【蔵出し記事②】陸山会の「定期預金4億円」は事実か?

こんにちは。
今回も続けて蔵出し記事です。
前回の続きとして投稿したものであり、こちらも肩書・名称等は当時(2010年1月12日)のものです。
予めご了承ください。


前回、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」の資金収支報告書を時系列に並べ、分析してみました。

さて、前回はノータッチで終わった「借入金の担保として提供した4億円の定期預金」について、今回は検証してみたいと思います。

報道によりますと、

土地の代金3億4千万円を支払う

4億円の定期預金を組む

これを担保に差し入れて4億円を借り入れる

という流れだそうです。

ここで、再び資金収支報告書及び資産の明細を見てみましょう。

<単位:千円>

<単位:千円>

もし実際に4億円の定期預金があるのなら、当然ながら借入金4億円(記載漏れと騒がれていた小沢氏名義のもの)の他にもプラス4億円なければ、定期預金を組む事は出来ません。

ご覧の通り、平成16年の借入金以外のは1億8千万円。かといって平成15年時点での預金残高は7千万円。

4億円には、遠く及びません。

よって、このような状態で4億円を調達するにはただ一つ…簿外から4億円のキャッシュを突っ込むしかありません。

なるほど故意にせよ過失にせよ、4億円の定期預金が簿外に存在(つまり、資金収支報告書に記載されていない)しているのであれば、

第二十五条  次の各号の一に該当する者は、五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
一  第十二条又は第十七条の規定に違反して報告書又はこれに併せて提出すべき書面の提出をしなかつた者
一の二  第十九条の十四の規定に違反して、政治資金監査報告書の提出をしなかつた者
二  第十二条、第十七条、第十八条第四項又は第十九条の五の規定に違反して第十二条第一項若しくは第十七条第一項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に記載すべき事項の記載をしなかつた者
三  第十二条第一項若しくは第十七条第一項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者
2  前項の場合(第十七条の規定に係る違反の場合を除く。)において、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、五十万円以下の罰金に処する。

政治資金規正法条文より

にある通り、「虚偽記載」となってしまいます。

簿外の定期預金4億円が事実なら、小沢氏は最高で罰金百万円、あるいは5年の実刑判決に処せられてしまいます。

しかも、

第二十八条  第二十三条から第二十六条の五まで及び前条第二項の罪を犯し罰金の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から五年間(刑の執行猶予の言渡しを受けた者については、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間)、公職選挙法 に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。
2  第二十三条、第二十四条、第二十五条第一項、第二十六条、第二十六条の二、第二十六条の四及び前条第二項の罪を犯し禁錮の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間若しくは刑の時効による場合を除くほか刑の執行の免除を受けるまでの間及びの後五年間又はその裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間、公職選挙法 に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。
3  裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、第一項に規定する者に対し同項の五年間若しくは刑の執行猶予中の期間について選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず、若しくはその期間のうちこれを適用すべき期間を短縮する旨を宣告し、又は前項に規定する者に対し同項の五年間若しくは刑の執行猶予の言渡しを受けた場合にあつてはその執行猶予中の期間のうち選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用すべき期間を短縮する旨を宣告することができる。
4  公職選挙法第十一条第三項 の規定は、前三項の規定により選挙権及び被選挙権を有しなくなるべき事由が生じ、又はその事由がなくなつたときについて準用する。この場合において、同条第三項 中「第一項 又は第二百五十二条 」とあるのは、「政治資金規正法第二十八条」と読み替えるものとする。

同上

情状酌量の規定があるとはいえ、5年間の選挙権・被選挙権停止という、非常に重いペナルティが化せられてしまう事になります。

これは政治家にとって、死刑宣告にも等しいでしょう。

じゃ早く小沢を逮捕しろ!…という方もいらっしゃると思います。

しかし、ここでちょっと考えてみて下さい。

「担保に供した4億円の定期預金」が実在したのなら、平成15・16年の資金収支報告書を見る限り、これを隠蔽でもするしかありません。

この時点で、いちいち帳簿を精査しなくても資金収支報告書の虚偽記載が一発で分かるのです。

いわば、4億円の定期預金は文字通り、「動かぬ証拠」となります。

僕が検察官であれば、この定期預金の裏が取れた時点で、直ちに小沢氏逮捕に踏み切るでしょう。

しかし…現実にはこのような話は聞きません。

なぜでしょうか?

以下、あくまで僕個人の推理である事をご容赦下さい。


石川議員の供述通りであれば、銀行と小沢氏との借入契約書を見れば、すぐに担保について確認出来るはずです。

地検特捜部だって契約書を押収しているはずですし、たとえ契約書の記載に不備があっても、当然ながら銀行側に定期預金の証跡が必ずあります。

銀行とて、証拠提出を拒む事は出来ません。


しかし実際に検察は動いておらず、周辺から報道機関に情報が流れてくるだけです。

だとすれば、以下のシナリオしか考えられません。

1)契約書に担保差し入れに関する記載が無く、かつ銀行側で記録が紛失または隠蔽されたことにより、4億円の裏付けが取れていない。

2)担保資産が以前から保有していた定期預金を充てたものか、もともと定期預金の担保自体がなかった(つまり、定期預金4億円そのものがウソ)。

3)既に証拠が揃っているが、何らかの理由で逮捕のタイミングを窺っている。

4)この疑惑自体が検察と小沢氏の八百長。

あくまで会計にテーマを絞っている手前、上記の一つ一つを検討するのは省略させて頂きます。



補足

「公認会計士vs特捜検察」の(元)公認会計士・細野祐二氏も独自に同事件を分析しています。
当時はブログにそのまま独立した記事として転載していたのですが、元記事が今も閲覧可能ですので、こちらでリンクを貼ります。
ぜひ拙稿と読み比べてみてください。

http://www.comp-c.co.jp/pdf/report20103.pdf


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