日本酒がアメリカで数千億円市場になる理由
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日本酒がアメリカで数千億円市場になる理由

Genki Ito

アメリカの日本酒ECスタートアップTippsyを創業した伊藤です。創業から2年で売上を数億円規模、従業員十数名のチームまで成長し、ここアメリカでこれまで日本酒になじみのなかった人や、買い方の分からなかった人に日本酒をカジュアルで楽しい物と再認知して貰いマーケット開拓しています。

ビジネス内容やミッションにご興味頂けましたら、是非お気軽にFacebookのDMかgenki@tippsysake.comまでご連絡ください!

なぜ起業したのか

アメリカの日本食商社で長年働いた経験から、日本のメーカーがアメリカ進出をする際に日系チャネルを足掛かりに試みて成功できない例をたくさん見てきました。(これに関しては前回のノートでアメリカのビジネススクールでの経験や日本の存在感の低さなどを詳しく書いています)クオリティが高いのに上手く売れない日本のモノやコンテンツを海外にきちんと伝ることに自分のキャリアを捧げたいというのが僕の起業の原点です。

実体験から感じた構造的問題

商社時代に様々な食品イベントに参加し日本酒の試飲を手伝うことが多かったのですが、ほとんどのアメリカ人がSake Bomb(ビールに日本酒を入れて飲むパーティドリンク)やHot Sake(温めた現地産の安い日本酒)というイメージを強く持っていて、実際に美味しい地酒を飲んでもらうと「なんじゃこりゃ美味しい!どこで買えるの?」という反応でした。

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アメリカにおける「SAKE」への認知は、ブーマー世代(57-66才)からX世代(41-56才)に急成長したSUSHI市場を支えるため80年代に大手酒造メーカーが現地進出し、安価品が多く流通したことから来ています。

更にほとんどの人がリカーストアなどで一般的に日本酒を見かけたことがないのは、禁酒法時代から続くサプライチェーンのレイヤーが情報や品揃えに影響しているからでした。

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特に自分のいたような日本酒トレードを牛耳っている食品卸商社は、既に飽和しているSUSHI食品卸市場を主戦場とし、消費者にブランド認知の育っていない日本酒ならどれを売っても利益率が変わらないため、カテゴリーとして日本酒を育てるインセンティブがないこともSAKE認知の歴史に影響していると思います。

潜在市場規模に関する仮説

アメリカでは、外食人気ジャンルトップ5に日本食が入るほどで、既に2万店くらいSUSHIレストランが存在しています。(スタバの店舗が1万5千くらいだからすごい数!)既に2兆円規模の市場であるSUSHI業界は既に飽和気味で年率成長は2%くらいです。そんな中、日本酒はミレニアルが成人した2015年くらいのタイミングから二桁成長を続け、あと数年で1000億円規模になる見込みです。

参考:
Eating out behavior in the U.S.2016 (Statistia)
Sushi Restaurants in the US - Market Size 2005–2026(ibisworld.com)
Wine in the US 2020 (Euromonitor International)

僕はこれをクラフト消費文化の影響だと思っています。クラフトビールのブルワリー数は過去15年で5倍になり、かつてX世代にとって一気飲みの象徴だったテキーラですら今ではリカーショップには百種類以上置かれていて、中には1000億円のバリュエーションで売却した高級ブランドがあるほど。アメリカではアルコールのマーケティングにストーリーやブランディングがとても重要な時代になっている証拠です。

参考:
Number of operating craft breweries in the United States from 2006 to 2020(Statistia)
Casamigos Tequila Sale Fetches $1 billion for George Clooney and Company (The Manual)

しかしこれまで商社流通に載せられただけの日本酒は完全に需要主導でここまで成長してきています。日本に千以上ある蔵元もほとんど中小企業なので流通チャネルに乗せる以外のマーケティングリソースを持ち合わせておらず、日本酒をカテゴリーとして成長させるのは難しい。この状況でアメリカで成長率トップのロゼやスパークリングワインを凌ぐ15%近くの年率成長を続けているのは奇跡だと思います。

下記のグラフを見て頂くと、2015年、2019年のデータによりかつてSUSHI市場の成長を支えた大手酒造メーカーの安価品ボリュームシェアは59%、51%と下がっていき輸入品のクラフト日本酒(地酒)が伸びているのが分かります。同じ成長率で、平均単価と流通マージンを推測しマーケットサイズを計算すると2025年のアメリカ日本酒マーケットは1500億円程度になります。

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参考:
Wine in the US 2020 (Euromonitor International)

