【レビュー】『我慢強く手にした勝点1』〜第19節V・ファーレン長崎VSファジアーノ岡山〜

マッチレポート

長崎の地でも粘り強く戦って勝点1

仙台とのアウェイゲームを終えた岡山は中3日で長崎の地に乗り込み、3試合連続となる完封を達成して勝点1を獲得した。

立ち上がりは先発8選手を入れ替えた長崎がセットプレーを多く獲得して加藤聖の左足でゴールに迫っていく。4分のFKは加藤聖が直接ゴールを狙い、21分のCKはファーサイドで櫛引がヘディングシュートを放つも、GK堀田のセーブに遭った。

出鼻をくじかれる形で長崎に攻め込まれた岡山だったが、守備陣を中心に集中して長崎のセットプレーを跳ね返した。そして、プレスをかけてリズムを取り戻そうとするも、右SBが絞って左SBが高い位置を取ることで左肩上がりに形を変える長崎のビルドアップの前にプレスは空転。3試合ぶりにトップ下に入ったムークは相手のパス回しに翻弄され、ファウルを重ねてしまう。それでも[4-4-2]のブロックを敷いて穴を開けずに守っていき、植中がスピードに乗ってゴールに向かってきたが、ギリギリのところでバイスと柳がしのいだ。

岡山は効果的にボールを敵陣に運んでいくことができない前半を過ごしたが、後半は選手交代で盛り返した。62分に白井が右SHに、成瀬が左SBに入ると、彼が発するエネルギーが全体に伝播していき、両サイドからクロスを入れてゴールに迫る時間を作った。しかし、シュートにはつながらず。同じく選手交代でパワーアップを図った長崎に再び押し込まれた。79分にはフリックを織り交ぜたパス&ムーブのコンビネーションでゴール前への進入を許すと、米田が放ったシュートは左ポストに当たった。

長崎が86分に都倉、カイオ・セザール、イバルボを投入して攻勢を強めると、岡山は阿部と疋田を入れて[5-3-2]で迎撃態勢を整える。アディショナルタイムに入ると長崎が都倉を目がけたロングボールを多用してきたが、バイス、柳、GK堀田を中心に最後まで慌てることなく守り切った。

岡山が放ったシュートは4本、長崎が放ったシュートは12本。数字から見ても苦しい試合展開だったが、岡山の堅牢な守備は最後まで崩れることはなかった。劣勢でも屈しない守備への自信を深めながら手にした勝点1が価値あるものだった言えるように、ホームでの次節・金沢戦では是が非でも勝点3を掴みたい。


コラム

ムークを活かすためには必要なタスクと状況

なぜあのムークが見られないんだろうか。

背番号8は第9節・琉球戦で黄金の輝きを放つ。前半終了間際にスルーパスで白井のゴールをアシストし、後半には木村のクロスを押し込んでゴールも決めた。ムークが躍動した琉球戦は、前半から2点のリードを許し、チームとしてゴールに向かって行くしかない状況だった。そのためタスクがハッキリしていたし、エネルギーを存分に発揮できたのだろう。土壇場で同点弾を決めた第6節・大宮戦もそういう状況だった。

ムークは混沌の中で力を発揮するタイプの選手だ。繰り返し上下動ができるタフさを持ち、トランジションの激しい試合で真価を発揮する。しかし、3試合ぶりに先発した今節は長崎にボールを握られてチームとして耐える時間が続いた。ポジションは同じトップ下だったが、前述の2試合とはタスクが違う。我慢することも求められ、押し込まれた状況を打破するには正確なキック、狭いスペースでボールを扱う緻密さが必要だった。

タスクをハッキリさせることが難しい試合展開、かつ彼が力を発揮する混沌を作り出すことができなかった。もちろんムークはJ2を戦っていくために、安易なファウルを重ねないなどの精神的な我慢強さを身に付けてほしい。しかし、チームとして彼を活かしていかないといけないことも事実。背番号8がトップ下で出場するならば、混沌を作り出して彼が躍動する展開に持ち込みたい。

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