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【Colabo】今更ながら「住民監査請求結果」を整理する

みなさん、こんにちは。
久しぶりに原稿を書きます。

今更ではありますが、以前言われていた通り2月28日を期限とした「再調査」が改めて東京都に提出され、それを踏まえた結果及び「措置」の通知書(並びに「別紙」という名目で当該措置の詳細)が3月3日に東京都監査事務局より公開されました。

私も発表当時に大まかな内容は把握していましたし、公開直後にまとめたかったのですが、確定申告という一年で最も忙しいシーズンの真っ只中だったため、今のようなタイミングとなりました。
何卒御容赦ください。
以前の記事を未読の方は、こちらからお願いいたします。

調査結果の概要

経費の「最終結果」

前述の通知書の内容は、Colaboが東京都より委託を受けていた「東京都若年被害女性等支援事業(以下、支援事業)」の令和3年度経費のうち、後述する理由により192万円の経費が「事業経費とは認められない」として除外するというものでした。

(第1回目の記事でも触れていますが、監査事務局が東京都の福祉保健局を対象とする監査であり、Colaboそのものを直接監査したという図式ではありません)

その結果、支援事業の経費は、以下のような形と結論付けられました。

通知書別紙P.1より。

ちなみに、上記の表における「本件経費(修正前の経費)」は、いわゆる「(表3)」の数値と同じであり、当該数値を起点として経費の妥当性を検証していることも伺えます。

ここでは割愛しますが、「(表3)」の是非に関する検証は下記をご参考ください。


192万円の経費が否認された?

別紙では、どのような支出が経費として否認されたか、逆に認められたかを各経費の科目ごとに説明しています。

認められなかった理由と対応する科目ごとに、以下の表に整理してみました。


正の数値は経費から除外された金額、負(△)は逆に経費に加算された金額を指す。

続けて、主な内容について解説していきます。

①人件費の過大計上

既に1月4日時点で監査結果において明示された通り、人件費(税理士・社労士等報酬を含む)及び各種保険(社会保険料など)の按分ミスが両者を合算して1百万円を超えており、これが除外された金額の合計の半分以上を占めています。

こちらについても第1回及び第2回で解説していますが、社団法人・財団法人などの公益法人が複数の事業を行っている場合、それぞれの事業ごとに経費を分けて計算することが求められています(公益法人会計基準)。
そして、複数の事業をまたいで発生する経費については、施設の床面積・利用者数・従業員の作業時間など一定の客観的な基準に基づいて按分しなければなりません。

例えばある社会福祉法人がデイサービスとグループホームの両方を運営していたとします。
ある従業員の年間の給与が5百万円で、労働時間のうち60%がデイサービスで残りの40%がグループホームに費やしたものである場合でしたら、デイサービスの人件費に3百万円、グループホームの人件費に2百万円をそれぞれ割り振って両事業の損益を計算することになります。

特に税理士・社労士の報酬は支援事業に限らずColaboが事業体として活動するに当たって発生すると考えられるため、全体に係る経費として按分するのが妥当と考えられます。

ちなみに、別紙においては具体的な按分基準は明示されていませんでしたが、税理士等報酬と給与とでは按分比率が一致しなかったため、給与台帳や業務日報などに基づいて税理士等報酬以外の人件費は算出されたものと推測されます。

②金額の誤記

これは全くの想定外でしたが、給与の57,347円を誤って507,347円と記載した結果、450,000円が過大計上されてしまったというミスがあり、結果として前述の人件費に次ぐ否認額となってしまいました。
おそらく人為的なケアレスミスだと思われますが、提出に当たって内部で十分なチェックが行われていたのか、あるいはチェックが出来るだけの体制が整っていなかったのか、改めて心配せざるを得ません。
これとは別に給食費1件(10,691円)の二重計上もあり、支援事業における経費の件数に照らすと、これも管理体制の脆弱さが現れているというべきなのでしょうか。

③領収書の一部開示を拒否

こちらについては後述しますが、合計して72件252,163円と、按分ミス及び金額誤記の次に金額的に多く、件数も非常に多いのが特徴です。

④内容の説明が不十分

別紙においては経費の内容や不十分とした理由については明示されていません。おそらく、支援事業との関連性が明確でないと判断されたものと推測されますが、関心を集めたマターの一つであった「都外遠隔地での宿泊」についても内訳及び一人当たり金額まで記載されているところ、必ずしも都外であることを理由に否認されたわけではないことは明白です。

⑤その他

領収書の宛名が個人名義(Colaboでない)ことから否認されたもの、支援事業に係るものでない経費が混入していたこと、源泉所得税の計上漏れによる人件費の過少計上などが挙げられています。

