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熊本という文学の源泉①

熊本を舞台とした作品には、強烈なものが多い気がします。詩心や思想がわいてくる、と申しましょうか。熊本には日本人の考え方の源泉があるような気がするのです。

熊本県を舞台とした有名作品

・森鴎外『阿部一族』(熊本)
・夏目漱石『草枕』(玉名)
・三島由紀夫『奔馬』(熊本)
・司馬遼太郎『翔ぶが如く』(熊本・鹿児島)
・石牟礼道子『苦海浄土』(水俣)
・村上春樹『騎士団長殺し』(阿蘇)

有名どころを挙げるとすれば、この6冊でしょうか。今回は前半の3冊を紹介していきます。

1.森鴎外『阿部一族』

森鴎外『阿部一族』では、藩主から殉死を許可されなかった一族の悲惨な末路が描かれています。殉死しなければ不忠だとののしられ、勝手に切腹すれば命令違反として罰される。武士の名誉と組織の秩序との間で板挟みになり、阿部家は破滅してしまいました。

運命のままならなさに従う。いかにも日本人らしい気がしてきます。日本社会の暗部が出ている気もします。

2.夏目漱石『草枕』

夏目漱石『草枕』は太字の部分が有名でしょうか。画家の視点から語られていきます。

 山路やまみちを登りながら、こう考えた。
 に働けばかどが立つ。情にさおさせば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、が出来る。

夏目漱石『草枕』青空文庫 引用者太字

しかし大事なのは太字のうしろ。安住の地がないと悟ったときに、「詩が生れて、画が出来る」といいます。

3.三島由紀夫『奔馬』

明治9年に起きた神風連じんぷうれんの乱――三島由紀夫『奔馬ほんば』では重要な事件として扱われていました。

明治政府が推し進めてきた西欧化を、誰もが歓迎していたわけではありません。神道と武士道(信仰と伝統)を重んじた士族青年たちが、明治政府に対して反乱を起こします。政府軍が駐留している熊本城を襲撃したのです。(反乱の直接的な原因は、廃刀令だったそうです。)

この反乱自体は失敗し、首謀者は自決してしまいました。しかし、思想の強烈さと純粋さから、後世の人々に大きな影響を与えています。また、神風連の乱は、映画『ラストサムライ』のモデルになっているのではないか。そんなことも噂されています。

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