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『京の園』執筆ノート

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劇団なかゆびNakayubi.-13『京の園』執筆ノートを公開します。
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『京の園』執筆ノート④ 直視するために――差別について

『京の園』執筆ノート④ 直視するために――差別について

差別はいけない。当たり前のことである。しかし、差別とは何か、われわれは理解しているだろうか。じつは差別とは簡単で身近なものである。他人を外見やセクシャリティ、人種だけで判断すればいい。そうするのはとても楽で、われわれはいつもその誘惑のなかを生きている――。

生きていると、誰かに傷つけられることがある。いくら自分で考えても、その原因がわからないことがある。そこで、その誰かを、人間でないことにすると

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『京の園』執筆ノート③まだみぬ観客のために

『京の園』執筆ノート③まだみぬ観客のために

舞台芸術とパチンコ・パチスロはよく似ている。いずれも面白さを理解し、のめり込むようになるまでのイニシャルコストがものすごく高い。だからもっと手軽に楽しめるものへ、人は流れていく。

この二つは、世間様からコロナ禍でも似たような御指南を受けた。少し事情が異なるのは、舞台芸術業界では作り手が主に非難され、パチンコ・パチスロ業界では客が主に矢面に立った、というところだろうか。両者は、カタギと見なされてい

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『京の園』執筆ノート②自由について

『京の園』執筆ノート②自由について

 自由だからといって、幸福だろうか。不自由だからといって、不幸だろうか。そうとは限らない。

「創作する者にとっては貧困というものはなく、貧しい取るに足らぬ場所というものもないからです。そしてたとえあなたが牢獄に囚われの身となっていようと、壁に遮られて世の物音が何一つあなたの感覚にまで達しないとしても――それでもあなたにはまだあなたの幼年時代というものがあるではありませんか、あの基調な、王国にも似

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『京の園』執筆ノート①結婚について

『京の園』執筆ノート①結婚について

 28歳くらいになると、友人の多くが結婚、妊娠、出産を経て、子育てに奔走する日々を送る。10年ほど前の私のライフプランでは、今頃そういう「正規ルート」を通過し、休日には家族サービスするグッド・ファーザーになっているはずだったのだが、このプランは崩壊した。本当に演劇になんか出会わなければよかった。出来心で学生劇団に所属した、20歳の自分の行動を心の底から後悔している。

 今、ひょっとすると多くの人

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