地方の会計屋

とある地方で細々と業を営んでいる公認会計士・税理士です。専門分野の観点から、色々考察し…

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とある地方で細々と業を営んでいる公認会計士・税理士です。専門分野の観点から、色々考察してみます。

最近の記事

【パレスチナ雑考】人工国家・イスラエルの幼年期の終わり(後編)

膨大な文章となりましたが、これでようやく完結です。 本稿ではイスラエルの法制度にスポットを当ててみます。 未読の方は、ぜひこちらからお願いいたします。 イスラエルが直面する民主主義と民族主義のアンビバレンツ「民主主義国家」としてのイスラエル あくまで一般的な認識ではありますが、イスラエルも議会民主制に基づく共和制を採用しており、「西側先進国」の一員として位置付けられています。 「先進国」という言葉そのものについて具体的な定義があるわけではありませんが、「高度な民主主義政

    • 【パレスチナ雑考】人工国家・イスラエルの幼年期の終わり(中編)

      こんにちは。 前編に続き、専門外ではありますがイスラエルの現状及び背後関係に関する雑考を進めていきます。 前編が未読の方は、こちらよりご覧ください。 イスラエルを生んだ2つのシオニズム「シオニズム」の起源 イスラエルを語るにあたって必ず出てくる言葉でもある「シオニズム(Zionism)」にも触れておきます。このシオニズムという概念の誕生過程と根底にあるエッセンスこそが、パレスチナ問題の本質と言っても過言でもないと私は考えます。 そして、米国がこれほどまでにイスラエルに固執

      • 【パレスチナ雑考】人工国家・イスラエルの幼年期の終わり(前編)

        こんにちは。地方の会計屋です。 専門外ではありますが、前回に続きガザ戦争の思考を整理して行きたいと思います。 今回はタイトルの通り、イスラエルにスポットを当てます。 未読の方は、併せてご覧ください。 イスラエルを取り巻く現状は何なのかイスラエルは特殊な国? アルジャジーラのようなニュースメディアやパレスチナ人と思しきアカウントによるSNS投稿を見ていると、目を疑うような現実の数々に何度言葉を失ったかわかりません。 ただ残酷で凄惨というよりも、パレスチナ人ならいくら殺しても

        • 【パレスチナ雑考】「アラブの春」はチュニジアに始まりパレスチナに終わる?

          こんにちは。「地方の会計屋」です。 本来このnoteでは専門分野以外は書かないつもりでした。 しかしながら、10月7日のハマスによる攻撃から始まったイスラエルによるガザの攻撃(実際には文字通りの「ジェノサイド」ですが)を海外のメディアやSNSアカウントを通して見るにつれ、多忙な時期にありながら半ば心ここにあらずといった日々が続いていました。 そして今、6日半に及ぶ休戦は終わり、再び攻撃が再開されています。 これを機に、自身の思考の整理も兼ねてこの記事を書きます。 (既に日

        【パレスチナ雑考】人工国家・イスラエルの幼年期の終わり(後編)

          しんぐるまざあず・ふぉーらむの不正会計は「古典的」な粉飾決算

          皆さん、こんにちは。 気が付けば半年以上ぶりの投稿となります。 本当は、Colaboを巡る裁判の一つでも争点となっているある事項について触れようと思っていたのですが、ちょうど「認定NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ(以下、同法人)」における不正会計がニュースとなっていたので、急遽こちらを解説していくこととします。 既に報道並びに同法人による公式発表によって事件の経緯は明らかにされていますので、詳細は割愛します。 事件の概要それぞれに書かれている通り、”A”という会計

          しんぐるまざあず・ふぉーらむの不正会計は「古典的」な粉飾決算

          【Colabo】今更ながら「住民監査請求結果」を整理する

          みなさん、こんにちは。 久しぶりに原稿を書きます。 今更ではありますが、以前言われていた通り2月28日を期限とした「再調査」が改めて東京都に提出され、それを踏まえた結果及び「措置」の通知書(並びに「別紙」という名目で当該措置の詳細)が3月3日に東京都監査事務局より公開されました。 私も発表当時に大まかな内容は把握していましたし、公開直後にまとめたかったのですが、確定申告という一年で最も忙しいシーズンの真っ只中だったため、今のようなタイミングとなりました。 何卒御容赦くださ

          【Colabo】今更ながら「住民監査請求結果」を整理する

          【Colabo事件④】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その3)及び再調査による影響の推測

          当初の想定以上に膨らんでしまいましたが、監査結果報告書における指摘事項及びその想定される影響について2回に分けて分析してきました。 今回でようやく最後です。 5.給食費、宿泊支援費に関する指摘事項について一つだけ「妥当性が疑われるもの」と小節を分けている指摘事項 初めに、監査結果報告書の当該指摘事項の文言を改めて振り返ってみましょう。 暇空氏自身もホテル代の過大計上を疑う主張をかなり早い段階から行っており、Colaboあるいは仁藤氏によるSNSにおける「お祝い会」などの

          【Colabo事件④】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その3)及び再調査による影響の推測

          【Colabo事件③】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その2)

          今回は、前回の内容が膨らみ過ぎて書き切れなかった事項の続きです。 前回及び前々回は、こちらです。 なお、引き続きの大反響に加えて、サポートまで下さった方までおられました。 遅ればせながら、御礼申し上げます。 前回記事の概要初めに、途中で途切れてしまった前回記事の流れをおさらいしてみます。 具体的な考察については、前回記事をご覧ください。 既読の方は、次章まで読み飛ばして頂いても構いません。 いわゆる「(表3)問題」について 前回記事では、監査結果報告書に「本事業(東京

          【Colabo事件③】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その2)