⑥否認されずに認容された支出

逆に、問題として指摘されネット上でも話題となりつつも最終的に経費として認容されたものもありました。

  • 金額の大きい食事代・宿泊代

  • 誤ってエアコン代と記載したパソコン代

最初の監査結果でもあるように、食事代及び宿泊代は一人当たりの人数に照らして妥当という判断結果に至ったことも別紙から窺えます。
レストラン代のうち「一人当たり8,300円」の適否が独り歩きした感もありますが、それ以外の支出の殆どは一人当たり2~5千円の水準なので、全体で見て社会通念を逸脱した金額とは言い難いのではないかと思われます。

また、「エアコン代」は領収書及びColabo内部の帳簿によってパソコン代の誤記に過ぎないことの確認が取れています。

結果をどう捉えるべきか

Colabo全体で見れば何も変わらない

以上、否認された経費の内容と「ファイナルアンサー」としての支援事業の経費の明細をフォローしました。

既に言われているように、修正を反映した経費の合計は27,131千円となり、当初の予算である2千6百万円を超過しているため、返金義務が生じることはありません。

また、支援事業の経費として認められない部分に関しては、Colabo自身の自主事業の経費に回るだけに過ぎず、Colabo全体で見た収支の影響はプラマイゼロということになります。

「不正」と「誤謬」の違い

別紙を見ても、今回の修正は意図的でない誤り、監査用語でいう「誤謬」に起因するものばかりで、当初騒がれたような意図的な誤り(いわゆる「不正」)によるものというものは結局見つかっていません。

確かに理由が何であれ誤りは誤りであり、税金を原資とした公共性の高い事業でもあることから、本来は微細な誤りでもあってはならないという言い方もあるかも知れません。
しかし、それには完璧な財務報告に必要なリソースの問題が避けて通れません。

会計監査の基本には、財務報告の利用者が判断を誤らないようにするという前提があります。
逆に言えば、利用者にとって判断を誤らないようなエラーであれば許容の余地がある、ともいえるのです。
加えて、1円単位で完璧に仕上げるために、経理担当者が何時間も残業することは、果たして望ましいことなのでしょうか?
そのために他の業務を犠牲にして良いのでしょうか?

もちろん無いに越したことはありませんが、必要以上に労力を割いて非の打ち所がない完璧な決算報告をするよりも、利用者に実害のない程度なら若干の誤りが混じっていても良いから効率よく作成した方が良いという考えも成り立つのです。

少し違うかも知れませんが、「本当に困窮しているかどうか」「不正受給が無いか」という観点から生活保護の要件を殊更厳しく設置するよりも、多少の不正受給は目をつぶってでも一人でも多くの困窮者に生活保護を行き渡らせるようにした方が社会全体で見て効率的であるという考え方とも共通していると言えるでしょう。

「領収書を見せられない」のは「領収書がない」のと同じ?

にもかかわらず、「Colaboは不正を行っている」という主張も依然散見されます。
もちろん「不正」の定義をどこに置くかもあるのですが、一例を挙げますと前述した領収書(の一部)の開示を拒んだこと、あるいは外部に提示できないような領収書にもかかわらず経費として計上したことこそ不正行為だ、というのがそうした主張の根拠です。

確かに、領収書の提示を拒否するというのは自身の拒否するという「意思」の伴う行為である以上、誤謬ということは出来ません。
経費の根拠となる領収書が実在しようが「プライバシーを守るため見せられません」と言い張って見せない以上、当該取引が実際になされた取引と外部に主張出来るでしょうか?

逆に、Colaboは支払った支援者のプライバシーを明らかにし、どんな危険に晒そうとも、支出を裏付ける一切の情報(氏名・連絡先など)を明らかにしなければならなかったのでしょうか?

元々Colaboには以下の2つの選択肢が与えられていました。

  1. 支援者の個人情報を明示する→経費として認められる

  2. 支援者の個人情報を秘匿する→経費として認められない

しかしColabo側は敢えて2.を選択し、当該支出を経費に含めることを取り下げることを選んだのです。

この点、Colabo側も公式の声明で明言しています。

この点、Colaboは再調査の過程において、福祉保健局から提示を求められた領収書原本はすべて提示して、原本の存在の確認を受けたという認識です。ただし、Colaboが支援した女性の実名を秘匿して原本を提示した例がありました。
例えば相談に訪れるための交通費等を女性たちに渡した際に受け取った領収書には、当然ながらその女性の名前等が記載されています。

そのような女性の名前・住所等は、絶対に外に出すことはできない情報です。そもそも、若年被害女性等支援事業では、様々な背景や経験から行政に対する不信感を強く持っていることなどから、公的支援に繋がることができずにいる女性たちと出会い、公的支援に繋ぐことを目的にアウトリーチ等の活動を民間団体へ委託しています。

