【勝因】『両GKが作った均衡状態と違いを作った繊細な技術』~FA杯4回戦マンチェスター・シティVSアーセナル~

2022-23 FA杯4回戦
1/28 4:50K.O. @エティハド・スタジアム
マンチェスター・シティ(1-0)アーセナル
64分 ナタン・アケ

スタメン

両GKが作った均衡状態と違いを作った繊細な技術

プレミア・リーグをけん引する両チームがFA杯4回戦で激突した。2位のマンチェスター・シティが1位のアーセナルを迎えた一戦は、高い集中力とインテンシティを発揮した両者により拮抗した状態で進んでいく。しかし、90分で勝敗が決した。昨夏に1億ポンド(当時のレートで約156億円)でシティに加入した背番号10がチームを5回戦へと導いた。

キックオフ直後から一進一退の攻防が続く。

シティは[4‐1‐2‐3]から右SBのリコ・ルイスがアンカーのロドリの横に並び、ディフェンスラインが右にスライドして形成する[3‐2‐5]でボールを保持していく。タッチライン沿いに立つ右WGのリヤド・マフレズ、左WGのジャック・グリーリッシュが両サイドで起点を作り、リーグ戦で19試合出場25得点を記録するエーリング・ハーランドが中央から背後に抜け出してゴールに向かった。

一方のアーセナルは[4-1-2-3]で前からハメていく強度の高いプレスと[4-1-4-1]で自陣にブロックを組むリトリートを使いながら、奪ったボールは縦に早いショートカウンターでゴール前に運ぶ。ブラ隠遁から移籍後初先発のレアンドロ・トロサールが左サイドから推進力を発揮し、ゴールへの強い意欲を示した。

互いに持ち味を出すも、スコアは動かない。

ゴールマウスを任された両チームの第2GKが奮起する。両チームがガチガチにハマっていたため、立ち上がりは両者ともにビルドアップでの安易なパスミスを連発してしまう。しかし、集中力を切らさない。シティのシュテファン・オルテガは、右サイドを駆け上がってきた冨安健洋の強烈なボレーシュートをストップし、トロサールがPA内から左足で放ったシュートを弾く。アーセナルのマシュー・ターナーはハーランドの鋭い抜け出しを抜群の飛び出して食い止め、ケビン・デ・ブライネの高速クロスを果敢にパンチングしてピンチをしのいだ。

リーグ戦では未出場の両GKが高い集中力を発揮してゴールマウスに鍵を掛けた。しかし、ファンタジスタの繊細なテクニックがこじ開けた。

64分、シティに値千金の決勝ゴールが生まれる。

パスをつないでアーセナルを押し込むと、途中出場のフリアン・アルバレスが右足を強振した。PA外から放たれた鋭いミドルシュートは左ポストに弾かれるも、ジャック・グリーリッシュがPA左でこぼれ球を拾う。背番号10は再三にわたってマッチアップしてきた冨安とカバーに来たブカヨ・サカに対して迷うことなくドリブルする。常にボールを膝下に置き細かいタッチでいなし、軽やかな身のこなしで揺さぶる。2選手に囲まれても全く取られない。抜群のキープ力で相手を引き付けると、一瞬だけ空いた2選手の間を抜くパスを出した。わずかなスペースにボールを置くように丁寧に出されたパスを受けたナタン・アケが、利き足ではない右足でボールを繊細に捉えて地を這うシュートを右スミに流し込んだ。好セーブを見せてきたターナーも、DFの間を縫う精密なシュートを掻き出すことはできなかった。

背番号10が創出したリードを守り切ったシティが、リーグ戦で優勝を争うライバルを下して5回戦へと駒を進めた。

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