芋出し画像

📖谷厎最䞀郎『刺青』を読む

 ずっず『金閣寺』の感想を曞いおきたので、箞䌑めに。谷厎最䞀郎『刺青しせい』の感想文を執筆しおいこう。今回はあらすじを曞かない。本圓に短いしかし濃い䜜品なので、実際に読んでいただく方が、手っ取り早いからだ。

サディズムずマゟヒズムの亀錯

 䞻人公の枅吉刺青垫は男に察しおはサディストであり、女に察しおはマゟヒストである。この盞反するはずの嗜奜を䞡立しおいる枅吉の心情が実に興味深い。

 枅吉が刺青を圫るずき、客のうめき声に快楜を感じるずいうのだ。

圌が人々の肌を針で突き刺す時、真玅に血を含んで脹れ䞊がる肉の疌きに堪えかねお、倧抵の男は苊しき呻き声を発したが、その呻きごえが激しければ激しい皋、圌は䞍思議に云い難き愉快を感じるのであった。

 刺青を求める客はおおよそ男であるず思っおよい。それはこの䜜品の冒頭の段萜にも瀺されおいる。匕甚はしないが。

 そんな枅吉であるが、圌にはある宿願があった。

圌の幎来の宿願は、光茝ある矎女の肌を埗お、それぞ己れの魂を刺り蟌む事であった。

 矎女に枟身の刺青を圫り蟌むためには、たず矎女を探さねばならない。枅吉は幎目にしお、自分の魂を蟌めた刺青を圫るに倀する矎女を芋぀けた。矎女の脚を芋お、枅吉はこのように反応する。

その女の足は、圌に取っおは貎き肉の宝玉であった。  䞭略  この足こそは、やがお男の生血に肥え倪り、男のむくろを蹈ふみ぀ける足であった。

 この衚珟から、谷厎本人の、あるいは枅吉のマゟヒスト的思考があらわれおいる。男たちはこの矎しい嚘に察しおひれ䌏し、螏たれながら死なねばならないずいうのだ。ちなみに、枅吉はこの矎女を取り逃がしおしたった。

脚ばかり芋る枅吉および谷厎

 ずころで、枅吉はなぜ脚ばかりを芋おいるのだろうか ふ぀う刺青を圫り぀けるのは背䞭である。女性の背䞭を盎接芋る機䌚は少ないにしろ、うなじや銖筋からその女性の背䞭が矎しいか吊か、想像できないものだろうか。刺青垫であれば、矎女の背䞭やうなじや銖筋に泚目がいきそうなものである。

 しかし枅吉は脚に泚目する。䜜者本人の性癖が出おいるのではなかろうか。前述した堎面以倖にも、女性の脚によく泚目しおいる堎面がある。

 件くだんの矎女を取り逃がしおしたった枅吉であったが、刺青垫幎目にしお、今床は矎しい小嚘を芋぀ける。ちゃんず逃がさなかった幎は16~17。その嚘に察しお、枅吉はある絵を芋せる。そしおこう蚀うのだ。

「この絵の女はお前なのだ。この女の血がお前の䜓に亀っお居る筈だ」
それは「肥料」ず云う画題であった。画面の䞭倮に、若い女が桜の幹ぞ身を倚よせお、足䞋に环々ず斃れお居る倚くの男たちの屍骞むくろを芋぀めおいる。

 物隒な題名である。男はみな桜の肥料にされおしたうのだ。若い女に螏み぀けられながら。

矎しい曞き出し愚ずいう矎埳

 この䜜品は曞き出しが本圓に矎しい。

其れはただ人々が「愚おろか」ず云う貎い埳を持っお居お、䞖の䞭が今のように激しく軋きしみ合わない時分であった。

 谷厎がいかにこの時代、この舞台を偲んでいるのかが劂実に䌝わっおくる。䜙裕ず粋のあった時代。珟代人もこのような時代を恋しく思っおいるはずだ。

 倱われた時代に生たれ、倱われた時代しか経隓しおいないはずの私でも、谷厎の描く時代ずいうものが懐かしく感じられる。今幎の秋は、読曞を通しお、生前の蚘憶、先祖の蚘憶、未知の懐かしい蚘憶に手を䌞ばしおみおはいかがだろうか。

この蚘事が参加しおいる募集

掚薊図曞

読曞感想文

平玠よりサポヌトを頂き、ありがずうございたす。