そうした女性たちと繋がるColaboの活動は、利用者との間の信頼関係の下に成り立っており、Colaboは利用者との間で守秘義務を負っています。女性たちに最初に「行政から求められたらあなたの情報を開示することになる」と説明し、守秘義務解除の同意を求めるということでは、支援は成り立ちません。また、後になって行政から求められたことを理由に女性たちから同意をとることは現実的ではなく、同意なく情報を開示することも当然できません。

実際に、若年女性を虐待する親が公務員であり、行政の支援を利用することで、被害を相談したことや居場所を親に知られることを恐れる女性も少なくありません。Colaboの支援を利用したら、Colaboの外の人物にも名前が知られてしまうということでは、若年被害女性等支援事業は成り立たなくなってしまいます。

したがって、女性を特定できる情報を提示しないという点については、女性たちとの信頼関係維持のため、Colaboとして譲ることができない一線です。このような対応方法は、委託事業を受託することになった2018年度以降も一貫して取ってきたことであり、また、これまで行政からも理解が得られていたことです。

女性のプライバシー保護は、若年被害女性等支援事業の根幹に位置する重要事であることを、皆様にもご理解頂きますようお願いいたします。
「令和3年度会計報告に関する東京都の再調査結果を受けた声明」より抜粋。(Colabo HP掲載)

是非はともかく、Colaboがとりわけ支援者の女性たちのプライバシーにに細心の注意を払っていることを窺い知ることが出来ます。
また、金額に照らしても予算(2600万円)に対して1%程度の割合に過ぎないことにも鑑みると、弱者女性の支援にかこつけて私腹を肥やしているようにも捉えにくいように思われます。

もし仮に裁判や警察の捜査において、当該支出が実際になされたかどうかが論点となった場合であれば、おそらくColaboは提示に応じたでしょう。

そもそも、「取引が実際に存在するかどうか」と、「取引の有無を外部に対し主張出来るかどうか」というのは、全く別のマターなのです。
推測ですが、当初Colaboは外部に提示しなくても証拠となる領収書(支払った相手の個人情報が明記されているもの)を保管していれば経費として認められると判断したものの、今回の監査に当たって領収書の個人情報まで開示を求められ、開示するぐらいなら自分から取り下げる方を選んだのではないでしょうか。
そう考えると、当初から疚しい意図をもって費用を計上したというのもいささか無理があると言わざるを得ません。

誰がどうやって何円を「公金チューチュー」?

以上の通り、監査結果や今回の措置を見る限りColaboが意図的な不正行為を行っている証拠はないというのが私の見解です。

にもかかわらず、Colaboが不正行為を行っていると糾弾する声はやむことなく、熾烈を極めています。
「公金チューチュー」なる下品なスラングさえ広まっているほどです。

ですが、ここで一旦一呼吸置いて考えてみてください。

一体誰が、どうやって、何円を「チューチュー」したというのでしょうか?
それを裏付けるものは何なのでしょうか?

代表の仁藤夢乃氏が立場と職務を悪用して、私腹を肥やしたのでしょうか?

仁藤氏自身(あるいは背後にいる「ナニカ」?)の政治的・イデオロギー的目的を達成するために暗躍しており、Colaboという団体は隠れ蓑に過ぎないというのでしょうか?

あくまで私個人の感想に過ぎませんが、具体的な裏付けをもってこれらを証明した話は未だ寡聞にして聞きません。

少なくとも今回の監査及び結果報告で、誰かが不当に利得を得て公金の適正な運用がスポイルされていることを裏付ける記載は観察されていません。

本当の課題~今回の件とどう向き合うべきか~

むしろ課題として浮かび上がったのは、繰り返しますがColabo自体の管理体制の問題です。

悪意をもった運用はなされていないと確信していますが、その目的を達成するために必要な業務体制については、少なからず問題点があると言わざるを得ないでしょう。

もちろん管理上の問題点を理由にColaboの活動を潰したりするのではなく、少女たちを虐待や性的搾取から救うという本来のColaboの目的を達成するために、課題をはっきりさせるとともにその解決に向けて全力で臨むということが欠かせません。

どんな崇高な理念を持った組織でも大なり小なり問題を抱えています。
しかし、「角を矯めて牛を殺す」となっては、本末転倒でしかありません。
なおかつ、「悪貨が良貨を駆逐する」状況を生んでもいけません。

もしかしたら、それは日本において今後のソーシャルビジネスが育つ土壌を築けるかという試金石になるかも知れません。
社会正義を達成するためにこそ、合理的な組織体制や内部統制の構築が欠かせないのです。

ひょっとすると、その内部統制の構築を阻んでいる要因にこそ、問題の本質が潜んでいるのかも知れないのです。
その解決こそが、私を含めた職業専門家の社会的役割でもあるのでは、と日々自身に言い聞かせています。



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