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「象徴の詩人」クリエイションノート

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劇団なかゆび第9回公演「象徴の詩人;My Dad was God.」にまつわる創作の過程を公開しています。 戯曲のモチーフ、演出アイデアなど。
運営しているクリエイター

記事一覧

未だ見ぬ観客へ(宣言文に代えて)

未だ見ぬ観客へ(宣言文に代えて)

「探しているんだ! 亡くしたんじゃない! どこかにあるんだ!」 劇作家である私自身のなかに答えがあるのなら、私は書かないだろう。私自身のなかにあるのは、問いの鎖のみであり、それが出口を求め、外へ向かって書くことになる。同様に、演出家である私自身のなかに答えが見出だされるのならば、作品が稽古場を出ることはないだろう。私自身のなかにあるのは、問いの鎖のみであり、それが出口を求め、外へ向かって、上演にた

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『公演まであと7日』

「観ないとわからない」が多すぎる。 来週本番らしい。驚愕の新事実だが、受け入れるしかない。
 ところで舞台の配置についてはかなり前から構想が固まっていたのだが、遊び過ぎてしまったため、客席の構造に影響してしまったようである。要するに客席数が少ないので予約するならお早めに、ということだ。
 演劇の、所謂「出来事性」というか、そうしたものを重視しすぎて、作品が外への出口を失っているのはいつものこと。あ

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戯曲論考②「東京について」

「東京がなければ、この国はなにもできないのだ。この国は脳死状態にある」 戯曲論考、第2回は「東京」についてです。
 日本という大きな主題から少し視点を下げ、ある一個の都市、この国の中央へとその論考の場を移します。

 「新しいものは東京じゃないところから始まる」。
 そうだとしても、何かが「新しい」ということを判断する基準が「東京」に置かれつづけている以上、そこに何らかの足跡を残す必要がある。いく

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「over30割」について

「over30割」について

100年後の日本よりも、
10年後の自分たちのほうが重要だ。 「over30割」は劇団のこれからを考えての企画である。
 京都特有の事情なのかもしれないが、多くの小劇場演劇で当然のように学生≒若者は割引価格で観劇できるようになっている。しかし、これは劇団経営にとってほんとうに利益のあることなのだろうか。
 観劇習慣のある若者〈A〉は、何を観に行くか選択するとき、500円程度の割引には強い影響を受け

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脚本『象徴の詩人』最新稿(11/7)

 劇団なかゆび 第9回公演「象徴の詩人;My Dad was God.」の脚本最新稿を公開中です。
 脚本ダウンロードはこちら(Googleドライブに飛びます)↓

https://drive.google.com/open?id=1IOfYK-Xk46LMMtOxlCuVu5VhW2fUDoG1

 「孤独」について
 日本でも大戦後、「政治」が一つの終わりを迎える。
 それでも世界と同様に、二

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戯曲論考①「日本の――」

戯曲論考①「日本の――」

 創作の過程をオープンにしていくこの企画、第2回目の更新は、戯曲に関する神田真直自身による論考の掲載です。戯曲論考は、全3回の掲載を予定しています。
 第1回目は、本作の主題「日本」について、です。ご一読くださいませ。

 この戯曲を執筆するために取材したテキスト群を、一つの文章ですべて挙げることは困難である。政治と、文学と、哲学とが演劇という形式に束ねられ、複雑に絡み合って一個の作品となっている

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脚本『象徴の詩人』第一稿(10/8)

 劇団なかゆび 第9回公演「象徴の詩人;My Dad was God.」の脚本第一稿を公開中です。
 脚本ダウンロードはこちら(Googleドライブに飛びます)↓

https://drive.google.com/file/d/1uwKzvoOTwSszbJcPshL8OuqrdISfDMDf/view?usp=sharing

 「常識を疑え」
 もしかすると、ゆとり世代ほどそう言われた経験が

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声明文

声明文

【劇団と観客は不平等な関係にあるか?】
 このノートは、劇団なかゆび第9回公演「象徴の詩人;My Dad was God.」にまつわる創作の過程を公開していくものである。
 未完成稿の脚本、演出のアイデア、戯曲のモチーフといった普段ひた隠しにされている作品の骨子をオープンにし、誰であってもアクセス可能にする。これにより、観客と作り手の間で生まれる――作品に対する理解度や、前提となる知識の――不均衡

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