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水兵と雷鳴

ソーダ味のアイスが
セーラー服に小さな染みを作った

毎年同じ事をしているなと思いつつ
これを着られるのもあとわずかなんだとふと思う


殺人的な直射日光の下
先生に呼び出された登校日
真っ直ぐな田舎道をひたすらに歩いた

身を潜められる影などほとんど無くて
すぐに諦めた日焼け止め
垂れる汗はそのままに

昨日パンクした自転車を恨んだら
アイスが半分地面に落ちた

遠くの空が怪しい雲行きで
さっきまでの熱波は何処へやら
冷たい風が吹き抜ける

雷を恐れて早足になって
すぐ先の神社にでも逃げ込もう
きっと神様が守ってくれる

田んぼと畑と山しか見えない
この町を飛び出したなら
来年の私は何をしているんだろう

まだまだ先のようですぐ未来のこと

セーラー服を着ていない事だけは確実で
でもいまだに進路さえも決められず
気づけば夏休みも半分が過ぎていて

ただ今はそれどころじゃなく
ポツポツと振り出した雨が一気に襲いかかって来る

急な石段を一気に駆け上がり
ちょっと休ませて下さいねと手を合わせた

軒下に腰を掛け
濡れた靴下を脱ぎ裸足になって
太ももまでまくり上げたスカート

視界の端に夏祭りのポスターが目に入った

今は誰もいない境内
夏祭りと正月だけは人が溢れるこの場所

誰と来ようか?みんな忙しいかな?

遠くに光る雷鳴を
自然の花火大会を
特等席から堪能した

10分もすれば雨も止んでまた暑くなるんだろう

雷の音に負けじと
お腹が低い音で鳴った

無事に帰る事が出来たなら
今日のメニューは何だろう?
美味しいご飯が待っている

雷は米を美味しくする
なんてこと、都会の人は知らないんだろうな

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