりのリーグ戦での得点は、生粋のストライカーであることを示すには十分過ぎるものだった。

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