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#65 『うまい分け方』

2024年5月某日

子供向けの教育DVDなどを見ていると、「おともだちと、わけっこする」ことの大切さが説かれている。ドーナッツやお煎餅も「半分こすると、ふたりともニッコリ」だそうだ。二人の友情が永遠に続くことお祈りする。今日も平和である。

さて、筆者は個人的に「分ける」という考え方が好きだ。地域ビジネスや、まちづくりの企画を考える際にも、狭くて、諸々の規模感に乏しい地域などでは「分けるアプローチ」により、何かとうまくいくケースも多い。「分ける」とは何で、どんな効果だあるか整理してみたい。

「分ける」という言葉を辞書で調べたうえで、筆者の問題意識に近そうなものを抜粋してみた。なんとなく眺めていると、どうやら「分ける」には、「①分割する」「②分類する」「③分配する」3つの意味がありそうだ。

わ・ける【分ける】
1 一つにまとまっているものをいくつかの部分にする。分割する。
2 種類によって区分する。分類する。
3 幾つかに割って与える。分配する。また、一部分を人に与える。

goo辞書「分ける」

筆者による意訳を加えるならば、「①分割する」は「切り分けること」、「②分類する」は「カテゴライズすること」、「③分配する」は「シェアすること」といったところだろうか。このうち、「①分割する(切り分けること)」と「③分配する(シェアすること)」について、もう少し深掘りしたい。

地方活性化事業で頻出する事例として、何かの建物を活用して、カフェや雑貨店のテナントを誘致し運営する、といったものがある。ワクワクする話である。しかし、多くの場合は、建物のサイズが大きいことから、回収期間などを考慮すると家賃水準が高くなり、入居者の確保・維持に苦慮することが起きる。計画段階では、関係者の気持ちが前向きなので、「がんばったらいけるでしょう!」となりがちなのだが、暗雲立ち込めてくると微妙な空気感になることも少なくない。

こういう場合こそ、「分けるアプローチ」が有効であると考えている。例えば、建物の「空間を切り分ける」発想である。これは、「①分割する(切り分ける)」ことである。具体的には、建物の部屋数を細かくして、狭い代わりに家賃水準が下がる環境をつくることである。大改修するよりお金はかからないし、テナント全体のポートフォリオが複雑になるから不動産経営の観点から見れば筋は悪くないと思う。

また、建物の「時間を分ける」発想もある。これは、「③分配する(シェアする)」ことである。具体的には、建物の空間について、曜日ごとに賃貸先を変え、「空間は広いけど、週に1日の利用」などとすることで、時間は短いけど家賃水準が下がる環境をつくることである。ゴーストレストランや、スポットの美容業のような、機動性のあるビジネスと相性がよいと思う。

このように、「分ける」発想をもつの効果は、利用者にとっての「ハードル」を下げることにつながる。ハードルが下がれば、我こそは、というプレーヤーも登場するかもしれない。また、運営側のアクションが、「無理な売上目標を漠然と追い求めること」ではなく、「興味がある人に営業する」に切り替わるので、やるべき行動が明確になり、プロジェクトが前向きなものとなる(気がする)。

空間側を分ける「分割」。利用者を分散させる「分配」。そのいずれも「分ける」ことであり、いろいろとヒントを与えてくれる。
ほなら。

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