劇団なかゆび

京都を拠点に活動する劇団。 2014年、同志社大学・第三劇場の神田真直を主宰として結成…

劇団なかゆび

京都を拠点に活動する劇団。 2014年、同志社大学・第三劇場の神田真直を主宰として結成。 『問いの同時代性』を主眼に創作に取り組み、古典戯曲から創作まで幅広い作品を上演する。

マガジン

  • 『文化なき国から』ノート

  • 『お國と五平』ノート

  • 『京の園』執筆ノート

    劇団なかゆびNakayubi.-13『京の園』執筆ノートを公開します。

  • 「象徴の詩人」クリエイションノート

    劇団なかゆび第9回公演「象徴の詩人;My Dad was God.」にまつわる創作の過程を公開しています。 戯曲のモチーフ、演出アイデアなど。

最近の記事

劇団なかゆびから皆様へ

日頃よりお世話になっております。劇団なかゆびです。 突然の発表になりますが、2024年3月31日を持ちまして、劇団なかゆびから吉岡ちひろ・柊木樹が退団し、劇団なかゆびは解散します。以降の活動は神田真直のソロプロジェクト Nakayubi. に引き継ぎます。われわれの今後にご期待をお寄せいただいておりました皆様におかれましては、急な発表となり申し訳なく思っておりますが、どうかご理解いただきたく存じます。なお、メール・SNSアカウント・HP等は今後も Nakayubi. が引き続

    • 『文化なき国から―喜劇一幕』劇作ノート

       イプセン風のリアリズム演劇を書いてみたい。そういう素朴な意欲から本作の執筆ははじまった。もちろんイプセンが描いた関係を現代の日本に置き換えるだけなら、演出の次元の作業で事足りる。これまでいくつかの既成戯曲を演出してきたために、演出家として「解釈し、表現する」ということを曲がりなりにも覚えてしまったので、劇作家としての独創性を追究しなければ、納得できなくなっていた。  ところが、「文化なき国」育ちで読書なんか一切生活になかった自分にとって独創性は断念されている。文字にまった

      • みんなちがって、みんなわるい/地獄とは、他人のことである

        物語に触れるとき、とくに演劇に触れるとき、人間の善性を信じている作品があまりに多いことに驚く。やはり、インテリ/左派/リベラルの流れを汲むだけあって、世間知らずで、悪人の悪意に晒されたことなどまったくないのだろうか。あるいは日常のなかで、憎悪や偏見に触れすぎてせめて舞台だけでもいい人ばかりの世界にしておきたいのだろうか。いずれにしても、リアリティに欠けることには変わりない。 小生は徹頭徹尾、「人間」を信用していない。それは作品の内容においても、形式においても、そして創作に向

        • 劇場なんか行かないーー No.3:神里雄大/岡崎藝術座『イミグレ怪談』

          団体:神里雄大/岡崎藝術座 演目:「イミグレ怪談」京都公演 料金:3,500円(全席自由・一般) 劇場:ロームシアター京都 ノースホール 日時:1/29 14:00開演 時間:120分 備考:『公文協アートキャラバン事業 劇場へ行こう2』参加事業 よかった舞台のことはあまり書きたくない。書くことで大切な何かが抜け落ちて行ってしまうような感覚があるからである。そのとき失われると思っているもの、つまり神聖だと思っているものは「声」にまつわるものである。舞台より映画、映画よりテレ

        劇団なかゆびから皆様へ

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        • 『文化なき国から』ノート
          5本
        • 『お國と五平』ノート
          14本
        • 『京の園』執筆ノート
          4本
        • 「象徴の詩人」クリエイションノート
          8本

        記事

          書き忘れた、2022年12月のこと。

          ひさびさに、新町別館小ホールに行った。第三劇場の後輩の演劇を観るためである。2022年は一本も観劇しなかった。11月くらいまでは偶然だったが、途中からはせっかくだし、National Theatre at Home以外は観劇しないでおこうと心に決めた。ところが、後輩のTwitterのスペースのゲストに声をかけてもらい、企画自体に魅力を感じたのもあって、この一本だけ観劇することにした。観客の投票で結末が決まるというのは、個人的にはフェルディナント・フォン・シーラッハ『テロ』で知

          書き忘れた、2022年12月のこと。

          劇場なんか行かないーー No.2:缶々の階『だから君はここにいるのか【客席編】』

          団体:缶々の階 演目:だから君はここにいるのか【客席編】 料金:3,000円(一般・前売り) 劇場:THEATRE E9 KYOTO 日時:1/14 18:00開演 時間:60分 同世代からの評価がそこそこあって、気にはなっていたのだが、個人的に行く気にならない情宣の雰囲気の団体だった。しかし、2023年はいろいろ観に行くつもりだったし、60分とスケジュールしやすいランタイムが事前に発表されていたので、観劇した。 ランタイムを事前に発表しておくのは当然のことだと思っていたの

          劇場なんか行かないーー No.2:缶々の階『だから君はここにいるのか【客席編】』

          20230108 「劇場なんか行かないーーNo.1:今年は観劇します」

          団体:ニットキャップシアター 演目:補陀落渡海記(第43回公演) 料金:3500円(一般・当日券) 劇場:THEATRE E9 KYOTO 日時:1/8 13:30開演 時間:100分(予定) 座席:最前列シモテ2列目  席位置、劇場的制約のせいかもしれないけれども、音響の圧が足りなかったこと以外には失点がなかった。おそらくだが、今回使用されていた楽器の多くがE9のような建築物を想定しているものではなかったのではないだろうか。お寺は言うまでもなく、木造建築である(最近は近代

