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なぜプロジェクトマネジメントが機能しないのか 44 アジャイルの条件②

日本で最初の民間シンクタンクで、プロジェクトマネジメントのコンサルタントとして、ある時はPМ、ある時はPМОとして、お客様と問題解決に取り組んでいます。本記事では、まだPМBОKには書かれていない暗黙知を言語化し、形式知としてお伝えすることにチャレンジしてみようと思います
マガジン:https://note.com/think_think_ab/m/m0e070db46016

アジャイル採用の背景

前回第43回では、
プロジェクトマネジメントを機能させれば対応できる
スコープクリーピング技術的な実現性 等の内部の変化要素に対して、

なぜ、
それらの対応を諦めて、アジャイルを志向してしまうのか。
というところまで考察いたしました。

ではなぜ、
スコープの決定実現性確認 を諦めてしまうのでしょうか。

要件を決めきることや
採用技術の実現性確認をあきらめることは、
すなわち QCDバランスをあきらめる ことを意味します。

アジャイルは、
スコープの 予測可能性が低い、もしくは 変化可能性が高く
QCDバランスをコミットできないを場合に採用されるモデルのため、
そもそもプロジェクト全体のQCDバランスという概念がありません。

いいかえると、
ウォーターフォールモデルはQCDバランスにコミットしますが、
アジャイルモデルはQCDバランスにコミットしません。
(だからこそ、アジャイルを採用するのですが…)

結果、
誤ってアジャイルモデルを採用すると、
本来可能であったQCDバランスを自ら放棄することになります。

アジャイルを採用すると

アジャイルを採用すると開発チームはこう言います。
「要件まだ決めなくて大丈夫です。アジャイルは変化に強いですから」とか

「技術的にできない事が発生したので、要件調整させて下さい。
 変更は問題ありません。アジャイルは変化に強いですから」と。

こうした状態では、
顧客やユーザ部門に要件を決めるモチベーションはなくなりますし、
開発側も早めに実現性を確認するモチベーションがなくなるため、
QCDはバランスしようがありません。

アジャイルは変化に強いですが、そのことと引き替えに、
プロジェクト全体のQCDをバランスさせることにコミットしないこと

正しく理解する必要があります。

プロジェクトマネジメントの
影響を及ぼせない外部の変化要素ではなく、
影響を及ぼせるはずの内部の変化要素に対する対策として、

アジャイルを採用してQCDがバランスしないのは、
アジャイルモデルそのものに原因があるのではなく、
アジャイルモデルの採用に原因があります。

いくども繰り返して全く恐縮ですが、アジャイルは
スコープが予測困難で、変更確実な場合に採用すべきものなので、
自明ですが、スコープを確定するプロセスも手法も持っていません。
(少し補足すると、スプリント内のQCDバランスは概念があります)

アジャイルモデルを採用する場合は、
アジャイルはプロジェクト全体のQCDバランスにコミットしないモデル
(というか、QCDバランスにコミットできない時に採用するモデル)
 であることを正しく理解して採用すべきです。

責任の所在

では、
誤ってアジャイルが採用されていまった場合、
その責任の所在はどこにあるのでしょうか。

開発チーム
アジャイルモデルはエンジニア領域生まれのため、
開発チームから提案されることが多いですが、
開発チームにおそらく責任はありません。

なぜならば、
開発チームにとって、顧客やユーザ部門は外部にあたり、
開発チームの力を及ぼすことの難しい、外部の変化要素にあたります。

結果、
外部の変化要素に対してアジャイルを採用しようとすることは、
正しい判断で誤りはありません(別な意味で実はここに問題がありますが)

顧客・ユーザ部門
顧客やユーザ部門にも責任はありません。

なぜならば、
アジャアルモデルについて、
「変化に強く柔軟です」との説明しか受けておらず、

プロジェクト全体のQCDバランスにはコミットしません。
 という説明をほとんどの場合、受けていません。

プロジェクト(PM・スポンサー部門)
本来であれば、もっとも責任を問われる立場ですが、
PMやスポンサー部門にも責任はありません。

なぜならば、やはり、ユーザ部門同様に、
アジャアルモデルについて、
「変化に強く柔軟です」との説明しか受けておらず、

プロジェクト全体のQCDバランスにはコミットしません。
 という説明をほとんどの場合、受けていないからです。

アジャイルについて
正しく以下のような説明を受けたら、
アジャイルを採用する前に立ち止まって考えられるのではないでしょうか。


アジャイルは、
スコープの未決や変更が前提の場合は滅法強いですが、
プロジェク全体のQCDバランスにはコミットしません。

なぜならば、
QCDにコミットできないこと自体が
アジャイルモデルのそもそもの前提だからです。


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