上記はこれまでのサプライ側のマーケティングプッシュがない状態での成長率なので、消費者マインドが育ちブランド側からもプッシュがあれば5兆円ワイン市場のごく一部であるスパークリングワイン(5000億円)くらいの規模にはすぐ追いついて、日本国内の日本酒市場よりも大きくなる日がくるのではと考えています。

参考:
日本酒の市場規模はどれくらい? ─ 国内と海外双方の視点から

Tippsyの実績

2018年11月にローンチしたECスタートアップのTippsyは、まずこれまで一般的に手に入らなかった品揃えや情報のアクセスを全米規模で可能にし、昨年アメリカでNo1の日本酒セールスチャネルへ成長しました。

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「SUSHI屋さんで美味しい銘柄をのんだけど名前がわからないし、どこに売ってるかわからなかった」という人や「初めてSAKEを飲んだけどハマったよ」という良いレビューが5000件を超えるようになりました。下にいくつか実際のレビューをご紹介します。

"Tippsy always sends unique sake that we cannot find in our area, and we love the description cards and food pairing suggestions." Aleah(近くでは買えない面白いセレクションを送ってくれるし、商品カードに書いてあるペアリングがとても嬉しいよ。アレア)

"I'm very new to sake but it's nice to have an assortment sent instead of me having to do some guess work. Love that this box has sake from other regions in Japan." Matthew(日本酒初心者なんだけどオススメをセットにしてくれるから助かる!このサブスクだと異なる地域のお酒が飲めて最高!マシュー)

"Love love love the welcome box. It was my 1st time trying sake and i felt like i was given a good variety to explore." Anonymous(ウェルカムボックス最高!初めて日本酒を飲んだんだけど、たくさんのバラエティを一度に楽しませて貰えたよ。匿名)

Tippsyのこだわり

日本酒は伝統の技や作り手、地域性や文化が魅力です。これまでアメリカで文化的アイデンティティが欠如した日本酒に対する消費者のマインドを変えるべく、彼らが共感できるストーリーやコンテンツを作っています。

まずオリジナルのテイストマトリックスやアイコンで味を表現し、ラベルからではわからない味やカテゴリーを体系的にまとめて選びやすくしました。今後レイティングやレビューなど嗜好データを蓄積してマーケティングや商品開発に取り組む予定です。

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更には日本酒の認知が低い層には食べ物や飲み物の趣味をクイズに沿って答えるとオススメの日本酒が紹介されるような取り組みから消費者の興味レベルに沿った紹介の仕方をしています。

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味や値段も大事ですが、アルコールのマーケティングではブランドのストーリーが一番重要という考えから生産者の顔が見れて、彼らのモノづくりに向き合う姿勢や情熱をインタビューやバーチャルツアーなどのコンテンツで配信しています。

更に昨年のシードラウンド調達後にチームも強化して、日本酒学校の講師をしていた日本酒エキスパートも加入しました。バイリンガル、バイカルチュラルで何より日本酒を愛する彼女がこれまで日本食としか連想されなかったSAKEのイメージを刷新して、身近なアメリカの食事とペアリングする様子を発信しています。

今ではアメリカ最大の小売チャネルに成長し、蔵元側からよくプロモーションのお声がけを頂けるようにまでなりました。今年8月に獺祭ブランドとコラボしてバーチャルテイスティングイベントを行った様子がこちらです。

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今後の展望

アメリカでは常に長期的な消費トレンドと供給側の革新が新たな巨大市場を生んできました。SUSHI文化と共に長年かけてアメリカ文化に融合したSAKE。それをサプライチェーンの制約から解き放ち、魅力的なコンテンツを発信することで消費者マインドを変えて、新しい時代を作るのがTippsyのミッションだと思っています。

アメリカの消費者に響く独自のコンテンツと品揃えを提供し、世界最大の日本酒コミュニティを作っていくため、プレシリーズAの追加資金調達を準備しています。既に日米のVCからも応援頂いており、今後の更なる成長のためスタートアップ業界の方や日本からでもチームメンバーに加わりたいという意欲のある方と是非お話したいと思っています。どうぞお気軽にFacebookもしくはEメールでご連絡頂けたら嬉しいです!

Facebook: https://www.facebook.com/genki.ito.12

Email: genki@tippsysake.com



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Genki Ito
ロサンゼルスでTippsyという日本酒のサブスクECスタートアップを経営しています。過去10年食品商社で働きながらハワイ、LA、NYなど移り住み、南カリフォルニア大学でMBA取得してから起業しました。アメリカのVCから資金調達できたのでこれからスケールするところ。