          【Colabo事件②】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その1)※1/14・1/15一部訂正・加筆

          前回記事で、1月4日付で東京都より公開された一般社団法人Colaboの「不正会計疑惑」に係る「東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求監査結果(以下、監査結果報告書)」について要約・解説したところ、お陰様で想像を大幅に超える反響を頂きました。 改めて、御礼申し上げます。 前回記事を未読の方は、ぜひ下記よりご笑読ください。 もちろん、「ここは○○ではないのか?」等々、辛辣なご意見・ご感想も多数

          【Colabo事件②】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その1)※1/14・1/15一部訂正・加筆

          【Colabo事件①】取り急ぎ、東京都による監査結果報告書を読んでみた

          ネット(特にTwitter)界隈を騒がせている"一般社団法人Colabo"の事件ですが、本日(2023年1月4日))東京都監査委員による監査結果が公開されましたので、ひとまず一通り目を読んでみました。 あくまで当該記事は当監査結果の概要を紹介する内容に留まりますので、あらかじめご了承ください。 そもそも何が問題だったのか 既にご存じの方も多いので詳細は割愛しますが、”暇空茜”なるネットユーザーが東京都への開示請求などによりColaboに関連する文書を入手したところ、Cola

          【Colabo事件①】取り急ぎ、東京都による監査結果報告書を読んでみた

          「内部統制」と権限の集中が招く弊害

           前回の記事で、もともと会計監査の現場における重要なファクターである「内部統制」の意義について簡単に紹介しました。  今回は、もう少し掘り下げてみましょう。  内部統制の根底にある考えを「一人に全てを任せない」と書きましたが、具体的に何を示しているのでしょうか? また、なぜ一人に任せることがいけないのでしょうか?  例えば、社長が仕入も販売も支払も経理も全て行うことを考えてみてください。  いわゆる「一人親方」や家族と数人の従業員だけで切り盛りしている中小・零細企業であれ

          「内部統制」と権限の集中が招く弊害

          会計監査の観点で考える「統制」

           組織の「統制」と聞いて、どのようなものを想像するでしょうか。  平たく言えば、組織が組織本来の目的を効率よく果たせるように、目的を逸脱した行為を防ぐための取り組みです。  会社で言えば、継続的な事業活動によって利益を獲得して資金を確保しながら存続し続けるのが、その存在目的と言えるでしょう。  そのためには、販売だけでなく材料や商品の仕入、製品の生産、売上代金の回収並びに従業員の確保と給与の支払いなど、必要な一連の事業活動が適正かつ円滑に行われることを確保しなければなりませ

          会計監査の観点で考える「統制」

          【蔵出し記事④】水谷建設の元社長が「自分の判断で」1億円を拠出する事は可能か?

          こんにちは。 前回に続き、蔵出し記事です。 今回の内容及び肩書等は全て投稿当時(2011年5月5日)のものです。 テーマは「会計」ですが、厳密に言うと会計よりも会社法に関係する話です。 このテーマも多少遅れた感があるのですが、ちょうどニュースになったのが残業続きのまっただ中でしたので、ご容赦下さい(^^;ゞ さて、小沢一郎元秘書である石川智裕・大久保隆両氏に対する裁判の中、水谷建設の川村尚元社長が後半で「大久保氏に要求されて1億円を渡した」という爆弾発言(?)が物議をか

          【蔵出し記事④】水谷建設の元社長が「自分の判断で」1億円を拠出する事は可能か?

          【蔵出し記事③】資金収支報告書の会計に見る政治活動の前近代性−陸山会の「虚偽記載」問題の本質とは

          こんにちは。 今回も蔵出し記事①②の続きです。 肩書も含めた内容は投稿当時(2010年2月11日)のものです。 先日、twitterのフォロアーさんより、興味深い意見がありました。 といった趣旨の内容でした。 実際に官報の資金収支報告書を調べた僕自身としても、思わず膝を打ったものです。 てっきり貸借対照表のようなものか掲載されているのを想像していたら、借入金までが「資産」として預金や不動産と同列に掲載されていた事にはびっくりしたものですから。 東京地検特捜部による捜

          【蔵出し記事③】資金収支報告書の会計に見る政治活動の前近代性−陸山会の「虚偽記載」問題の本質とは

          【蔵出し記事②】陸山会の「定期預金4億円」は事実か?

          こんにちは。 今回も続けて蔵出し記事です。 前回の続きとして投稿したものであり、こちらも肩書・名称等は当時(2010年1月12日)のものです。 予めご了承ください。 前回、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」の資金収支報告書を時系列に並べ、分析してみました。 さて、前回はノータッチで終わった「借入金の担保として提供した4億円の定期預金」について、今回は検証してみたいと思います。 報道によりますと、 という流れだそうです。 ここで、再び資金収支報告書及び資産の明細を見て

          【蔵出し記事②】陸山会の「定期預金4億円」は事実か?

          【蔵出し記事①】元凶は「現金主義」? 小沢一郎の「陸山会」の資金収支報告書を分析してみた

          こんにちは。久々の更新になりますが、長らく放置状態ですみません。 今回は、昔の記事を再掲します。 手前味噌ではありますが、最初のニュースから後になって判明した事実関係と概ね整合していたのではないかと自負しています。 なお、名称や肩書等は全て投稿当時(2010年1月11日)のものであることを予めご了承ください。 今更説明不要ですが、陸山会の資金収支報告を巡る一連の騒動。 いちいち考えるのも面倒くさかったので、僕は今までずーっとスルーしていました。 しかし先日、とあるニ

          【蔵出し記事①】元凶は「現金主義」? 小沢一郎の「陸山会」の資金収支報告書を分析してみた