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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(著:三宅香帆)

【内容】
本が読めないから会社を辞めた著者の体験から、働いているとなぜ本が読めなくなりのかを調査分析し、その解決の糸口を提示する。

※ネタバレ(?」します。


【感想】
学生の頃はそれなりに本読んでたののに、仕事始めてから全然本読まなくなった…
自分だけかと思っていた感覚をずばりタイトルでした。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』、今まで自分だけだと思っていたことをタイトルにされた本というのは、一度は手に取ってしまいますね。
えてしてこうした本は、単なるエッセーや雑誌記事などの寄せ集めの本ということも多いのですが…
この本は、それらの本とは違い、ちゃんとこのタイトルで提示した問題と正面から向き合った本でした。

著者自身が、新卒入社したリクルート社時代は、それまで好きでしていた読書が出来なくなっていたという体験談をもとに書いているので、その体験談や心の動きがよく理解出来ました。
隙間時間や休みに本が読める時間はあるのに、SNSやどうで良い動画などを観てしまうとか…

様々な日本人が本をどう需要してきたのかや、社会的に読書はどう位置付けられて来たのかの変遷など解説していました。
明治、大正、昭和とそれぞれの時期のベストセラーを当時の世相に解説しながら考察していっており、そこはそこで読み応えがありました。

著者がこの本を書く直接よきっかけになったという若い男女の恋愛を描いた映画『花束みたいな恋をした』を例に引いているのですが…
映画は、彼氏であるムギがイラストレーターの夢を諦め、普通の会社に就職すると同時に、それまで文化的な本や映画を享受出来なくなり、スマホゲームの『パズドラ』しか出来なくなり、本や漫画などのカルチャー好きの恋人と話が合わなくなり、別れることになるといった内容です。
著者の定義によると、ムギにとって『パズドラ』はコントローラブルなものであり、本はアンコトローラブルなのものである。

ここからが、作者の主張の骨子にあたる部分になるのですが…

①働いていると、仕事以外の文脈を取り入れることが出来ない、文脈というノイズを取り込むことが出来ないから、本が読めなくなる。

②読書とはノイズである。
読書の想定していた要素以外の文脈というノイズを取り込むことが、読書の魅力である。

③全部の力を仕事に注ぎ込むのではなく、半身の働き方、半身のコミットメント、そしてそんな半身で生きられる社会を目指すことが、本を読める幸福に社会へと繋がる生き方なのではないか。
(この半身の働き方についての具体的な手段については、現時点の著者にはそのアイデアはなあとのこと。)

面白いこと考えるなあと…

リクルートと言えば、先日読んだリクルートの創業者の江添浩正の生涯を描いた本を読んだばかり、この人も数々の活躍をしている元リクルート『元リク』の1人なのだと、途中でネット検索して知り…
『元リク』の活躍は、リクルート的ではないことをこんなに説得力を持って語る人を輩出しているのだなあとも思ったりもしました。

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents_amp.html?isbn=978-4-08-721312-6

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