          20230108 「劇場なんか行かないーーNo.1:今年は観劇します」

          黒ツナギの話、ついでにバットの話

          黒いつなぎで衣装を統一する演出を、『Faust』、『蜘蛛の巣』、『お國と五平』、『京の園』、『わが友ヒットラー』と繰り返し採用してきた。はじめのころはとりわけ深い考えがあったわけではない。専門の衣装スタッフ自体が数多くないなかで、多くの団体が自前でいろいろと創意工夫を凝らしているけれども、専門でやっている人からすれば当然みずぼらしいものに映るに違いないだろう。まれに素人拵えが、常識を打ち破るというようなことがあるかもしれないとはいえ、それはあくまで「まれな」ことである。よく意

          黒ツナギの話、ついでにバットの話

          井上ひさし-イプセン-アリストテレス

          先日、『劇作バトル』という日本劇作家協会関西支部のイベントにスタッフとしてかかわった。ホストが劇作家協会関西支部新人の平田オリザ君だ。最近関西支部に入った僕は、「同期」ということになるので、君呼びで構わないはずである。でも楽屋の片づけを手伝う僕とは、扱いが全然違う。大型新人である。今回のイベントでもそうだったけれども、平田君のトークではしばしば井上ひさしの名前が出る。そしてその井上ひさしは、イプセンを持ち出すことが多い。井上ひさしが「イプセンはすごい」という旨の話をしたのを聞

          井上ひさし-イプセン-アリストテレス

          『お國と五平』から『文化なき国から』へ

          2014年の同志社大学の学生会館での旗揚げから8年。戦略的に立ち回って、ようやく東京で単独公演するところにまでたどり着いた。ただ、ここで息切れしている場合ではない。やりたいことはいくらでもあり、湯水のように沸いてくる。ほとんどのことは、金があれば解決する。そして金がないので、何らかの権威や権力に阿らざるを得ない。しかし、権威や権力に阿らないで、金がないのにやりたいことをやっていく方法が一つある。「人権を侵害すること」である。例えば、キャストやスタッフを、薄給でこきつかう。例え

          『お國と五平』から『文化なき国から』へ

          ハリウッドから谷崎へ、そして稽古場へ!

          当たり前のことであるが、いろいろなことを勉強せざるをえないので、脚本の書き方や感動させるストーリーの書き方みたいなものに触れてきたが、やはり有名なのはハリウッド系の三幕ものの脚本術だろうけれども、そのなかに「ログライン」というものがあって、それは物語を1文で短く説明するもののことであるが、例えば『タイタニック』であれば 身分違いの男女が、豪華客船で出会い恋に落ちたが、今まさに沈黙しそうな船から生き延びようと必死にもがく というもので、ほかには An eight-year-ol

          ハリウッドから谷崎へ、そして稽古場へ!

          翻訳について

          うれしいことが一つあったので報告しておく。劇団のメールアカウントにはるか遠くブラジルから問い合わせがあった。一瞬スパムメールかと思ったけれども、よく読むとまだ勉強中という感じの日本語と、英語でのメッセージがそれぞれ書いてある。 いま日本語を勉強中で、その勉強のために劇団なかゆびがYouTubeにアップロードしている戯曲研究会の動画(イプセン『人形の家』)を見てくれていたらしい。ただ、所有している日本訳の書籍と、動画で使用しているテキストが違うので、どの翻訳なのか教えてほしい

          翻訳について

          わかりやすい、は純粋か

          某新興政党の演説動画(文字起こしのバイトをしてみたら、この政党の動画の文字起こしだった)。かなりわかりやすい。すでに知られていることではあるが、わかりやすいものは、受け手にとっては危険か、何の意味もないかどちらかに分かれていくものだ。 演説動画では「グローバル勢力」という言葉が頻繁に使われていた。この「グローバル勢力」というのが至福を肥やすために、純粋無垢な私たち日本人を騙して搾取している、というのが彼らのストーリーのようだ。 この政党にも、それを支持する人々にも興味はな

          わかりやすい、は純粋か

          通し映像、稽古映像を見ながら

          ある瞬間を切り取って、別のやり方はないかを考える。「こうならざるをえない」と自分で納得できなければ、観客も納得してくれない。別のやり方が考えられてしまう時点で、その手法に強度があるとは言えない。そういう思想に基づいた演出があるとして、さらに問いかけてみよう。これとは別の思想に基づいた演出はありえるのか。これ以外ありえないというデカルト的確信を目指す。「そこはそうじゃないでしょう」と観客に思わせてしまう表現を受け入れるべきではない。「そこをそうくるか」や「気づいたらそうなってい

          通し映像、稽古映像を見ながら

          演劇人コンクール2022『鞄』演出ノート

          以下は、演劇人コンクール2022の一次上演審査に参加するにあたって、課題戯曲『安部公房』の演出プランおよびノートである。結果はすでにわかっている通り、敗北だったので、おいしいところだけいただきたいという人はブラバ推奨である。それでも、誰かの役に立つと信じて書いて残しておくことにする。自分の文章が、十年後、二十年後、誰かにとってたいへん重要なものになることがある。小生自身が逆に、そういう体験を経た。せっかくこういう時代に生まれたのである。アーカイブできるものはどんどんアーカイブ

          演劇人コンクール2022『鞄』演出ノート

          キーボードえらび

          「弘法筆を選ばず」という。「文字を書くのが上手な人は筆のよしあしを問わない。本当の名人は道具のよしあしにかかわらず立派な仕事をする」(『広辞苑』)ということわざである。「転じて、自分の技量の不足を道具の所為にしてはならないという戒め」(“Wikipedia”)だという。後者のほうは、あまり信じるべきではないと思う。弘法大師は“つねに”筆を選ばないわけではない。むしろ、自分にあった筆を選べるようになることも上達のために重要な要素である。少し前、作家の柳美里氏がツイッターで、「ス

          キーボードえらび