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映画ビバリウム(VIVARIUM)感想。鬱子育て映画?新しくて好き!



あらすじ


家を探していたカップルのトムとジェマ。
不動産屋に行くと様子のおかしい『ヘンテコ押し売り野郎』のマーティンに案内され、半ば無理やり内見に行くことになる。郊外のヨンダーという住宅街に到着し、家を自由に見ているとマーティンは2人に何も言わず自主帰宅していた(!)
キレつつ車で帰ろうとするがヨンダーからは出られない。必ず道に迷い元の場所に戻ってしまう。
2人で喧嘩しつつ他の方法も試すが、全て効果がなく八方塞がり…。
そんな二人のもとにダンボールに入った赤子が届く。『育てれば解放される』と書かれたメッセージ。その真偽とは…


感想



ジャンルとしては多分子育て映画。

普通の子育て映画と少し違うのは、届いた赤子が少年に急速に成長したり、話があまり通じない、声も年齢の割に低すぎることなどから、明らかにクリーチャーであるという点だろう。


しかし見た目は人間そのままなので、いつか2人が少年を殺害するところはビジュアル的に見たくないな…と思わされる。
序盤は少年擁護派に近かったかもしれない。(なお後半は…)


少年は金切り声を上げたり眠らなかったり大人の口調を繰り返し発言したりする。
かなり異質でしつこい行動をしているが、こうして書いてみると行動自体は意外と普通の人間の子どもでもやりそうな事だったりする。普通に子育てって大変そう。2人もめちゃくちゃ大変そう。


結果的に少年は青年と言えるほどの年齢まですくすく育ち、わりと話もできるようになってちょっと生意気になっている。
ここまで来ると見た目からのためらいもなく、死にかけのトムを見捨てたり2人を家から追い出したりしているので、普通にころせー!!!となってしまう。
でも現実でも手塩にかけて育てた子どもがこうなることもあるだろうし、そう考えるとこわい。

トムが亡くなりジェマもさすがに慈愛の心とかなくなり、青年に攻撃を試みる。(いけーーーー!!!!)1発食らわせられるが直ぐに逃げていき、その後完全回復して現れる青年。

ジェマを殺害したあと青年はマーティンの不動産屋の店舗に帰っていく。
到着し死にかけのマーティンが椅子に座っている。青年はすぐに息絶えたマーティンの死体を処理し、マーティンの名札を自らの胸元につけ、マーティンが座っていた椅子に座り不動産屋の来客を待つ。

マーティンは青年が殺したわけてはなく、老衰か何かで自然死したように見えた。この後の青年の人生もマーティンのようになると想像させられるラストになっている。


このラストを観た時、瞬発的にクリーチャーであるマーティンや青年の循環には何の意味があるのだろうかと疑問に思った。


しかし、『不動産屋を営み、客をヨンダーに迷い込ませて自分達の仲間である子どもを育てさせる。子どもが育つ頃、自分は死ぬ。』


こう書いてみると人間の辿る人生とほぼ同じなのではないか?それに気づいた時自分の人生までもがかなり意味のないものに見えてきた。


もちろん人生には良いこともある(音楽流して踊るとか)し、大まかに捉えると生物なんて生きて死ぬで終わる話だ。

普段は分かっているのに、クリーチャーが作ったヨンダーという空間が何も無さすぎて(家と雲の形、全ておなじ!季節、なし!風、なし!匂い、なし!味、なし!娯楽全般、なし!)体感2時間をそこで過ごした視聴者は、一時的に人生の良さを忘れるように洗脳されてしまうのではないだろうか。

そこまで考えた時にマーティンの洗脳がやっと解けてきた。
映像の面でも色彩の使い方やCG、そして役者陣も程よい感じの気味の悪さで程よくリアルで程よく違和感があるのだ。没入感がよかったと思う。

子育て映画でここまで空虚なものも観たことがなく、没入感とあわせて鬱映画でもあると思う。
興味があったら他の映画であまり味わえない2時間をぜひ体感してみてほしい!





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