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日本酒の市場規模はどれくらい? ─ 国内と海外双方の視点から

こんにちは。株式会社Clear広報の古川です。突然ですがみなさん、日本酒の市場規模はどれくらいだと思いますか?

セミナー等で日本酒について話をする際、会場のみなさんにこの質問をしてみると実にさまざまな回答が返ってきます。身近にある産業でも、その実態を掴むことは難しいですよね。

今回は、日本酒の市場動向についてご紹介します。「日本酒のマーケットってどうなっているの?」「海外でも人気って本当?」という方々にとって、少しでも発見があれば幸いです。

日本酒の市場規模

さて、上記問いの回答からお話します。日本酒産業のメーカー市場規模は、金額でいうと、4,350億円。小売ベースでは約6,100億円(Clear試算)あります。映画産業や靴産業より少しだけ小さく、またはジュエリー産業の1.5倍くらいです。ビール産業は3兆2,822億円あり、日本酒の約7倍です。

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日本酒の消費量はピーク時の3分の1以下

日本酒の課税数量は1973年の177万klをピークに下降を続け、現在は3分の1以下にまで減少しています。最新の国税庁のデータによると、2018年の清酒出荷量は50万klを割り込み、493,554klと発表されています。
(出典:国税庁 1〜10月の確数と11,12月の概数を合算)

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日本酒の消費量低下の背景には、消費者の嗜好や娯楽の多様化が背景にあげられます。酒類だけをみても、70年代には清酒とビールだけで90%を占めていましたが、近年では50%を割り込み、その他(果実酒やリキュール、焼酎、ウイスキー等)の割合が増えて嗜好が多様化してきました。また、映画やゲーム、娯楽施設、漫画やSNSなど、さまざまな余暇の楽しみ方が増えてきたことで、酒類全体の数量も1999年の1,016万klをピークに減少しています。

1ヶ月に約3蔵が廃業

酒蔵の数も減少を続けています。清酒製造業者の数は、2000年から2016年の間に1977者から1405者にまで減っています。これは、1ヶ月に2.9者が廃業している計算になります。

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酒蔵の規模別に見ると、清酒製成の54%を11蔵が、11%を1100蔵が製成しています。11%を1100蔵でシェアするわけですから小規模のところが多く、製成量200kl以下の小さな酒蔵の49%が、低収益のために経営難にあると言われています。

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参考までに、酒類食品統計月報によると、2018年の出荷数量は白鶴酒造が1位で52,360kl、15位が朝日酒造(久保田)で5,367kl、東京にある石川酒造(多満自慢)は203klです。

産業全体で「利益」は増えている

ここまで話をすると、暗い話題ばかりのように思えますが、近年、日本酒の利益構造に変化が見られます。

2016年の昨対比でみると、清酒製造業全体の売上高は-0.7%と減少していますが、総営業利益は+17%と大きく推移し、利益率の高い商品が売れていることが分かります。

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実際に、吟醸酒や純米酒といった特定名称酒の出荷量は2014年から増加傾向にあり、5年で5%以上の比率を増やし、2018年には清酒出荷量の34.6%と、3分の1を占めるまでになっています。

高価格帯の日本酒が、海外でも人気

次に、海外の日本酒市場をみてみましょう。

国内では日本酒の消費が減っている一方で、海外への輸出量は9年連続で増加しています。特徴的なのは、金額の伸び率です。輸出量は2倍の増加であるのに対し、金額は3倍に増えています。海外でも、特定名称酒などの高価格帯のお酒が人気になってきているようです。

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農林水産省が発表した最新の輸出実績を見ると、2019年1月〜6月の対前年同期増減率は、数量ベースで+5.7%、金額ベースで+15.4%。このペースを保てば10年連続の伸びとなりそうです。

中国、香港、台湾で特に人気の日本酒

国別で見てみると、輸出量では中国で+24%、輸出金額では香港・中国・台湾が+35%超と大きく伸びています。

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なかでも、香港は群を抜いて高価格帯市場が盛り上がっているようです。1リットルあたりの輸出金額は1,000円前後、あるいはその半分の国が多い中、香港はなんと1,800円

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つまり、「海外で日本酒が求められている」だけではなく、その中でも「高価格帯の日本酒が求められている」ということが言えるでしょう。

世界のワイン・ビール輸出と比較すると少ない日本酒輸出

世界の他のアルコール飲料と日本酒を比べてみます。
以下は、ワインおよびビールの世界輸出金額トップ20の中に、清酒の輸出金額を当てはめてみたグラフです。

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日本の清酒輸出はもちろん「清酒の世界輸出金額ランキング 1位」で、222億円です。しかし、「ワインの世界輸出金額ランキング 1位」1.2兆円の50分の1しかなく、ランキングの18位に相当します。ビールにおいても、1位の20分の1の金額しかなく、ランキングの15位に相当します。世界中で広く認知され愛されているワインやビールに比べると、日本酒の輸出は、まだまだ小さな規模だということが分かります。

国内消費が多い日本のSAKE、海外消費が多いフランスのWINE

日本産酒類の国内消費と輸出量の割合を見てみると、輸出量の割合は極めて少ないことがわかります。

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日本国内のアルコール輸出率が最も高いのは清酒ですが、それでも4.5%。一方、フランスのワイン輸出率は45%で、日本と比べると非常に高い割合となっています。
つまり、日本酒は圧倒的に国内消費が多い状況にあり、徐々に輸出が増えてきているとはいえ、まだまだ海外進出に伸びしろがある産業だといえるのではないでしょうか。

海外での日本酒の広がり

最後に、海外で造られるSAKEについてご紹介します。

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日本酒というと、日本で造られるのが当然だと思われる方も多いでしょう。しかし最近では、世界中でSAKEを造る蔵が続々と増えてきています。その数、約40蔵
ニューヨークの「ブルックリン・クラ」ロンドンの「カンパイ・ロンドン・クラフト・サケ」、ケンブリッジの「堂島酒醸造所(Dojima SAKE Brewery)」などが挙げられます。

海外で造られたSAKEは品質も高く、品評会での受賞歴を持つ酒蔵もあります。日本酒への愛や酒造りに対する情熱もとても高く、世界各国に"地元のSAKE蔵"ができることは、世界中にSAKEが広まっていく大きな起爆剤になりそうです。

おわりに

日本酒産業の現状をみると、確かに消費量は減少傾向にあります。しかし、嗜好や娯楽の多様化は、より豊かな生活を送る上で喜ばしいことだとClearでは考えています。

毎日飲む日本酒から、特別な日に寄り添う日本酒へ。国境と文化を越えて嗜まれるものへ、楽しみ方の形態を変えて、時代にあった価値を提供することで、日本酒はもっともっと、多くの方々に愛されるものになっていくと信じています。Clearは、"非日常の特別な時間"へと導く至高の日本酒ブランド「SAKE100」を通して新たな価値を創造し、海外での可能性を切り開いていきます。そしてそこで拓かれた高単価市場が、低価格も含めた海外における日本酒市場の広がりの礎となるはずです。

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