見出し画像

ストレスを味方に変える2つの法則

ストレス、と聞くとイコール「悪いもの」と捉えている人が大半だと思います(僕もそうでした)。

ですが、よくよく考えてみるとストレスにも良し悪しがあることが分かります。
今回はそんなお話。

そもそもストレスってなに?

ストレス研究で有名なハンス・セリエ(Hans Selye)は、ストレスのことを以下のように定義しました。

「生体に作用する外からの刺激に対して生じる、生体の非特異的反応の総称である」

外からの刺激のことを「ストレッサー」と呼びます。

小難しいようですが、
ゴムボールを潰す場面を例にすると分かりやすいです。

手の力 = 外からの刺激(ストレッサー)
ボール = 生体
潰れたボール = 生体の反応

ゴムボールを握れば潰れるのは当たり前(特異的)ですが、
生物の場合はもっと複雑に様々な反応が起こります(非特異的)。

セリエは、生体の反応には下記の3つの段階があると考えました。

①警告期

ストレスに適応するための準備段階です。
一時的に身体の反応が低下しますが(ショック相)、ホルモンの働きによってすぐに適応反応へ切り替わります(反ショック相)。

②抵抗期

ストレッサーとストレス耐性が拮抗した状態のことです。
拮抗した状態を維持するためにはエネルギーが必要です。均衡が良い方に傾けば回復しますが、先にエネルギーが尽きてしてしまうと次の疲憊期に入ります。

③疲憊(ひはい)期

心拍・血圧・体温などの生体反応が低下し、衰弱していきます。

ストレッサーがもたらす身体反応

セリエはラットに対して(とても残酷な)実験を行いました。

ラットにとって過酷な多種多様なストレスを与えたところ、
副腎皮質の肥大、胸腺とリンパ節の萎縮、胃内壁の出血、という共通した 3 つの徴候が認められました。

要するに、
どんなストレスを与えようが体は同じメカニズムで応答することが分かった、ということです。

そのメカニズムの1つ目が
視床下部ー交感神経ー副腎髄質系(SAM系)であり、

2つ目が
視床下部ー下垂体ー副腎皮質系(HPA系)です。

これらの詳細についてはまた記事を書こうと思います。
簡単にまとめると、どのようなストレスであっても、2種類の経路によって身体的な反応が生じる、ということです。

ちなみに、セリエは副腎を摘出したマウスでも実験を行い、
警告期、抵抗期、疲憊期の3段階が起きないことを観察しました。

このことから、
副腎皮質から出るステロイドホルモンが上記ストレスの3段階に関与していることが証明されています。

ストレスの種類

ストレスは以下の4つに大別されます。

①生物的ストレス

病原菌、花粉などによるストレス

②物理的ストレス

騒音、振動、気象変化などによるストレス

③化学的ストレス

薬物、大気汚染、栄養不足などによるストレス

④心理的ストレス

精神的苦痛、怒り、悲しみ、緊張などによるストレス

アレルギーを持っている人や免疫力が弱っている人にとっては、
①の生物的ストレスによる害が大きな悪影響を持つでしょう。

HSP(繊細さん)のように、
車のクラクションのような大きな音や、繁華街のネオン光を敏感に感じ取ってしまう人にとっては、
②の物理的ストレスは大敵になります。

サルコペニアや慢性疾患で服薬中の患者さんは、
常に③の化学的ストレスを抱えていることになります。

現代社会において対人関係に悩みを持たない人はいないでしょう。
④の心理的ストレスも度を越すと、うつ症状となって現れてしまいます。

良いストレス、悪いストレス

では①〜④のストレスは全て悪いものなのでしょうか?

そんなことはありません。

締切の近い学会発表に推薦されて、プレッシャーの中発表したことでキャリアの道が開けた。

毎日遅くまで仕事をこなし、院内業務を率先して行なっていたら昇進の話が舞い込んだ。

貧困家庭で育ち、衛生環境があまり良くない中で長年食事をしていたら感染症にかかりにくくなっていた。

例をあげればキリがないですが、良いストレスとは以下の二つの法則から導くことができます。

1、ヤーキースドットソンの法則

適度な緊張状態にあるときにパフォーマンスが向上するという生理心理学の法則を、ヤーキースドットソンの法則といいます。

ストレスが多すぎるとパフォーマンスは低下しますが、
ストレスが少なすぎても同様にパフォーマンスは低下します。

言い換えれば、適度な緊張状態にあるときはパフォーマンスが向上するという法則です。

例えば、試験前に適度な緊張感を持つことは、試験の成績を向上させることができます。
しかし、緊張感が高すぎる場合は、逆にパフォーマンスを低下させる可能性があります。
逆に、緊張感が低すぎる場合も、パフォーマンスを低下させる可能性があります

2、ホルミシスモデル

低用量の有害物質やストレスが、生体にとって有益な効果をもたらす現象のことをホルミシス効果と言います。

この現象は、放射線ホルミシス、運動ホルミシスなど、様々な分野で研究されています。

ホルミシスモデル

ホルミシス効果のメカニズムについては、まだ完全に解明されていません。
一般的には、低用量の有害物質やストレスが生体の防御機構を刺激し、生体の抵抗力を高めることで有益な効果をもたらすと考えられています。

一番分かりやすいのは運動ホルミシスですね。

過剰なエクササイズをすると筋肉痛や心肺負荷がかかって有害になり得ますが、
定期的な運動によって負荷量を調整することで酸化ストレスに対する抵抗性が高まり、有益な効果が得られます。

具体的には、脳機能改善、筋肉および心肺機能強化、アンチエイジング効果などがあります。

ストレスの良し悪しは人それぞれ

致死量の放射線は万人にとって有害なストレッサーですが、そんなものは日常にあまりありませんよね(笑)

二郎系のラーメンに含まれる6g以上の塩分も、20代の若者にとっては大したストレスにはなりません。
しかし、末期心不全の高齢者にとってはかなり重い化学的ストレスになり得ます。

「ミーティングでは必ず発言するように」という規則も、10年目のベテランセラピストにとっては多少心拍数が上がる程度で済みます。
しかし、神経症的傾向が強い1年目の新人にとっては、ミーティングのある月曜日の朝は決まって腹痛になる、という高負荷な心理的ストレッサーに変貌するかもしれません。

そして、適度なストレスは人体や精神にとって有益に働きますが、
過剰なストレスは様々な心身の疾患の原因になります。

自分にとって有害なストレスは何か、今一度捉え直してみると良いかもしれませんね。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
面白かった、為になった、と思ったら♡スキ、フォローしてもらえると嬉しいです☺️

●Twitter、Facebookのリンクはこちらから⤵︎

●オープンチャット「自律神経の知識箱🎁」
自律神経に詳しいセラピストが集まって、さまざまな発信をしているので覗いてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?