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私の読書日記:2021/09/17

※※ヘッド画像は 雑記草 さまより

さて、先日から、noteの一般会員にもルビ機能が追加された。おかげで文学作品を引用しやすくなった。あるいは、ルビをふる仕事が増えたと言うべきか。ともあれ、見慣れない表現が多く登場する文学作品も忌憚きたんなく紹介できるようになったのはありがたい。

また、ルビ機能で遊べるようになった、と聴くと、円城塔『文字渦』を思い出す。ルビの遊び方が奇想天外で面白い作品であった。残念ながら、私は著者の意図している部分の半分も汲み取れていないだろう。相当、高度な仕掛けが仕組まれているはずだ。

ただ、この「ルビで遊ぶ」という着想は「雨月物語」の現代語訳から出てきたものなのかもしれない。池澤夏樹編『日本文学全集』にて、円城塔は「雨月物語」の現代語訳を担当していた。「雨月物語」には、序文を含め、たびたび漢詩が出てくる。が、漢詩の現代語訳というのは難しい。絶句であれ律詩であれ、逐語訳では訳文の文字数の方が多くなってしまうルビが漢詩からハミ出てしまう。では、今度は書き下し文をそのままに書いてみる、というのも意味が汲み取りづらい。

こういうストレスを上手に回避してみせたのが、円城塔訳「雨月物語」である。引用は煩わしいので割愛する。ぜひご自分の目でお確かめいただきたい。だが、『文字渦』にしろ、「雨月物語」にしろ、ルビの楽しさというものが遺憾いかんなく発揮されたのには違いない。

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